刑事事件から入院する場合

罪を犯した人に精神疾患などがあった場合、単に責任を取らせるための刑罰ではなく、根本的な解決のための治療を受けさせる必要があるケースもあります。

刑事事件を犯してしまった人がその後入院する場合としては、次のような手続きがあります。

  • 措置入院
  • 医療保護入院
  • 医療観察法に基づく入院決定

それぞれ異なった手続きであり、入院の対象としている人にも違いがあります。

措置入院とは何か

措置入院とは、精神保健福祉法29条に規定がある入院のことです。

措置入院の対象となるのは、精神障害があり、その障害があるため自傷他害(自分を傷つけたり他人を傷つけたり損害を与えてしまうこと)のおそれがある人です。

精神保健指定医という精神科専門医の2名が「入院させる必要がある」と判断した場合に、都道府県知事が本人や家族の同意なしで入院をさせるというものです。

刑事事件から措置入院となる場合としては、事件を起こしてしまい捜査機関(警察、検察)から捜査を受けた結果、心神喪失や心神耗弱までは至らなくても、精神障害が事件のきっかけとなってしまっているような事案です。

捜査を行った警察官や検察官が、都道府県知事に対して通報を行い、措置入院の手続きが始められます。実刑判決を受けて刑務所に収容されるような場合には、措置入院のための通報は行われません。

この手続の特徴としては、本人や家族の同意なく行われるということ、精神障害が事件の要因となっている場合に取られる手続であることです。

医療保護入院とは何か

医療保護入院とは、精神保健福祉法33条に規定のある入院です。

医療保護入院の対象となるのは、精神障害があり、自傷他害のおそれはないものの、本人の同意による入院ができない人です。医療保護入院は、本人は同意していないものの家族は入院に同意しているという場合に取られる手段です。

精神障害がある方の中には、自分自身の疾患や病状を把握していないという人がいたり、本来であれば入院する必要があるのに「入院したくない」と同意をしない人もいたりします。

そういった場合には任意での入院をすることができませんし、治療の途中で「やっぱり退院したいです」と言って帰ってしまうことがあります。

任意入院の場合、全て患者本人の意思が優先されますから、本人が「退院したい」と言えば病院もそれを断ることができません。

そのため、本人の同意がなくても入院を継続して治療を続けられるような手段として、医療保護入院があります。この手続では、警察官や検察官は関与してきません。

なぜなら、家族の同意があって初めて手続きが進むからです。

医療保護入院については、むしろ、弁護人として手段として考えるものにもなります。

罪を犯してしまった精神障害がある方について、検察や警察が措置入院の通報をしない場合に、「早期釈放の上で医療保護入院などの手続きを取るべき事案である」として早期の釈放の材料とすることがあるでしょう。

この手続の特徴としては、本人の同意はないが家族の同意がある場合に行われるということと、裁判所や検察官、警察官があまり関わらない手続きということです。

医療観察法に基づく入院決定とは何か

医療観察法に基づく入院とは、一定の重大な犯罪をしてしまった精神障害のある人に対して、裁判所が強制的に入院を命じるものです。

措置入院や医療保護入院と比べて最も大きな違いは、裁判所が入院を命じるという点です。

そのため、鑑定という調査や審判期日のように、厳格な手続きが取られるものになります。また、医療観察法の対象となる人は、精神障害などの影響で、心神耗弱又は心神喪失の状態であることも大きな違いです。

心神耗弱、心神喪失とは、つまり、自分自身の行動を制御することや、適切な善悪の判断がつかない状態であるということですから、そもそも刑事責任を問うことができない状態であるのです。

措置入院や医療保護入院の場合には、心神耗弱、心神喪失の状態とは関係なく行われることがありますが、医療観察法の場合、そのいずれかでなければ裁判所は入院を命じることはできません。

どの手続きが最も適切なのか

措置入院、医療保護入院、医療観察法による入院の3種類の手続きについて概説しました。

精神疾患がある方の入院については、その他にも任意入院(自分の意思で入院すること)もありますが、刑事事件を起こしてしまった方が入院する時の手続きとしては、この3種類が挙げられます。

ほとんどん事案では、刑罰としての責任を科されるよりも、症状寛解のための治療につなげた方が、本人にとっても利益が大きくなります。

不用意に拘束されたり、刑事裁判で罰金や懲役刑を科されたりするのではなく、病院での適切な治療をうけることで、根本的な解決になるからです。

具体的な事件において、どのような手続きを取るべきかについては、ご本人の状態や事件に対する見通しによっても異なります。

障害がある方の刑事事件でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所(0120-631-881)までご相談ください。

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら