Archive for the ‘財産事件’ Category

20年前の前科が理由で懲戒処分? 前科の秘匿と会社での懲戒処分について

2024-07-25

【事例】
Aさんは、強盗の罪で服役したことがありますが、出所後20年間、犯罪とは無縁の生活をまじめに送ってきました。
Aさんは、B会社に転職するにあたり履歴書を作成していましたが、履歴書に賞罰欄が設けられているのに、服役していたことを記載せず、また面接でも前科があることを言いませんでした。
Aさんが入社して1年後、実は服役前科があることがB会社に発覚しました。
B会社の担当者は、Aさんを懲戒すると言っています。Aさんは、何かしらの処分を受けてしまうのでしょうか。
(事例はフィクションです)

弊所は、刑事事件を多数扱っているため、相談者から「再就職をする際に警察のお世話になったことを言わないといけませんか?」という相談を受けることが少なくないです。
さて、従業員に前科があることを知った経営者は、その従業員に処分を下すことができるのでしょうか。経営者の方にとっても、今まさに就職活動をしている人にとっても大きな関心ごとではないでしょうか。
前科を秘匿したことと懲戒処分の関係について上記の事例を用いて、解説します。

1 前科の有無を偽って入社する行為について

まず前科があるのに前科を隠して入社する行為は、「経歴詐称」、つまり自分の経歴を偽ることになります。
前科があるのに前科を隠す場合だけでなく、本当はA大学の出身者なのにB大学出身だと偽るような場合も経歴詐称にあたります。
前科の内容や種類についてはこちらのページも参考にしてください。

2 経歴詐称と懲戒処分について

そして従業員を懲戒するにはあらかじめ就業規則で懲戒処分の種別及び事由を定めておく必要があり、その拘束力を生じさせるには、その内容を労働者に周知させる手続がとられていなければなりません(最高裁平成13年(受)1709号平成15年10月10日判決)。
そして、懲戒処分の内容と懲戒事由のバランスが取れているものであることと適切な手続で行われたことが必要になります。
懲戒処分のバランスが取れているとはどういうことでしょうか。
簡単にいうと、「いや確かに経歴詐称があるけど、大したことがない詐称なのだから、減給になるのは仕方ないけど、解雇するほどのことではないですよね。」と言われるような懲戒処分は許されないということです。
適切な手続は、その文字通りです。
例えば、従業員から言い分を聞かずにいきなり減給や解雇をすると、違法になってしまいます。

このような具合ですので、前科があることを知られ、懲戒処分にすると言われた場合には、まず就業規則の内容や周知のための手続、懲戒処分のバランス、然るべき手続といった要件が満たされているか考える必要があります。
特に懲戒処分のバランスは、様々な事情を総合的に考慮して判断されるものであり、難しい判断を伴いますので、弁護士など専門家に相談することをお勧めします。

3 事例の検討

あくまで一般論ですが、今回のAさんの場合、懲戒処分の内容として懲戒解雇まではさすがに重すぎる気がします。というのも、20年以上も前の前科は、あまりに古すぎるからです。
有罪判決を受けて服役したとしても刑の執行を終えてから罰金以上の刑に処せられずに10年以上経過していたのであれば,刑法上は刑が消滅していることになります(刑法34条の2第1項)。
したがって、そもそも重大な経歴詐称とまではいえないように考えられるからです。
また前科が強盗のようなものでなく、交通事故のようなものであった場合、最近の前科だとしても懲戒解雇まではやりすぎと認定される可能性があります。
しかし判断は会社の業務内容や、個別事案での隠匿の態様にも関わりますから懲戒処分の見通しについては一概に判断することはできません。
 
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件の豊富な実績を踏まえて、刑事事件と関連する労働問題もサポートできます。
もし懲戒処分などの労働紛争に巻き込まれている方、企業側の担当者で懲戒処分について判断が難しいと考えている方はぜひご連絡ください。

東京都八王子市の窃盗事件 窃盗罪で監督環境を整えたことを強調した情状弁護活動について

2024-07-11

罪を犯してしまうまでには,様々なステップ・段階があり得ます。
今回は財産犯と呼ばれる窃盗の事案を例に,罪を犯してしまうに至った過程が刑の重さを決める上で重要となりうることを解説します。

【事例】
東京都八王子市に住むAさんは専門学校を卒業後,派遣や単発のバイトを繰り返して何とか毎月の生計を立てていました。
ある日,短期のバイト先で事業所の金庫の鍵が刺さりっぱなしなのを見つけ,金庫内から現金を盗んでしまいました。
当時のAさんとしては,精いっぱい働いているつもりだけれども生活が安定せず「仕方ない」という気持ちもあって事件を起こしてしまいます。
職場に事件のことが発覚し,Aさんは警察から窃盗罪の容疑で事情聴取を受けましたが,検察官に起訴されてしまいました。
AさんやAさんの家族としては,裁判での対応が不安になりあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談することにしました。

窃盗罪での情状弁護

窃盗罪や詐欺罪のような財産犯の場合,特に示談交渉を行うことや,精神疾患が疑われる場合にはその治療に専念することが重要です。
そこからさらに進んで言うと,個別の事案について「なぜそのような事件を起こしてしまったのか/今後事件を起こさないためにはどうしたらよいのか」という課題を解消しなければなりません。
Aさんのように「生活が苦しくて物を盗んでしまった」という動機は,ある意味アタリマエのことです。
なぜなら,人はお金がない/もっと欲しい,と思うからこそ他人の物を盗んだり奪ったりしてしまうからです。

