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京都市山科区の不同意わいせつ事件 再犯防止と職業との関係②~再犯率と帰住先の有無は関係あるのか?

2024-04-18

【事例】
Aさんは、滋賀県高島市で両親と一緒に生活をしている26歳の男性です。
Aさんは大学を卒業後、京都市山科区にある会社に就職しました。
ある日、Aさんは会社近くの路上で、女性の臀部を触るという不同意わいせつ事件を何件も起こしてしまい、後日、警察に逮捕されてしまいました。
Aさんが不同意わいせつ事件で逮捕されたというニュースは、京都府内の新聞に記事が載ってしまい、ほどなく会社の知るところとなってしまいました。
警察署で拘束されているAさんのもとに会社の人がきて話し合った結果、Aさんは会社を退職することになりました。
その後、Aさんは刑事裁判を受けることになりましたが、裁判が進行している間に被害者の方との示談が成立したこともあり、Aさんは保護観察付の執行猶予判決を受けることができました。

Aさん家族はその後のAさんの生活について話合いをしましたが、意見が割れてしまいました。
Aさんと母は、一日も早く、再就職先を見つけて働いた方がいいと考えています。
しかし、Aさんの父は、保護観察中、執行猶予中という身で就職活動をすると、その就職活動の中で前科があることが会社に発覚し、そのまま世間にも知られてしまうのではないかということを心配し、再就職先を探すことに反対しています。

そこで、Aさんと両親は、今から再就職先を探していいものなのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/hisho04_00040.html)を参考にしつつ、公表されている統計の数値をもとに、職業を有しているかどうかという点と再犯率の関係についてみてきました。
今回は、前回の記事に引き続き、他にどのような事情が関連しているのかについてみていきましょう。

2 再犯率と帰る場所があるかどうかの関係

前回も解説したように、刑務所から仮釈放を許されて出所する際、保護観察に付されることになります(更生保護法48条3号)。
このように刑務所から出所して保護観察となった人のうち、適当な行き場がある人の再犯率と、適当な行き場がない人の再犯率を見てみましょう。
適当な行き場とは家族との同居先があることや、住み込みで働く就業先があることなどを指す場合とお考え下さい。

平成21年から25年の累計で、適当な行き場がない人たちのうち、3カ月もかからずに再犯に及ぶのはなんと22パーセントにのぼります。
また、6カ月もかからずに再犯に及ぶのは13.3パーセント、1年もかからずに再犯に及ぶのは18.1パーセントと続きます。
このように、出所後に適当な行き場のない人たちの53.4パーセントが、1年も経たずに再犯に及んでしまっているのです。

ちなみに、1年以上3年未満の期間中に再犯に及んでしまっているのは29.4パーセント、3年以上5年未満の期間中に再犯に及んでしまっているのは8.9パーセント、5年以上再犯に及んでいないのが8.3パーセントとなります。

それでは、なぜこのような状態になっているのかを考えると、真摯にサポートしてくれる方の存在というのが大きいのかもしれません。
Aさんの場合には、同居している家族がいるのは、再犯防止に向けて重要な要素といえるでしょう。

以上のとおり、帰る場所があるのかどうかというのも、仕事があるかどうかというのと同じように再犯防止という観点から非常に大事な要素だということがお分かりいただけるはずです。

次回の記事では、職業を有しているかどうかが再犯防止のために大切であることを前提に、そのような問題に対する対策について解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、裁判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
その他あいち刑事事件総合法律事務所では事例のように性犯罪をして逮捕された方に対して、より社会名での攻勢が可能になるために刑事処分の軽減を目指していく弁護活動にも力を入れています。性犯罪をされてしまった方の弁護活動についてはこちらのページも参考にしてください。

京都市山科区の不同意わいせつ事件 再犯防止と職業の関係①~再犯防止のために再就職をした方がいいのか~

2024-04-11

【事例】
Aさんは、滋賀県高島市で両親と一緒に生活をしている26歳の男性です。
Aさんは大学を卒業後、京都市山科区にある会社に就職しました。
ある日、Aさんは会社近くの路上で、女性の臀部を触るという不同意わいせつ事件を何件も起こしてしまい、後日、警察に逮捕されてしまいました。
Aさんが不同意わいせつ事件で逮捕されたというニュースは、京都府内の新聞に記事が載ってしまい、ほどなく会社の知るところとなってしまいました。
警察署で拘束されているAさんのもとに会社の人がきて話し合った結果、Aさんは会社を退職することになりました。
その後、Aさんは刑事裁判を受けることになりましたが、裁判が進行している間に被害者の方との示談が成立したこともあり、Aさんは保護観察付の執行猶予判決を受けることができました。

Aさん家族はその後のAさんの生活について話合いをしましたが、意見が割れてしまいました。
Aさんと母は、一日も早く、再就職先を見つけて働いた方がいいと考えています。
しかし、Aさんの父は、保護観察中、執行猶予中という身で就職活動をすると、その就職活動の中で前科があることが会社に発覚し、そのまま世間にも知られてしまうのではないかということを心配し、再就職先を探すことに反対しています。

そこで、Aさんと両親は、今から再就職先を探していいものなのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

今回の事例では、不同意わいせつ事件について保護観察付きの執行猶予を獲得した場合に、再就職をした方がいいものかどうかについてAさんの家族が悩んでいます。
そもそもAさんは不同意わいせつ事件を起こしてしまい逮捕されましたが、示談が成立しているなどの事情を考慮されて保護観察付執行猶予判決を得ることができました。不同意わいせつ事件の弁護活動に関してはこちらのページも参考にしてください。

そしてAさん家族のケースにおいて、“今の時点で”再就職先を探すべきかどうかを考える前提として、まずは再就職先があった方がよいかという点について解説していきます。
ポイントは、再犯率です。

2 再犯率と仕事の関係

Aさんの場合と異なり、有罪の判決を受けて刑務所に入ることになり、刑務所から出所してきた人たちの再犯率に関する統計が公表されています。
以下の内容は、法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/hisho/seisakuhyouka/hisho04_00040.html)を参考にしています。

刑務所から仮釈放を許されて出所する際、保護観察に付されることになります(更生保護法48条3号)。
このように刑務所から出所して保護観察となった人のうち、この保護観察中に仕事があった人と無職であった人の再犯率を見てみましょう。
平成21年から25年の累計で、仕事があった人の再犯率は7.6パーセントでした。
その一方で、無職であった人の再犯率は28.1パーセントにものぼり、仕事があった人の約4倍もあります。
注意してほしいのは、これは単なる再犯率ではなく、保護観察を受けてきてもなお、再犯をしている人の再犯率だということです。

それでは、なぜこのような状態になっているのでしょうか。
あくまで想像に過ぎませんが、これは次のような事情が考えられます。

まずはお金がないと考えられる点です。
仕事をしていないことからお金がなく、食べるのに困って盗みをはたらいてしまうというような場合が考えられます。

また、心の支えがないのではないかという点です。
犯罪をしてしまうかどうかという場面で、仕事をしていることによって、また犯罪をしたら職場の人に迷惑をかけるかもしれない、せっかく決まった仕事をまた失ってしまうかもしれないということが歯止めとしてはたらくかもしれません。
仕事がないと、そのような歯止めになる事情が減ってしまうということも考えられます。

以上のとおり、仕事があるのかどうかというのは、再犯防止という観点から非常に大事な要素だということがお分かりいただけるはずです。

次回の記事では、他にどのような要素が関係しているのかについて解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、裁判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

大津市の公然わいせつ事件 公認心理士とはどのような資格ですか?何の専門家ですか?

2024-02-08

【事例】
Aさんは、20代の男性で、大津市内のマンションに両親と一緒に暮らしています。
Aさんは、仕事のストレスから、自暴自棄な気持ちになってしまい、自宅近くの路上で陰部を露出して通行人の女性に見せつけるという公然わいせつ事件を複数回にわたって起こしてしまいました。
通行人の女性から相談を受けた警察が捜査に乗り出し、犯人としてAさんが浮上して取調べを受けるなどしました。
その結果、Aさんは大津簡易裁判所で略式裁判のうえで罰金の判決を受けました。
幸運なことに職場に事件が発覚することはありませんでした。
また、検察官や警察官からは、「次に同じような事件を起こしたら正式な裁判を受けてもらうことになる。」といった趣旨の話もされていました。
そのため、Aさんや両親は、もしもまた事件を起こしてしまった場合、今度こそ職場に発覚するのではないか、二度と事件を起こさないためにはどうすればいいのか心配になりました。
そこで、Aさんと両親は、二度と事件を起こさないためにどうしたらよいのかを相談するため、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

以前の記事で、Aさんが“カウンセラー”の力を借りるという方法が考えられること、“カウンセラー”、つまり、心理学の専門家の種類について解説していきました。
今回は、そのうちの1つである公認心理師について見ていきましょう。

2 公認心理師とは

公認心理師は、公認心理師法で定めらえた国家資格です。
公認心理師とは、「保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、」次の行為を業とする者をいいます(公認心理師法2条柱書)。
①心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること(公認心理師法2条1号)
②心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと(公認心理師法2条2号)
③心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと(公認心理師法2条3号)
④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと(公認心理師法2条4号)
公認心理士に関しましてはこちらの厚生労働省のHPも参考にしてください。

3 公認心理師になる方法

公認心理師になるためには、公認心理師試験に合格せねばなりません(公認心理師法4条)。
もっとも、この試験は誰でも受けられるわけではありません。
いくつかの例外的な方法もありますが、代表的なのは次の2つでしょう。
1つは、4年制大学で特定の科目を履修したうえで卒業し、かつ、大学院で特定の科目を履修したうえで修了する方法です(公認心理師法7条1号)。
もう1つは、4年制大学で特定の科目を履修したうえで卒業し、かつ、法律で定められた施設で2年以上の実務経験を積む方法です(公認心理師法7条2号)。

以前の記事で解説をした臨床心理士も、公認心理師と同じく、臨床心理士養成に関する指定大学院を修了するなどして受験資格を取得したうえで、資格試験に合格する必要があります。

国家資格と民間の資格という違いはありますが、公認心理師も臨床心理士も大学院での勉強やそれに相当するような経験を積んだうえで、資格試験にも合格しなければ取得できないという点で共通しています。
その分、これらの資格を持つ方は、カウンセリングをはじめとする心理の専門性が高い方だということがいえるでしょう。

様々な専門家から多角的にサポートを得ることは、再犯防止に向けても有効でしょう。
心理の角度からは、カウンセリングを担当する方の持っている資格の種類により、受けられるカウンセリングの専門性の高さが変わる可能性があります。どのような方に相談すればいいか分からずにお困りの方も、あいち刑事事件総合法律事務所では様々な専門家の方と連携してきた豊富な実績がありますので、まずは一度ご相談いただければと思います。

そして、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
具体的には刑事事件事件終了後にも、担当した弁護士が継続的に更生に向けたアドバイスや課題の実施をさせていただく顧問契約をご用意しています。
心理の角度だけではなく、法律の角度からもサポートを受けるかどうかについてご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

滋賀県大津市の公然わいせつ事件 臨床心理士とはどのような資格ですか?何の専門家ですか?

