宮城県仙台市の不同意性交等事件 保釈決定を得て早期に専門機関を受診したい

【事例】
宮城県仙台市に住むAさんは3年前に強制わいせつ事件を起こして懲役2年執行猶予4年の有罪判決を受けていました。
Aさんは執行猶予中にもかかわらず、仙台市内の路上で通りすがりの女性に抱き着き、膣内に指を入れるという事件を起こしてしまいました。
事件を起こした1か月後にAさんは不同意性交等罪の容疑で仙台中央警察署の警察官に通常逮捕されました。
その後Aさんは不同意性交等罪の事実で起訴されました。
AさんとAさんの家族は保釈を認めてもらい、その期間に性犯罪加害者の更生プログラムがある専門機関を受診させようと考えました。
(事例はフィクションです)

今回の記事では上記事例を用いて性犯罪事件における保釈請求について、あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

性器を挿入していないのに不同意性交等罪?

まず今回の記事の本題とは逸れますが、事例においてAさんの起訴罪名となった不同意性交等罪について簡単に解説します。
不同意性交等罪は令和5年7月13日に施行された改正刑法において新設された罪名になります。
新設とはいっても不同意性交等罪の処罰範囲はこれまで強制性交等罪、準強制性交等罪として処罰されていた行為がほとんどです。
しかしながら、これまでは強制わいせつ罪(改正刑法では不同意わいせつ罪に変更)で処断されていた、「膣または肛門に身体の一部や物を挿入する行為でわいせつなもの」も不同意性交等罪で処罰するように改正されました。
したがってAさんのした膣内に指を入れる行為は、改正刑法の施行後においては不同意性交等罪が成立するのです。
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の法定刑は「5年以上(20年以下の)の懲役刑」であるのに対して、不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役刑」と定められており、法定刑に大きな差があります。
刑法改正については、当事務所の各支部のホームページ(仙台支部の解説ページ)でも詳しく解説していますので、是非ご確認ください。

保釈請求が認められる要件について

それでは、次に保釈が認められるための要件について簡単に解説していきます。
保釈に関しては当サイトの保釈について詳しく解説したページも参照してください。
保釈には大きく分けて2種類があり、1つが権利保釈、もう1つが裁量保釈です。その他に義務的保釈という保釈もありますが実務上認められる例はほとんどないので説明は割愛します。
簡単に説明しますと、権利保釈とは刑事訴訟法89条に定める各事由のすべてを満たさなかった場合に認められる保釈のことを言います。
刑事訴訟法89条には6つの事由が定められており、特に問題になるのは常習性に関する事由と罪証隠滅に関する事由です。
一方で裁量保釈とは、権利保釈の要件を満たさない場合であっても、裁判所又は裁判官の裁量によって保釈が許可されることをいいます。
裁量保釈について定める刑事訴訟法90条では、裁量の判断事由として「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情」を明文であげています。
専門機関に通わせる必要があるという事情は、これが遅れることにより、被告人の更生が阻害されるという不利益があるということで、被告人に不利益を与える事情として裁量保釈の判断事由の一つになると考えられます。

専門機関を受診したいことを理由に保釈請求は認められるか

性犯罪を繰り返してしまう方には、性癖に問題が見られる場合や認知に大きな歪みが生じている場合があります。そのような場合には専門機関での専門的治療を受けることが更生に重要な意味を持つこともあります。
詳しくは認知行動療法を紹介した記事やページもご参照ください。
当然ですが留置施設や拘置所では性犯罪に関する更生プログラムを受けることはできません。
また刑務所に収監された後も更生のためのプログラムは用意されていますが、当然刑務所のプログラムは性犯罪の加害者に特化したものではありません。
専門的な治療を、本人に合った専門機関で早期に受けさせるためには、保釈を認めてもらい、判決前に受診をする必要があります。
特にAさんの事例のように執行猶予中の犯行であり実刑判決を受ける可能性が高いケースでは、専門機関で治療を受けるタイミングは判決の前しかありません。

Aさんが保釈を認められるためには権利保釈ないしは裁量保釈を認めてもらう必要があります。
そしていずれの保釈であれ、まずは証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを保釈を判断する裁判官に主張する必要があります。
その上で、専門機関を受診させる必要性が高いケースであり保釈をする必要が高く裁量保釈を認めるべき事案であることを主張することになります。
罪証隠滅のおそれがないことを主張するためには、被害者との示談が成立していること、家族による監督が期待できることなどを具体的に主張していきます。
逃亡のおそれがないことについても、家族の監督体制が重要な考慮事情になります。
事例のように執行猶予中の再犯のケースは実刑判決が見込まれるため、起訴直後に保釈が認められることは容易ではありません。
上記の事情を丁寧に主張し、かつ専門機関への通院が必要なことなど保釈を認めるべき事案であることを弁護士が作成する保釈請求書において詳しく主張する必要があります。

保釈がなかなか認められない事案でも、保釈請求書の内容等を検討すれば保釈が認められる事案もあります。あいち刑事事件総合法律事務所では、これまで実刑判決が見込まれる事案や否認している事案等一般に保釈が難しいと言われる事案でも数多くの保釈許可決定を獲得しています。保釈が認められずにお困りの方、保釈を認めてもらい早期に専門機関での治療を開始されたい方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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