服役中の指導プログラム

刑務所は、単に罪を償うだけでなく、出所後、社会に戻った時に二度と罪を犯してしまうことがないよう、再教育を行うための施設でもあります。

そのため、刑務所内では、単に作業を行わせるほかにも、様々な「指導」プログラムが実施されています。

刑務所で行われる指導には、一般改善指導と呼ばれるものと、特別改善指導と呼ばれるものがあります。

一般改善指導

一般改善指導とは、「犯罪の責任を自覚させ、健康な心身を培わせ、並びに社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度を習得させるために必要な指導」とされています。

少し難しく書かれていますが、ようは、「二度と犯罪をしないために生活全般のことについて、必要な指導」ということです。

実刑判決を受けているということ自体が、実際の社会生活内では更生していくことが難しい(刑務所での指導を受ける必要がある)という判決ですから、通常、実刑判決を受けて刑務所に収容されている人は、一般改善指導の対象になります。

具体的には、次の3つの要素から成り立っています。

被害者や遺族の感情を理解して、罪障感(罪を犯してしまったのだ、と言う自覚のこと)を養わせるための指導

具体例:被害者や遺族による講話を聴く、ビデオ教材を見る、課題読書を読む

規則正しい生活習慣や健康な考え方を身に着ける、心身の健康を整える

具体例:講話、面接、内省、グループワーク、読書、ビデオ教材の視聴、体育、文化行事等

生活設計や日常の行動習慣を身に着ける

具体例:資格取得のための教育(実務経験も含む)、面接、対人コミュニケーション教育等

一般改善指導の中では、どんな罪を犯した人に対しても共通するような指導、つまり、他人と一緒に社会で生活していき、他人に迷惑をかけないで生活していくために必要な教育を行うということになります。

一般改善指導は、受刑中を通して実施されていきます。

特別改善指導

特別改善指導とは、実刑判決を受けるに至った経緯や理由に応じて、同じような犯罪を繰り返してしまわないために行われる個別のプログラムになります。

特別改善指導としては、6種類があり、それぞれ指導の対象となる人や内容が異なっています。

  指導の内容 指導の対象になる人
R1 薬物依存離脱指導 麻薬、覚醒剤などの薬物に対する依存がある人
R2 暴力団離脱指導 指定暴力団の構成員である人
R3 性犯罪再犯防止指導 性犯罪につながる認知の偏りや自己統制能力の不足がある人
R4 被害者の視点を取り入れた教育 他人の生命、身体に重大な被害をもたらす罪を犯し、被害者に対する意識が乏しい人
R5 交通安全指導 交通犯罪を犯し、順法精神や交通安全に対する意識が乏しい人
R6 就労支援指導 職場での人間関係に適応するのに必要な心構えや行動が身についておらず、仕事も長続きしない人

いずれについても、再犯をしてしまう可能性が高いことから、特別な指導を行うとされています。

各刑務所によって、実施できるプログラムにも違いがあります。

例えば、札幌刑務所ではR1、R2、R3、R4、R6を行っていますが、千葉刑務所ではR1、R3、R4、R5、R6を行っています。

栃木刑務所ではR1、R4、R5、R6だけです。これは、栃木刑務所では女子受刑者しか受け入れていないからです。

特別改善指導は、特定の犯罪や特定の傾向がある人に対して実施される指導プログラムです。

刑務所内で、実施する内容(カリキュラム)が用意されており、ある程度まとまった期間、集中して指導を受ける事になります。特別改善指導を受けている間は、刑務作業についても、他の受刑者と比べると少し短縮されます。

特別改善指導は短いものでも2か月、性犯罪再犯防止指導の場合だと1年以上をかけて行われることもあります。この特別プログラムは、希望すればだれでも受けられるというわけではありません。

刑務所での服役を始める際には、調査センターでの「調査」というものがあります。これは文字通り、それぞれの受刑者に対して、どのような改善指導が必要かを「調査」するものです。この調査を踏まえて、特別改善指導を行う必要があるかどうかの判断資料とします。

また、受刑中の生活態度、すなわち、刑務所内での成績も影響しています。受刑中の成績が不良だと、特別改善指導が実施されないということもあります。

特別改善指導は、一定の期間を決めて行われますが、「いつ」行われるかは決まっていません。ある人に対しては収容後、比較的早い時期に行われることもありますし、ある人に対しては刑期が残り少しになってから、と言うこともあります。

その他の指導

罪を犯さないための指導として、刑務所内では教科教育(いわゆる、学校での教育)が実施される場合があります。

刑務所で服役している人の中には、高校や大学で教育を受けたことがないというだけでなく、小学校や中学校のような、いわゆる義務教育で受ける内容についても身につけられていないという場合があります。

その理由も、不登校や親の虐待から学校に行けてなかったという人や、知的障害や発達の問題から学校教育が身についていないという場合まで様々です。

やや昔では、小さい頃が第二次世界大戦の戦時中だったため、学校に行けていなかった、という方もいました。

そのような受刑者に対しては、刑務所内に設置された学校(中学校)に入学させる場合や、外部から講師を呼んで授業を実施することがあります。

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