2024-01-18

【事例】
Aさんは、20代の男性で、大津市内のマンションに両親と一緒に暮らしています。
Aさんは、仕事のストレスから、自暴自棄な気持ちになってしまい、自宅近くの路上で陰部を露出して通行人の女性に見せつけるという公然わいせつ事件を複数回にわたって起こしてしまいました。
通行人の女性から相談を受けた警察が捜査に乗り出し、犯人としてAさんが浮上して取調べを受けるなどしました。
その結果、Aさんは大津簡易裁判所で略式裁判のうえで罰金の判決を受けました。
幸運なことに職場に事件が発覚することはありませんでした。
また、検察官や警察官からは、「次に同じような事件を起こしたら正式な裁判を受けてもらうことになる。」といった趣旨の話もされていました。
そのため、Aさんや両親は、もしもまた事件を起こしてしまった場合、今度こそ職場に発覚するのではないか、二度と事件を起こさないためにはどうすればいいのか心配になりました。
そこで、Aさんと両親は、二度と事件を起こさないためにどうしたらよいのかを相談するため、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事で、Aさんが“カウンセラー”の力を借りるという方法が考えられること、“カウンセラー”、つまり、心理学の専門家の種類について解説していきました。
今回は、そのうちの1つである臨床心理士について見ていきましょう。

2 臨床心理士の専門業務

以前の記事でも解説したように、臨床心理士は公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間の資格です。
その公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会は、「臨床心理士資格審査規程」というものを定めており、その中で、臨床心理士に求められる専門業務を定めています。
具体的には次のようなものです。

⑴ 臨床心理査定
様々な心理テストや観察面接を行い、その人ごとに独自性、個別性がある固有の特徴や問題の所在を明らかにしていく行為や、心の問題で悩む人々をどのような方法で援助するのが良いかを考える行為を意味します。

⑵ 臨床心理面接
その人ごとの特徴に応じて、精神分析、集団心理療法、行動療法、認知療法、家族療法など様々な臨床心理学的技法を用いながら、その人の心の支援に資する行為です。
いわゆるカウンセリングを意味します。

⑶ 臨床心理的地域援助
特定の個人を対象とするのではなく、地域や学校、職場などといったコミュニティを対象に、コミュニティ全体を考慮した心の情報整理や環境調整を行う活動や、心理的情報を提供したり低減したりする活動を意味します。

⑷ ⑴から⑶に関する調査・研究
専門資質の維持・発展のために、臨床心理的調査や研究活動をしたり、ある特定の問題や課題に特化した事例研究をしたりといった自己研鑽を意味します。

以上は公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会のホームページ(http://fjcbcp.or.jp/rinshou/gyoumu/)を参考にしています。

3 臨床心理士の職域

臨床心理士は医療、教育、福祉、産業、そして司法と様々な分野で活動をしています。

医療の分野としては、病院の精神科や心療内科、保健所、精神保健福祉センターなどで活動しています。
心の問題で不適応に陥っている人などへのサポートが行われます。

教育の分野としては、スクールカウンセラーなど学校内の相談室や教育センターなどが挙げられます。

福祉の分野では、児童相談所や女性相談センターなどで心理的側面からの援助がされます。

産業の分野としては、企業内の相談室やハローワークなどで活動しています。

司法の分野では、少年鑑別所での心理的側面に関するテストや調査、心理面接などが行われています。

このように臨床心理士の方は民間の資格といえど、様々な領域に対する専門的な知見を持つ必要があるため、とても信頼できる資格になります。
また活動についても多角的な視点から今後の更生に向けたアドバイスを受けることができるので、再犯防止にも重要な役割を果たしていただくことができます。
弊所でも依頼者様の特性に合わせて臨床心理士の方と協力しながら更生に向けた計画を立てたり、公判後の対応について検討をしたりした活動例がございます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
様々な専門家から多角的にサポートを得ることは、再犯防止に向けても有効でしょう。
弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

滋賀県大津市の公然わいせつ事件 カウンセリング受ける場合には誰にお願いすればいいの?

2024-01-11

【事例】
Aさんは、20代の男性で、大津市内のマンションに両親と一緒に暮らしています。
Aさんは、仕事のストレスから、自暴自棄な気持ちになってしまい、自宅近くの路上で陰部を露出して通行人の女性に見せつけるという公然わいせつ事件を複数回にわたって起こしてしまいました。
通行人の女性から相談を受けた警察が捜査に乗り出し、犯人としてAさんが浮上して取調べを受けるなどしました。
その結果、Aさんは大津簡易裁判所で略式裁判のうえで罰金の判決を受けました。
幸運なことに職場に事件が発覚することはありませんでした。
また、検察官や警察官からは、「次に同じような事件を起こしたら正式な裁判を受けてもらうことになる。」といった趣旨の話もされていました(刑罰の種類に関する詳しい解説に関してはこちらも参考にしてください)。
そのため、Aさんや両親は、もしもまた事件を起こしてしまった場合、今度こそ職場に発覚するのではないか、二度と事件を起こさないためにはどうすればいいのか心配になりました。
そこで、Aさんと両親は、二度と事件を起こさないためにどうしたらよいのかを相談するため、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

Aさんが公然わいせつ事件を起こした原因は、仕事のストレスから自暴自棄な気持ちになってしまったためだと言います。
今後Aさんが再犯せずに更生していくためには、ストレスに適切に対処することが重要になります。
このようなAさんの心の問題については、“カウンセラー”の手助けを受けるという方法が考えられます。
しかしながら、現代ではカウンセリングと一言で言っても様々な資格を持った方がカウンセリングの担当すなわち、‘‘カウンセラー‘‘をされています。
今回は、そのような“カウンセラー”、つまり、心理学の専門家の種類について解説していきます。

2 心理に関する資格の種類

心理に関する資格としては、
①公認心理師
②臨床心理士
③精神保健福祉士
④認定心理士
⑤産業カウンセラーなどその他の資格
が挙げられます。

この中で最も特異なのは①公認心理師です。
この公認心理師という資格は、日本で初めての心理に関する国家資格で、2017年に作られた認定心理士法という法律で作られた比較的新しい資格です。
この公認心理師については、別の記事で解説をします。

また、同じく③精神保健福祉士も精神保健福祉士法という法律に基づいて取得する国家資格です。
もっとも、精神保健福祉士は、「専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援」「の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと」を業としてする者をいいます(精神保健福祉士法2条)。
そのため、精神科病院などから社会復帰する際のサポートに重点を置いている点で、他の資格とは方向性が違うものといえます。

