仮釈放が認められる場合

仮釈放の要件

刑務所からの仮釈放を目指す場合、「仮釈放されたい!」という気持ちだけでは仮釈放はできません。当然ながら、仮釈放が認められるためには、いくつかの要件があります。

まずは、刑法28条の条文を確認してみましょう。

刑法28条

懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

では、1つずつ要件をみていきましょう。

①有期刑についてはその刑期の3分の1、無期刑については10年の経過

これは仮釈放の形式的要件ともいいます。

有期刑の場合は刑期の3分の1が経過しなければ仮釈放の土俵には上がれません。例えば、「懲役1年」であれば4か月、「懲役6年」であれば2年、「懲役15年」であれば5年が経過しなければなりません。

しかし、こちらのページ(仮釈放)でも書きましたが、刑期の3分の1が過ぎた直後では仮釈放はほとんど認められません。刑期の70%未満で仮釈放が認められているのは1%ほどにすぎず、大半が80%から90%の経過が必要です。

10年以上の有期刑については、90%以上の刑期が経過しなければ仮釈放は認められないようです。

さらに、無期刑にいたっては35年前後の経過がなければ仮釈放が認められていません。

これらのことからすれば、あくまで統計上ですが、仮釈放が現実的になってくるのは、刑期の80%ほどが過ぎてからでしょう。

②改悛の状があること

これは仮釈放の実質的要件ともいいます。

改悛とは、悔い改めて心を入れ替えること、というような意味です。

では、いったいどのような場合に「改悛の状がある」といえるのでしょうか。

これについては、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」の28条に規定があります。では、条文を確認してみましょう。

規則28条

法(注:更生保護法)第39条第1項に規定する仮釈放を許す処分は、懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない。

これについても1つずつみてみましょう。

悔悟の情があること

犯罪による被害の実情や犯罪に至った自身の問題性を正しく認識し、悔いる気持ちが認められることのことです。

改善更生の意欲があること

被害者等にどのような償いをすべきかを正しく考え、償いをする気持ちがあることです。
また、再び犯罪をしないためにはどのような生活を送るべきかを考え、過去の生活を改めて健全な生活を送る気持ちがあることも必要でしょう。

再び犯罪をするおそれがないこと

仮釈放後のことなのか、仮釈放期間経過後のことなのかは争いがありますが、実務上は「仮釈放中に再犯をするおそれがないこと」という意味で考えられています。

保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めること

刑務所内での処遇の内容や効果、担当官との面談における受刑者本人の態度や悔悟の情の程度、矯正教育の成績、刑務所内での生活態度、仮釈放後の生活環境や生活計画なども考慮されます。

受刑者本人が矯正教育に真摯に取り組むだけではなく、いわば「外の人たち」も仮釈放後の受け入れ態勢を整えておく必要があります。

社会の感情がこれを是認すること

これはいわゆる消極要件と呼ばれたりします。

「社会の感情が仮釈放を是認すること」が必要なのではなく、「社会の感情が仮釈放を是認しない」ときは仮釈放を認めない、というものです。

被害者の感情や収容期間・仮釈放を許すかどうかに関する関係人、地域社会の住民感情、裁判官や検察官の意見などが考慮されます。

このように、「改悛の状」があるかどうかは様々な事情を考慮して判断されます。

また、刑務所長と地方更生委員会が「改悛の状」の有無を判断したうえで、仮釈放をすべきか否かを決定します。

ですので、刑務所長や地方更生委員会に対し、「改悛の状」があるということを効果的に示していくことが、仮釈放のためには重要となります。

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