保釈について

保釈とは

保釈とは、保釈保証金の納付を条件として被告人の身体を解放する制度です。

保釈ができるのは「被告人の勾留」です。起訴される前は被告人ではないので、勾留されていても保釈されることはできません。

保釈請求

保釈されるためには、まず、裁判所に保釈を請求します。請求してから判断が出るまで、一般的には2、3日、土日を挟むと4、5日になることもあります。

保釈には以下で書くような種類があります。

必要的保釈(権利保釈)

裁判所は、保釈が請求されたとき、次の6つの事由のいずれにも当たらない場合は、保釈を許さなければなりません(刑事訴訟法89条)。

これが必要的保釈です。「許さなければならない」ので、被告人には保釈される権利があるとも言えます。なので、権利保釈とも呼ばれます。

許されない事由

  1. 死刑、無期、短期1年以上の懲役刑や禁錮刑に当たる罪を犯したとして起訴されている
  2. 以前に死刑、無期、長期10年を超える懲役刑や禁錮刑に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがある
  3. 常習として長期3年以上の懲役刑や禁錮刑に当たる罪を犯したとして起訴されている
  4. 罪証隠滅のおそれがあると疑うに足りる相当な理由がある
  5. 被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者もしくはその親族の身体・財産に害を加え、又はこれらの者を畏怖させる行為をするおそれがあると疑うに足りる相当な理由がある
  6. 被告人の氏名又は住所がわからない

職権保釈(裁量保釈)

必要的保釈が許されない事由がある場合でも、裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができます(刑事訴訟法90条)。

裁判所の裁量で保釈を認めてくれる場合なので、裁量保釈とも呼ばれます。

義務的保釈

被告人の勾留が不当に長くなった時に、裁判所が請求又は職権で保釈します(刑事訴訟法91条1項)。

実際には、あまり行われていません。

再保釈

保釈されていた人が裁判で禁錮以上の有罪判決を受けてしまった場合、保釈は効力を失います(刑事訴訟法343条)。

そうなると、再び身体が拘束されることになります(なお、このときは、保釈保証金は没取されません。保釈保証金の没取については「保釈保証金」の項目を参照してください)。

これに対して、また保釈を請求して、釈放を求めることができます。これを再保釈と言います。

再保釈の場合、既に有罪判決が出ているので逃亡のおそれがより高まっていると裁判所は考えますので、その分、既に納付した保釈保証金に更に積み増す必要があります。

再保釈は、禁錮以上の刑の宣告を受けるたびにする必要があります。たとえば、第一審で禁錮以上の刑を宣告されたら、再保釈請求をしないと身体拘束されることになります。

そこで再保釈請求が認められても、控訴審でまた禁錮以上の刑を宣告されたら、またそこで再保釈請求をしないと身体拘束されることになります。

保釈保証金

保釈されるには、保釈保証金を裁判所に納付しなければなりません(刑事訴訟法94条1項)。保釈保証金がゼロということはありません(刑事訴訟法93条1項)。

保釈保証金を裁判所がいわば担保に取ることで、被告人を釈放しても、逃げたり証拠隠滅などをしたりせずにきちんと裁判に出頭してくることが確保できるというわけです。

保釈保証金は、一般の刑事事件であれば、150万円から200万円前後となることが多い様です。事件によっては500万円を超える場合もあります。

金額によっては、経済的事情から保釈保証金を用意できない場合もあるかと思います。そのような場合、保釈保証金を立て替えてくれる団体や弁護士協同組合がありますのでこれらの制度を利用する方法もあります。

ただし、一定の手数料・負担金がかかったりしますし、弁護士協同組合を利用する場合には収入の要件等があります。

保釈保証金は、上のとおり、裁判への出頭確保のために裁判所が担保に取ったものです。

なので、裁判に出て来なかったり裁判所との約束を勝手に破ったりなどして保釈を取り消されてしまうようなことがあると没取されてしまいますが、きちんと裁判に出頭して裁判が終われば、担保に取る必要もなくなるので、返してもらえます。

住居制限などの条件

保釈は、無罪放免とは違います。

裁判中に身体拘束をしておく必要がないということで仮に釈放されているだけです。

なので、裁判所は、保釈を認めるに当たって条件を付けることができます(刑事訴訟法93条3項)。
住む場所が指定されたり、被害者の方との接触が禁止されたりします。

この条件を破ると、保釈が取り消されて拘置所に逆戻りさせられたり(刑事訴訟法96条1項5号)、
納付した保釈保証金が没取されたりすることがあります(刑事訴訟法96条2項)。

保釈の取消し

繰り返しになりますが、保釈は、裁判中に身体拘束をしておく必要がないということで仮に釈放されているだけです。

なので、次のような事由があると、保釈が取り消される可能性があります(刑事訴訟法96条1項1号から5号)。

  1. 召喚を受けたのに正当な理由なく出頭しない
  2. 逃亡し、または逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
  3. 罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由がある
  4. 被害者その他事件の審判に必要な知識を有する者もしくはその親族の身体・財産に害を加えたり、加えようとしたり、これらの者を畏怖させる行為をした
  5. 住居の制限その他裁判所の定めた条件に違反した

保釈が取り消されると、拘置所に逆戻りさせられます(刑事訴訟法96条1項5号)。
また、納付した保釈保証金が没取されたりすることがあります(刑事訴訟法96条2項)。

保釈請求が認められない場合の対応

保釈請求が認めらない場合、次のような対応方法で保釈を目指します。

準抗告・抗告

保釈請求却下決定に対して不服を申し立てる方法です。
あまり認められることはないようです。

再度の保釈請求

保釈請求は何度でもできます。

保釈が許される条件のところにもありますが、罪証隠滅や証人等威迫のおそれがあると必要的保釈(権利保釈)は認められませんし、職権保釈(裁量保釈)も認められにくくなります。

しかし、裁判が進んで証拠調べが終わり罪証隠滅する意味が最早なくなったとか、逃亡していた共犯者が逮捕されて口裏合わせをされるおそれがなくなったとか、家族の協力を得て引越しをしたりして証人等威迫のおそれがなくなったとか、事情が変化して、以前に保釈請求したときに却下の原因になったと思われる事情が今は消滅するに至ったということもあります。

そのようなときは、前よりも保釈請求が認められやすくなっているといえます。なので、保釈請求が何度でもできることを活用して、保釈請求をします。

まとめ

保釈による身体拘束からの解放を希望される方は、保釈の実績豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

保釈による身体解放の見通しや、保釈に向けた対応等をアドバイスいたします。

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