その一方で、①臨床心理士、④認定心理士、⑤産業カウンセラーなどその他の資格は民間の資格になります。

3 臨床心理士

民間の資格とは言っても、臨床心理士の資格を取得するのは簡単ではありません。
臨床心理士の資格を取得するためには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会の資格試験に合格する必要があります。
しかし、この資格試験を受験するためにも条件があります。
例外もありますが、基本的には、臨床心理士養成に関する指定大学院を修了するか、専門職大学院を修了する必要があります。

また、資格を取得してからも、5年ごとに資格の更新をしなければなりません。

臨床心理士ができることについては、別の記事で解説します。

4 認定心理士

その一方で認定心理士とは、公益社団法人日本心理学会によって認定される資格ですが、心理学の専門家として仕事をするために必要な、最低限の標準的基礎学力と技能を修得しているという資格です(https://psych.or.jp/qualification/)。
同じ民間資格ではあるものの、臨床心理士のように指定大学院の修了が受験資格となっていたり、資格試験の合格が必要だったりする資格ではありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
刑事弁護のご依頼を受けた際に、お近くで頼れるカウンセリングの専門家や心療内科をご紹介させていただく場合もあります。
様々な専門家から多角的にサポートを得ることは、再犯防止に向けても有効でしょう。

あいち刑事事件総合法律事務所では事件終了後の再犯防止、更生支援にも力を入れています。
カウンセリングだけでは解決できない相談や、事件を担当した弁護士にだからこそ話せる相談などもあるかと思います。
その場合、あいち刑事事件総合法律事務所では事件終了後も顧問契約という形で真の更生に向けたサポートをさせていただけます。
弁護士による更生に向けたサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

兵庫県姫路市の不同意わいせつ事件 性犯罪再犯防止プログラムではどんなことをするの?

2024-01-04

【事例】
Aさんは、神戸市内の大学に通う18歳の方で、兵庫県姫路市内のマンションで両親と一緒に生活しています。
Aさんは、大学近くの路上で女性に抱きつくという不同意わいせつ事件を起こしてしまいました。
その後、警察の捜査を受け、最終的に神戸家庭裁判所姫路支部は、Aさんを保護観察処分としました。
性犯罪は再犯率が高いというインターネット上の記事を読んだAさんの両親は、Aさんが今後、再犯をしないためにはどうしたらいいのか不安になりました。
そこで、Aさんと両親は、保護観察処分ではどのようなことをするのか、Aさんの再犯防止に向けてどのようなことができるのかを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

以前の記事で、いわゆる性犯罪を理由に保護観察を受けるAさんは、保護観察所の「性犯罪再犯防止プログラム」の対象となる可能性があるという解説をしてきました。
以前の記事の内容に興味を持っていただいた方はこちらから読んでいただけます。
今回は、その「性犯罪再犯防止プログラム」の内容について、さらに解説していきます。

2 認知行動療法について

性犯罪再犯防止プログラム」は保護観察所が実施する認知行動療法に基づいたプログラムです。

この認知行動療法とは、ある状況に出くわした時に、私たちが持つ感情と行動が、その状況をどうとらえているか(つまり、「認知」)によって影響を受けることに着目した心理療法です。
認知行動療法の対象の方の感情や行動に影響を及ぼしている極端なとらえ方(歪んだ認知)を、対象の方と治療者が共同で確認します。
その上で、対象の方が、より現実的で幅広いとらえ方(認知)を自分自身で選択できるようにすることで、本来持っている力を発揮できることを目指すという心理療法です。

なお、認知行動療法に関する以上の記載は厚生労働省の「e-ヘルスネット」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-044.html)を参照しています。

3 「性犯罪防止プログラム」

「性犯罪防止プログラム」は、導入プログラム、コアプログラム、メンテナンスプログラムの三段階に分けて行われます。

⑴ 導入プログラム
保護観察処分を受けた方のうち、仮釈放を許されて保護観察に付された場合など、一度刑事施設に収容されて、そこで刑事施設でのプログラムを受講した方以外の方が受けるプログラムです。
プログラムの目的や概要の説明を受けたり、自分の事件当時の状況やこれからの目標などを確認することでコアプログラムへの動機付けを行なったりします。
原則的には、コアプログラムを実施する予定の保護観察官が、個別に面接形式で実施されるとされています。

⑵ コアプログラム
保護観察開始後、おおむね2週間に1回ほどの頻度で行われ、全5過程をおおむね3か月間で実施することになります。
具体的には、
①性加害のプロセス
②性加害に繋がる認知
③コーピング(対処方法)
④被害者の実情を理解する
⑤二度と性加害をしないために
という5過程が行われます。

①「性加害のプロセス」とは、性加害を起こすときの行動や気持ちなどを振り返り、自分が性加害を起こすパターンなどについて考えるものです。
②「性加害に繋がる認知」とは、性加害に繋がりやすい特有の認知があること、認知を選び直す方法について学ぶものです。
③「コーピング(対処方法)」とは、日常生活で上手くいかないときにどのように対処すればよいかを考えるものです。
④「被害者の実情を理解する」とは、性加害が被害者に及ぼす被害の実情について学び、被害者に対する認知の癖などを改めて考えるものです。
⑤「二度と性加害をしないために」とは、性加害をしないとともに、なりたい自分になるための再発防止計画をまとめるものです。

なお、コアプログラムにおいては、共通の指導のみでは対応困難な対象者に対して、その特性等を踏まえた指導も実施されます。

⑶ メンテナンスプログラム
保護観察官や保護司の定期的な面接を行い、コアプログラムまでで学んだことを復習したり、再発防止計画の点検や見直しを行なったりします。

なお、以上の記載は法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/hogo1/kouseihogoshinkou/hogo_hogo06_00002.html)に公開されている「刑事施設及び保護観察所の連携を強化した性犯罪者に対する処遇プログラムの改訂について(令和4年度~)」を参照しています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、これまで数多くの刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、保護観察中のサポートにも力を入れています。
審判終了後後であっても顧問契約を準備させていただいており、真の更生に向けて弁護士作成の課題を実施するなどの更生支援活動を行っています。
保護観察中の刑事事件・少年事件に精通した弁護士によるサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

