服役中の年金、健康保険

このページでは、懲役刑や禁錮刑で刑務所に服役している方の社会保険のうち、特に国民年金(老齢年金)と、国民健康保険(いわゆる健康保険、保険証について)について解説します。

国民年金(老齢年金)と保険料の支払いについて

国民年金は、

  1. 日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、
  2. 厚生年金に加入している人以外

の全員が被保険者(加入者のこと)となる年金制度です。

受刑者となってもなお会社員として雇われ続けているという方はごく少数でしょうから、服役している方の多くは国民年金の対象者となっているのです。

制度上は、たとえ服役中であったとしても、日本に住んでいる限り、20歳以上60歳未満の方なのであれば国民年金の保険料を支払わなければなりません。

もちろん、受刑中に払っていた分も、保険料払い込み期間として計算されます。しかし、多くの方は所得がないため、自分で保険料を納付するということが出来ない状況にあります。

その場合、「国民年金保険料の免除申請」をすることで、刑務所での服役期間中の保険料の支払いの免除を受けることが出来ます。

国民年金保険料の免除申請は、住民登録のある市区町村か、服役している矯正施設を通じて矯正施設が所在している市区町村に提出します。

例えば、東京にある府中刑務所で受刑中なのであれば、府中市役所に提出することになります。

免除申請の時には、「所得が年間で57万円を超えないこと」の審査がありますが、服役中であって、不動産や株式などでの所得がなければ、申請はおおよそ認められることが多いでしょう。

刑務所に入ることになった場合には、ご家族や友人、知人からも、免除申請の手続きがあることを教えてあげると良いでしょう。

国民年金の場合、保険料を払っている期間(保険料払い込み期間)と保険料猶予期間の合計が25年以上であれば、一定の年齢に達してから後、老齢年金を受け取ることが出来ます。

受刑中に老齢基礎年金の受給年齢になった場合には、たとえ服役中であったとしても、年金を受け取ることができます。

受刑中はこれらのお金を自由に使うことはできませんが、出所後の生活資金となることが多いでしょう。

まず代表的なものとして、国民全員が対象となる国民年金があります。

国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金に加入している人以外全員が被保険者となる年金制度です。

そして、65歳になってからは、2か月ごとに保険料を納付した期間に応じて、老齢年金が受け取れます。

服役する前から年金を受け取っていたという方は、懲役刑が始まったとしても、老齢年金は支給されます。20歳から60歳まで満額の年金を払っていたという方は、2か月ごとに13万円が支給されます。作業報奨金と比べると雲泥の差です。

国民年金については住民票のある住所を基本として支給の手続きがなされます。

長期間の服役が見込まれているようであれば、住民票の登録住所を刑務所に変更し、年金に関する書類も刑務所で受け取れるようにしておいた方が良いでしょう。

厚生年金についても同様です。

厚生年金の場合には、支給年齢が65歳まで引き上げられているため、60歳から受給しようと思うと、受給年齢の繰り上げ(早く受け取れるように申請すること)をしなければなりません。

厚生年金について受給年齢の繰り上げをした場合には、「繰り上げた月×0.5%」分だけ支給額が引き下げられます。5年繰り下げて60歳から受け取れるようにすると、支給額の30%が引き下げられてしまうので注意が必要です。

受刑中に60歳となる方の注意

60歳になった方は、日本年金機構に宛てて、「年金請求書」を出すことで、65歳から老齢年金を受給することが出来ます。

「年金請求書」は60歳になった時に住民登録されている住所に宛てて郵送されてきます。

受刑中に60歳になる場合には、住民登録の住所を刑務所に移しておかなければ、自宅に年金請求書が届いてしまうことになります。

ご家族の方が「年金請求書」を受け取れる場合には、家族が代理人になって手続をすることが出来ますが、一人で暮らしているという方は、事前に準備をしておいた方が良いでしょう。

障害者基礎年金は受け取れない場合に注意

保険料を支払って受け取れる年金以外に、障害年金というものがあります。

これは、病気やケガなどによって障害が残り、仕事や生活に支障が残ったという方を対象として、60歳になっていなくても、生活のために年金の支給を受けることが出来ます。

障害年金には、20歳未満もしくは60歳から65歳の時の初診日、又は国民年金に加入している時が初診日の障害について支給される障害基礎年金と、厚生年金に加入している間に初診日のある障害について支給される障害厚生年金の2種類があります。

このうち、初診日が20歳未満の時にある障害基礎年金は、受刑中は受け取ることが出来ません。

一方、それ以外の障害基礎年金や障害厚生年金については引き続いて支給を受けられます。

国民健康保険と保険料支払いについて

国民健康保険も、日本に住んでいる方で会社などでの健康保険(協会けんぽや共済など)に加入していない人が対象となる健康保険制度です。

国民健康保険についても、日本に住んでいる限り、受刑者となっても被保険者の対象となり、健康保険料の支払い義務があります。

そして、健康保険料を1年以上滞納してしまうと、保険証を使って医療機関を受診することが出来なくなり、医療費については全額自己負担となってしまいます。

服役している間の医療については、国が責任を持つとされているので、受刑期間中に医療費を負担することはないのですが、健康保険料の滞納は出所後に重い負担となります。

滞納していた期間分を払い込まなければ健康保険証は使えませんし、滞納していた期間に応じて滞納金が加算されてしまいます。

そのため、健康保険料についても、ご家族や周りの方が立て替えて払ってあげるか、支払の減免を申請するのが良いでしょう。

国民健康保険については、各市区町村が条例によって減免について定めています。

総務省が平成28年に実施した調査によると、国民健康保険料については約95%の自治体では、服役中の保険料の支払いを減免していると回答しています。

実際に減免を認めているかどうか、減免するとしたらどんな基準で審査をするかが異なります。

多くの自治体では、「服役中かどうか」というよりも、「所得がなくなってしまい保険料を払えないような状態になったかどうか」が審査の基準になります。

服役中の方の多くは所得が0円ですので、所得がないことを説明できれば、健康保険料の減免が得られる可能性が高いでしょう。

住民登録のある市区町村の窓口に問い合わせることをおすすめします。

服役中の方が直接窓口に問い合わせることはできないので、ご家族や周りの方が窓口に相談に行く方が良いでしょう。

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