千葉県千葉市の高齢者の方の万引き事件 その万引きは前頭側頭型認知症の影響ではありませんか?②

【事例】
千葉県千葉市で一人暮らしをするAさん(65歳)は、仕事を定年退職した60歳頃から突然万引き事件を起こすようになって、2年前には罰金刑を受けました。
ご家族はAさんのことが心配になりながらも、Aさんは万引きをしてしまうこと以外には生活は問題なく送れており、万引きをしてしまう原因が分からず、どのように対応していいか分からなかったので、とりあえずAさんに対し「一人で買い物に行ってはいけないよ」と言っていました。
しかしながら、Aさんはまた万引き事件を起こして千葉東警察署の警察官に現行犯逮捕されました。
Aさんの家族はAさんの保釈が認められた後、専門機関を受診したところ、Aさんには前頭側頭型認知症の疑いがあると説明されました。
Aさんには国選弁護人がついていましたが、公判での弁護方針を相談するためにAさんとAさんの家族はあいち刑事事件総合法律事務所の法律相談を利用しました。
その後Aさんは、あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に公判での弁護活動を依頼することにしました。
(事例はフィクションです)

今回の記事では前回に引き続いて、前頭側頭型認知症を発症し、万引き事件を起こしてしまったAさんの事例を用いて、前頭側頭型認知症の診断を受けた方の公判での弁護活動についてあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が詳しく解説します。

公判において量刑はどのように判断されるか

まずは、刑事事件の公判で判決の内容はどのようにして決められるかについて簡単に解説します。
量刑の決定については当サイトの、刑の種類と量刑のページや、情状弁護のページも参考にしてください。
公判において裁判官が、被告人が有罪であるとの心証を持った場合には、その被告人に対してどのような刑罰を科すのか(罰金刑なのか懲役刑なのか)、執行猶予を付すべきか、罰金や懲役刑の期間はどの程度にするのかを検討します。
そしてこれら量刑の判断においては、第一に被告人が犯した犯罪の内容(犯情事実)を検討します。
その上で犯行の動機や、再犯可能性などの犯罪の内容以外の事実(一般情状)を副次的に考慮して量刑は決定されます。
事件によってどのような事情が量刑の判断情重要な意味を持つのかは変わってきます。
たとえばAさんの万引き事件においてはまず犯情事実として被害額や万引きの手口や頻度、常習性などが犯情事実として考慮されます。
そしてその上で、前科前歴、今後の監督や犯行に至った原因、再犯可能性などが一般情状として主として考慮されるでしょう。

前頭側頭型認知症の診断を受けた方の公判における弁護活動

Aさんの弁護活動で、担当する弁護士が裁判官に認めてもらえるように留意するべきなのは
①Aさんが万引き事件を起こしたことと、Aさんが診断を受けた前頭側頭型認知症が関係していること
②Aさんが今後二度と万引きをせずに社会内で更生することが可能であること
大きく分ければ以上の2点です。
この点を踏まえて、どのような証拠が必要か、どのような証言が必要かを検討し弁護活動の内容を考える必要があります。

前回の記事で説明させていただいた通り、前頭側頭型認知症が万引きをしてしまう原因となる場合は、欲求のコントロールが効かずに行ってしまう場合になります。
単にその動機を裁判で話すだけでは、盗んだ物欲しさに犯行をしてしまう通常の窃盗犯と何ら変わらないと判断され、「身勝手な動機」などと情状面で特に有利に考慮されずに判決が下されてしまうかもしれません。
診断を受けていること自体は、診断書を提出して裁判所に証拠調べをしてもらえれば立証できますが、弁護活動においては前頭側頭型認知症と犯行との関連まで示すことが重要になるのです。
そしてこの立証方法については、例えば診断をした医師に出廷をお願いして症状の具体的内容や犯行に至ったこととの関連性について証言をしてもらう、ご家族が証人として出廷し、日常生活で認知症の症状が出始めた時期と万引きを始めた時期が重なっていることを証言してもらうことなどが考えられます。
そのような立証活動を行い、判決において「Aさんが万引きを繰り返してしまったことには前頭側頭型認知症の影響もあり」などと、動機の面で酌量してもらうことを目指し弁護活動を行う必要があります。
立証の方法は、Aさんの症状の内容や医師の診断内容によっても変わりますので具体的な事例によります。

また②の点について、Aさんは万引きを繰り返して裁判になっているので、裁判所に再犯可能性がなく、万引きをせずに更生できると判断してもらうための弁護活動も重要になります。
しかしこれはそもそも裁判のためではなく、今後Aさんが社会内で生活を送っていく上でとても重要なことです。
そのためにはAさんの症状を、Aさんの周囲の人間やAさん自身がしっかりと理解し、生活の送り方を考えていく必要があります。
Aさんは一人暮らしをしていたので理想は誰か家族と同居することですが、それが難しければ公的機関に相談するなどしてヘルパーの方に来てもらうなど公助を求めることも考えられます。
以前の記事で紹介した更生支援計画の作成も検討してもよいかもしれません。更生支援計画作成の手続きについては以前投稿した記事も参考にしてください。
再犯をしないということは、被告人本人が「もう二度としません、反省しています」と約束するだけでは不十分です。具体的な環境の変化を立証して裁判官に対して万引きをしてしまう原因が除去できていると認めてもらうことが重要です。

再犯を防ぐために

今回のAさんの事例では、Aさんが裁判を受けることが初めてですので執行猶予付きの判決を受ける可能性が高いです。
しかしながら、先ほど説明した弁護活動が十分でなく、認知症に気付かないままであったり、再犯防止策の検討が不十分なままであったりしたまま裁判を終えてしまった場合には、執行猶予の期間中に再犯をしてしまうリスクが高いといえます。
前回の記事でも説明したように前頭側頭型認知症が原因になって万引きを繰り返してしまうケースは気付かれないまま裁判を終えて、執行猶予の期間中にまた再犯をしてしまって裁判を受けてしまう場合が少なくありません。
そうならないためにも、これまで多くの刑事事件を扱っており、万引き事件の弁護活動にも精通したあいち刑事事件総合法律事務所に是非一度ご相談ください。
あいち刑事事件総合法律事務所では単に裁判で有利な判決を得ることだけでなく、その後再犯をすることなく更生していくことまでは見据えた弁護活動を心がけております。

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