兵庫県姫路市の不同意わいせつ事件 保護観察中の性犯罪再犯防止プログラムについて解説します

2023-12-07

【事例】
Aさんは、神戸市内の大学に通う18歳の方で、兵庫県姫路市内のマンションで両親と一緒に生活しています。
Aさんは、大学近くの路上で女性に抱きつくという不同意わいせつ事件を起こしてしまいました。
その後、警察の捜査を受け、最終的に神戸家庭裁判所姫路支部は、Aさんを保護観察処分としました。
性犯罪は再犯率が高いというインターネット上の記事を読んだAさんの両親は、Aさんが今後、再犯をしないためにはどうしたらいいのか不安になりました。
そこで、Aさんと両親は、保護観察処分ではどのようなことをするのか、Aさんの再犯防止に向けてどのようなことができるのかを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

前回の記事では少年事件での保護観察処分について詳しく解説させていただきました。
今回の記事ではその保護観察の内容をさらに掘り下げて、性犯罪事件を起こした少年を対象にするプログラムについて解説させていただきます。
少年事件の流れや弁護活動についての一般的な解説はこちらのページも参考にしてください。

1 特別遵守事項について

前回の記事で、Aさんが受ける保護観察について解説をしてきました。
そして、Aさんのようにいわゆる性犯罪を理由に保護観察となった場合、特別遵守事項(保護観察にあたって、日常生活で守らなければならないルールとして設定されるもの)として(更生保護法51条)、「性犯罪再犯防止プログラム」の受講が義務づけられることがあります。
今回はその「性犯罪再犯防止プログラム」の対象について解説していきます。

2 「性犯罪再犯防止プログラム」とは

性犯罪再犯防止プログラム」とは、いわゆる性犯罪の再犯率の抑制を目指して、保護観察所が実施している認知行動療法に基づいたプログラムです。
令和4年の3月までは、「性犯罪者処遇プログラム」と呼ばれていました。

この「性犯罪再犯防止プログラム」では、数カ月間かけ、段階的にプログラムを実施していきます。
また、いわゆる性犯罪を理由に保護観察を受けた人だけではなく、家族に対するプログラムも実施されることがあります。
このようなプログラムを通じて、受講者の方は性的欲求をコントロールする術を身につけていくことになります。
詳しいプログラムの内容については、また別の記事で解説します。

3 「性犯罪再犯防止プログラム」の対象者

①対象として定められている一部の犯罪を行った方で、②保護観察処分を受けた方が、一部の例外を除き、保護観察所における「性犯罪再犯防止プログラム」の対象となります。

⑴ 対象となる犯罪
まず、保護観察処分を受けた理由に、不同意わいせつ罪(刑法176条)、不同意性交等罪(刑法177条)、監護者わいせつ及び監護者性交等(刑法179条)、不同意わいせつ等致傷(刑法181条)、強盗・不同意性交等及び同致死(刑法241条)が含まれる場合です。
それだけでなく、下着窃盗や住居侵入など、罪名に関わらず、犯罪の原因・動機が性的欲求に基づく場合も対象となります。

⑵ 保護観察処分のバリエーション
まず、少年法は、18歳以上の少年に対する処分の1つとして、「保護観察所の保護観察に付する」という処分を設けています(少年法64条1項1号2号)。
ただし、「性犯罪再犯防止プログラム」の対象となるのは、保護観察処分を受けた少年のうち、18歳以上で、必要性が認められる場合に限られます。

しかし、少年が保護観察処分を受けるのはこの場合だけではありません。
少年院から仮退院を許されて保護観察に付される場合もあります(更生保護法48条2号)。
18歳以上で、必要性が認められる場合に限られるのは同様です。

また、成人だったとしても、仮釈放を許されて保護観察に付される場合(更生保護法48条3号)、保護観察付の執行猶予の判決を受けた場合(更生保護法48条4号)には、保護観察に付されることになります。

⑶ Aさんの場合
Aさんは、18歳以上で、不同意わいせつ罪という対象の犯罪で保護観察処分を受けていますから、必要性が認められれば、この「性犯罪再犯防止プログラム」の対象として、特別遵守事項で受講が義務づけられる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、保護観察中のサポートにも力を入れています。
通常の刑事弁護活動に加えまして、審判後の方を対象に再犯防止の計画を一緒に立て、課題を実施し、審判後も継続的に面談を実施する顧問契約もご用意しています。
再犯防止に向けた計画や課題の内容は、直接面談を実施させていただき、対象となる方お一人お一人に合わせて全てオーダーメイドで内容を準備させていただきます。
保護観察中の弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

兵庫県姫路市の不同意わいせつ事件 保護観察処分とは何かについて弁護士が解説します

2023-11-30

【事例】
Aさんは、神戸市内の大学に通う18歳の方で、兵庫県姫路市内のマンションで両親と一緒に生活しています。
Aさんは、大学近くの路上で女性に抱きつくという不同意わいせつ事件を起こしてしまいました。
その後、警察の捜査を受け、最終的に神戸家庭裁判所姫路支部は、Aさんを保護観察処分としました。
性犯罪は再犯率が高いというインターネット上の記事を読んだAさんの両親は、Aさんが今後、再犯をしないためにはどうしたらいいのか不安になりました。
そこで、Aさんと両親は、保護観察処分ではどのようなことをするのか、Aさんの再犯防止に向けてどのようなことができるのかを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 保護観察処分とは

現在、成人となる年齢は18歳とされています(民法4条)。
しかし、少年法においては、「二十歳に満たない者」を「少年」と定めて(少年法2条1項)、少年法の適用対象としていますから、犯罪をしてしまった18歳以上20歳未満の方には、未成年の方と同様に少年法が適用されます。
そして、少年法は、18歳以上の少年に対する処分の1つとして、「保護観察所の保護観察に付する」という処分を設けています(少年法64条1項1号2号)。

保護観察というのは、少年を少年院などの施設に収容することはせずに、家庭や職場などに任せたまま、継続的に指導や監督などをすることで、社会内で少年の改善更生を目指す処分です。
保護観察や、少年事件の流れなどについてより詳しく知りたい方は当事務所の少年事件に関するページも参考にしてみてください。

2 保護観察処分を担当する者

保護観察を担当する機関は、少年の住居地を管轄する保護観察所です(更生保護法60条)。
実際に保護観察を実施するのは、保護観察所の保護観察官や保護司と呼ばれる方です(更生保護法61条1項)。

保護観察官は、「医学、心理学、教育学、社会学その他の更生保護に関する専門的知識に基づき」「犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に関する事務に従事する」国家公務員です(更生保護法31条2項)。

一方の保護司は、「保護観察官で十分でないところを補い」、保護観察所などの所掌事務に従事することを役割としています(更生保護法32条)。
非常勤かつ無給の国家公務員ですが、誰でもなれるわけではありません。
保護司は、①「人格及び行動について、社会的信望を有すること」、②「職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること」、③「生活が安定していること」、④「健康で活動力を有すること」という条件を全て満たす必要があります(保護司法3条1項)。
そして、保護司選考会の意見を聴いた保護観察所長の推薦を受け、法務大臣またはその委任を受けた地方更生保護委員会の委員長に委嘱されて初めて保護司となることができます(保護司法3条)。

3 保護観察ですること

保護観察処分を受けると、月に2回程度、担当の保護司のもとを訪れて、その指導を受けることが多いです。
また、保護観察の処分を受けた場合、いくつか日常生活で守らなければいけないルール(「遵守事項」といいます。)が設定されます。
遵守事項には、一般遵守事項と特別遵守事項の2種類があります。
一般遵守事項は、「再び犯罪をすることがないよう、又は非行をなくすよう健全な生活態度を保持すること」(1号)や「保護観察官又は保護司の呼出し又は訪問を受けたときは、これに応じ、面接を受けること」(2号イ)などと法律で定められています(更生保護法50条)。
特別遵守事項は、一般遵守事項以外にも、特別に遵守すべき事項がある場合に、具体的に定められます(更生保護法51条)。
Aさんのように、いわゆる性犯罪を理由に保護観察となった場合には、「性犯罪再犯防止プログラム」の受講を特別遵守事項として義務付けられることがあります。
この「性犯罪再犯防止プログラム」については、別の記事で詳しく解説します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、保護観察中のサポートにも力を入れています。
少年事件で保護観察処分を受けた後についても、少年事件を担当した弁護士がそのまま保護観察中にも継続的に面談を行い更生の支援をサポートする顧問契約もご用意しています。
性犯罪を起こしてしまった方で今後更生していけるか心配な方や、保護観察中の弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

神奈川県横浜市の不同意性交等事件 刑法の性交同意年齢の改正と児童犯罪について②

2023-11-02

【事例】
神奈川県横浜市に住む大学生のAさん(22歳)は、出会い系サイトで女子中学生のVさん(15歳)と知り合って、令和5年の8月に会う約束をしました。
Aさんは事前のラインでのやり取りから、Vさんが15歳であることを知りながら、会った際にラブホテルでVさんの同意を得て性行為をしてしまいました。
Vさんは当日に両親にAさんとの性行為の事を話して、激怒したVさんの両親が神奈川県警南警察署に被害届を提出しました。
その後、Aさんは南警察署の警察官に不同意性交等罪の容疑で通常逮捕されました。
Aさんは事実関係を認めたものの、自分のした行為が同意を得ていたにもかかわらず法定刑が「5年以上の懲役」と定められた不同意性交等罪にあたると知り、あまりの重さに大変驚きました。
(事例はフィクションです)

前回の記事では令和5年改正における、性交同意年齢に関して解説しました。
刑法以外にも児童未成年者に対する性犯罪に関する規定は多数存在します。
例えば事例のようなケースについては、令和5年改正の前には神奈川県の青少年育成条例違反が成立する可能性が高いケースでした。
今回の記事では、児童に対する性犯罪に関する規定についてどのようなものがあるのか、どのような行為が処罰対象になるのかについて解説します。

未成年者児童に対する性犯罪に関する刑罰規程

以下では未成年者児童との性行為や犯罪行為についての刑罰規定について代表的なものをあげさせていただきます。
児童を被害者とする犯罪についてはこちらにも詳しく解説があります。

青少年育成条例違反
各都道府県によって名称や規定内容は異なりますが、18歳未満の児童との性交及び性交類似行為に関して条例で処罰規程が定められています。
以下で神奈川県の条例の条文をあげさせていただきます。

神奈川県青少年保護育成条例19条
何人も、青少年に対し、みだらな性行為又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
3 第1項に規定する「みだらな性行為」とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する「わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゆう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。

児童買春
児童買春とは被害児童が18歳未満であることを知りながら、金銭等の対価を供与する又は供与する約束をして性行為を行うことをいいます。
児童買春については児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、「児童ポルノ・児童買春規制法」といいます)に処罰規定があります。
以下に児童買春に関する条文をあげさせていただきます。

児童買春・児童ポルノ規制法2条
この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

同法4条
児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

児童買春は先述した条例違反よりも重い刑罰が予定されています。これは対価の供与が行われることで、判断能力が未熟な未成年者の判断を誤らせる危険が高くなり、より厳しく保護されなければならないという趣旨に基づいていると考えられます。

児童淫行
児童福祉法の条文では、児童に淫行させる行為について、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金を科すと定められています。また、場合によっては両方の刑が科される場合があります(児童福祉法34条1項6号、60条1項)。

青少年育成条例違反や児童買春との違いは、淫行「させる行為」と規定されたという点にあります。
「させる行為」といえるためには、直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為と解釈されています。
そして具体的には、「行為者と児童の関係,助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度,淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯,児童の年齢,その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断する」と最高裁では解釈されています。
このような関係性の代表的な例としては先生と生徒の関係、親子関係などが挙げられます。
このような影響力により児童に対し性行為が行われた場合には、児童福祉法違反が成立し、加害者に前科がない場合にも実刑判決が下される裁判例が多く、非常に重い刑罰が科される傾向にあります。

④児童ポルノ製造
18歳未満の児童の裸などの性的な画像や動画を撮影した場合や、そのような画像や動画を被害児童に撮影するように指示してその画像や動画を自身の携帯電話に保存した場合には児童ポルノ製造に該当します。
児童ポルノ製造については先ほど児童買春の際にあげた児童ポルノ・児童買春規制法に根拠規定があります。

児童買春・児童ポルノ規制法第7条
4 前項に規定するもののほか、児童に第二条第三項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。
5 前二項に規定するもののほか、ひそかに第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第二項と同様とする。

自分で撮影する場合だけでなく、性欲充足などの目的からSNSでやり取りをしていた児童に性器の画像を撮影してと言って、撮影させたものを送らせても製造罪が成立します。
なお要求の態様や送ってもらう動画や画像の内容次第ではによっては強要罪や不同意わいせつ罪といったより重い刑にあたる場合があります。このような行為は厳に慎むべきでしょう。
また令和5年の刑法改正により、16歳未満の者に対してはこのような性的画像の送付を要求するのみでも犯罪にあたることになりました(刑法182条3項)。

未成年者誘拐・略取
未成年者誘拐・略取については刑法に定めがあります。

刑法第224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

刑法には他にも略取や誘拐についての処罰がありますが、目的を問わずに処罰しているのは、未成年者に対する誘拐・略取のみです。
略取や誘拐に関する詳しい説明はここでは省略しますが、例えば家出しており泊まる家を探している18歳未満の者に対して、「自分の家においでよ」と伝えて自宅に招き入れる行為でも未成年者誘拐罪が成立する可能性が高いです。
そのような投稿を見た場合や依頼を受けた場合に、何とか自分が助けてあげたいという気持ちになるかもしれませんが、自分の家に泊めるのではなく警察や児童相談所など保護すべき機関に連絡するようにしてください。

⑥面会要求等の罪
面会要求等の罪に関しては令和5年の刑法改正により新たに設けられた罪になります。被害者は16歳未満の者とされており年齢規定が設けられています。
以下に改正後の条文をあげさせていただきます。

刑法第百八十二条 
わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 威迫し、偽計を用い又は誘惑して面会を要求すること。
二 拒まれたにもかかわらず、反復して面会を要求すること。
三 金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をして面会を要求すること。
2 前項の罪を犯し、よってわいせつの目的で当該十六歳未満の者と面会をした者は、二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。

このような罪が新設されたのは、児童犯罪の防止のためにこれまでは性行為などがあった際に初めて処罰していたのを、その危険が発生する段階で処罰できるようにすることで被害を未然に防止しようとする趣旨であると考えられます。
例えば、わいせつな目的を持ってSNSで知り合った児童に、会ったらお小遣いをあげるからなどと言って会うことを要求する場合に、罪が成立すると考えられます。

児童に対する性犯罪がより、加害者に対して厳しい要件によって保護されるのはなぜか

これまで児童未成年者を被害者とする犯罪について解説をしてきましたが、いずれも成人に同じ行為をしても犯罪が成立しない場合や、より厳しい要件を満たさなければ犯罪が成立しない場合があることがお分かりいただけたかと思います。
このような規定になっている趣旨は、大まかにいえば性的な知識や判断について未熟である、児童未成年者を保護するという点にあります。
未成年者はネットなどで性的なことについて多少の知識があっても、社会経験が不十分であることなどから、性的な関係を持つことによる悪影響や、犯罪に巻き込まれる危険性、性的搾取をされることの影響などについて一人で判断することが困難な場合がほとんどです。特に年の離れた大人が相手であれば適切に対応することはより困難になることが容易に想像できます。
このような未熟で未発達な児童未成年者をしっかりと保護するために、そのような法律の規定になっているのです。

児童を被害者とする刑事事件を起こしてしまった際に、加害者が考えるべきことは何か

先ほど法律の趣旨について未成年者の保護があると説明させていただきました。
しかし言葉の意味が分かっても、そのことを真に理解し再犯防止や更生につなげることには、ハードルがあるように思います。
事件を起こされた方の中には、相手も性行為や家に来ることに同意していたのだから罪に問われることに納得がいかないと話す方もいます。
私が、児童や未成年者を被害者とする犯罪をしてしまった方の弁護を担当する場合には次のような問いかけをすることが多いです。

「あなたが中学生や高校生の頃に、先生や親以外の大人の人と関わることはどれくらいあったでしょうか。その大人の人にはどのような印象を持っていたでしょうか」
「あなたが中学生や高校生の頃、大人の人から性行為を誘われたらはっきりと断ることはできますか」
「あなたは中学生や高校生の頃、性行為の意味についてちゃんとわかっていましたか」
「あなたの子どもが被害者と同じくらいの年齢で性行為をしたとして、親から見てそれは同意していたからいいだろうで済ませられる問題ですか」

未成年の頃の同意は、いろいろな物事を理解しての同意、相手と対等な立場にたっての同意ではないことが多いです。
たとえ形式上同意をとったとしても、性行為をすることは許されるべきではありません。

あいち刑事事件総合法律事務所では示談など対被害者に対する弁護活動だけでなく、事件を起こした方への面談や再犯防止に向けた課題を実施して真の更生を目指しています。
児童犯罪についても数多くの取り扱い実績のあるあいち刑事事件総合法律事務所に是非一度ご相談ください。
性犯罪に関して詳しい弁護活動についてはこちら

神奈川県横浜市の不同意性交等事件 刑法の性交同意年齢の改正と児童犯罪について①

2023-10-26

【事例】
神奈川県横浜市に住む大学生のAさん(22歳)は、出会い系サイトで女子中学生のVさん(15歳)と知り合って、令和5年の8月に会う約束をしました。
Aさんは事前のラインでのやり取りから、Vさんが15歳であることを知りながら、会った際にラブホテルでVさんの同意を得て性行為をしてしまいました。
Vさんは当日に両親にAさんとの性行為の事を話して、激怒したVさんの両親が神奈川県警南警察署に被害届を提出しました。
その後、Aさんは南警察署の警察官に不同意性交等罪の容疑で通常逮捕されました。
Aさんは事実関係を認めたものの、自分のした行為が同意を得ていたにもかかわらず法定刑が「5年以上の懲役」と定められた不同意性交等罪にあたると知り、あまりの重さに大変驚きました。
(事例はフィクションです)

刑法では同意がある性行為についても、同意がない場合と同様に処罰される場合の規定があります。性交同意年齢についての規定もその一つです。
今回の事例のAさんのように被害者の同意がある性行為については、処罰される趣旨が分からず更生や反省が十分に進まないケースもあります。
今回の記事では令和5年に行われた刑法の性犯罪規程の改正の中の、性交同意年齢に関する改正の解説や、それが定められた趣旨についてあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

令和5年に行われた刑法の性犯罪規程の改正について

令和5年7月13日に施行された改正刑法においては性犯罪規定について大幅な法改正がなされました(以下、この改正について「令和5年改正」といいます)。
令和5年改正において、これまでは「強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪」と呼ばれていた罪が改正後の刑法第176条に「不同意わいせつ罪」と定められました。
またこれまでは「強制性交等罪、準強制性交等罪」と呼ばれていた罪が改正後の刑法第177条に「不同意性交等罪」と定められました。

具体的な改正内容は非常に多岐にわたるのでこの記事での詳細な説明は省略して、本記事では性交同意年齢の改正内容について詳しく解説させていただきます。
性交同意年齢とは対象者の年齢だけを基準として、性的な同意を無効にする、すなわち一定の年齢未満の者に対する性行為については、実際に同意があったかどうかにかかわらず、同意がなかった場合と同様に処罰するという意味である。
改正前の強制わいせつ罪の条文を例に説明させていただきます。

(令和5年改正前)刑法第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

この規定の「十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」の部分が性交同意年齢に関する規定です。
その前の規定と比べると、十三歳未満の者に対しては「暴行または脅迫」を用いなくても強制わいせつ罪が成立すると定めており、単にわいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立するとしていました。
この規定について令和5年改正では性交同意年齢の引き上げが行われました。

性交同意年齢の改正内容について

令和5年改正における、刑法第176条及び刑法177条の性交同意年齢に関する改正部分は以下の通りである。

(令和5年改正後)刑法第176条(不同意わいせつ)
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、
わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

(令和5年改正後)刑法第177条(不同意性交等
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、
性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

令和5年改正後の性交同意年齢についての条文は、法律の条文になれていない方には読みづらいかと思いますが、簡単に説明すると以下のような内容です。
①原則として、16歳未満の者に対してわいせつな行為や性交等を行った場合には、他の要件を問わず不同意わいせつ罪ないしは不同意性交等罪が成立する。
②ただし例外として、被害者の年齢が13歳以上かつ16歳未満である場合には、被害者と加害者の年齢差が誕生日を基準にして、5年未満であれば、各号に掲げる事由がある場合に限って不同意わいせつ罪ないしは不同意性交等罪が成立する。
③補足ですが、被害者の年齢が13歳以上かつ16歳未満であり、年齢差が誕生日を基準に5年以上離れていれば、各号に掲げる要件がなくてもわいせつな行為や性交等に該当する事実があれば不同意わいせつ罪ないしは不同意性交等罪がせいりつする。
例えば、事例のケースであれば被害者が15歳であるから「16歳未満」となり、加害者が22歳であるから年齢差は少なくとも6年以上あるので、お互いの同意のもと行われた性行為であっても、令和5年改正後の刑法によれば「不同意性交等罪」が成立します。

改正刑法前には性交同意年齢が13歳未満であるとしていたので、不同意性交等罪(旧強制性交等罪)に問われると聞いたAさんが戸惑うのは無理ないことかもしれません。
しかしながら既に改正刑法は施行されているので、Aさんはより自覚を持って慎重に行動する必要があったでしょう。

性交同意年齢が定められる趣旨について

ではなぜ、刑法の性犯罪規定には性交同意年齢についての定めがあり、令和5年改正によって性交同意年齢がさらに引き上げられたのでしょうか。
性交同意年齢が定められているのは、定める年齢以下の者については判断能力が未熟であり、性的行為の意味を十分に理解できずにその未熟さに付け込まれるおそれもあるので、法律上特別に保護する必要があるとされています。
そして令和5年改正においては13歳以上16歳未満の者についても、性的行為の意味は一応理解できるものの 相手との関係によって、相手の言動の影響を受けやすく、状況に流されて適切に対処する能力が不十分であることを考慮され、一定の年齢差以上の者との関係に対しては、有効な性的同意が肯定できないとの考えから、年齢差の条件を付された上で性交同意年齢が引き上げられました。
加害者の側からすれば、一見して性行為の意味を理解し同意をとったとしても、一定の年齢未満の者であれば、性交をするかしないかという自分の体への侵害を受け入れるかどうかという重要な判断を、ちゃんとできないものだという相手の立場に立った考えを持つことが求められます。
事例のAさんのような場合では、自分の欲求で安易に性行為に及んでしまったことを反省し、15歳のVさんや、同年代の児童は、その場ではっきりとノーということができない場合もあり得、そうだった場合後から自分のした判断を後悔して、一生心の傷として残るかもしれないこと、そうなれば自分のした行為は相手の未熟さに乗じて無理やり性行為をしたことと何も変わらないことを胸に刻んで同じことを決してしないように更生を目指すべきです。

不同意性交等罪が成立する場合には実刑判決となる可能性が高いので、事件の反省と併せて早期に示談交渉に着手する必要が高いです。
自身の性癖や欲求のコントロールができなかった結果の犯行であれば、専門機関への通院が必要になるケースもあります。
性犯罪の加害者に対する弁護活動については、当サイトの痴漢、盗撮事件のページにも解説がありますので、そちらも参考にしてください。
次回は、不同意性交等罪に限定せず、未成年者を被害者とする犯罪に関して広く説明させていいただきます。

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