ここでいう「なぜそのような事件を起こしたのか」というのは,「なぜ事件を起こさないといけないような状況に陥ったのか/事件を起こしたいと思うような状況になったのか」ということです。
Aさんの事例で言えば,「なぜ働いているのに生活が安定しないのか」,「なぜお金が足りなくなった時に『犯罪』という手段をとってしまったのか」という根本的な原因を考える必要があります。
刑事裁判における裁判官も同様の視点を持っており,「この人は再犯しない」と思ってもらうためには,このような根本的な問題をきちんと抽出することが必要になります。
罪を認めて争わない事件だと,あまり気のない弁護士の一部は,法廷の中で反省した態度を示すことに注力する場合もありますが,再犯のおそれが拭えないとなると,思わぬところで足をすくわれたり相場よりも重い量刑を受けてしまいかねないものです。

実際の事例における情状弁護活動の紹介

Aさんと同じような事例において,弊所の弁護士が本人や家族からよく話を聞いたところ,
・実際のところ本人の給料は一人で生活していくだけの十分な額だった
・特にギャンブルや浪費をしているわけではないが,日常の買い物での金銭管理がきちんとできていなかった
・本人は家族に対しても相談していたつもりだったが,援助してくれなかった。
・一方,家族から見ると,本人の生活がだらしなくてよく分からないところ(ギャンブルや風俗店など)で浪費しているように感じられた,だから支援するのに及び腰だった
というような状況が浮かび上がりました。
つまり,被告人本人の捉え方と周りの家族との捉え方に大きな差があったのです。このようなコミュニケーションのすれ違いを放置していても,何も問題は解決しません。
事件がきっかけになりますが,家族内でもよく話し合いを行い,裁判でも「なぜ事件を起こすに至ったか/今後起こさないためにはどうしたらよいか」を説得的に主張しました。
その結果,執行猶予判決を出され,裁判官からも「法廷で話したことの通り,今後は家族のいうことを聞いてきちんと生活してください」という温かい言葉をもらいました。

まとめ

単純な窃盗の事案であっても,事件の背景を深堀していくことで再犯の芽を摘み,裁判での情状弁護に生かすことができる場合があります。
事件の背景を理解して再犯防止活動に取り組むことで、その後の再犯の恐れも低くすることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,刑事事件に精通した弁護士が,1つ1つの事件に対して、その方のその後の人生まで見据えて熱意をもって取り組んでいます。
「今後同じことをしてしまわないか心配だ」というご本人・家族の方も,まずは一度ご相談ください。

推しへの投げ銭がきっかけとなった特殊詐欺の事例における弁護士の更生支援について

2024-06-13

1 投げ銭について

皆様は、「投げ銭」というものをご存知でしょうか。
元々の発祥は、大道芸人などに観客がお金を払う行為が元となっているようですが、最近は、インターネット上で、いわゆる「推し」に電子マネーやポイントをプレゼントするような活動としての使い方の方が多いように思われます。
このブログを作成している現時点では、特に若い方の間で行われる行為なので、そういった人たちの親世代には、何がしたくてそんなことをしているのか解らないかもしれません。
しかし、好きなアイドルを応援するために、ライブへ足繁く通い、グッズもたくさん買って、そのアイドルのためにお金を使うという行為は、親世代にもよくみられたことと思います。そうした活動がインターネットで簡単にできるようになったバージョンとでも考えると、多少は解りやすくなるかもしれません。

さて、このインターネットの投げ銭は、アイドルを応援しているものくらいの感覚で放っておいて良いのでしょうか。
もちろん穏便な趣味として行なっている分には誰も口を挟むべきではないのでしょうが、度が過ぎてしまった場合にはこの投げ銭がきっかけで犯罪行為に至ってしまう例もあります。
なお消費者庁のHPでも近年のいわゆる「推し活」や「投げ銭」に関する注意喚起がありますのでこの記事をきっかけに心配になった方や興味を持たれた方は、こちらの消費者庁のHPもご覧ください。

2 投げ銭がきっかけとなって起こしてしまった特殊詐欺事件

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の扱った事件として、次のようなものがあります。
なお、個人情報保護の観点から事例の内容などについて一部改編を加えています。

事件を起こすことになる少年Aさんはかねてからいわゆる「推し」、応援している人に投げ銭をしているうちに親のクレジットカードを使って合計で給料数ヶ月分の投げ銭をしてしまいました。
そのことが親に発覚し、怒られてクレジットカードの使用を禁止されてしまいました。
Aさんはそれでも推しを応援するための金銭を得るためにいわゆる「闇バイト」、特殊詐欺に関与してしまったという事例です。
特殊詐欺については、こちらの記事でも解説していますが、少年院に送致されるリスクが非常に高い事案になります。

弊所では、このような事案においても実刑回避・少年院回避といった結果を実現してしました。
弁護士は、事件を起こしてしまった方としっかり会話をして、更生のためには何が必要か、一緒に考えるようにしています。
今回のような浪費から事件を起こしてしまった方には、浪費を始めてしまったきっかけは何か、浪費を防ぐにはどうすればよいかなどについてとことん話をするようにします。
更生に向けた対話をを進めていく上では、少年の話にもしっかりと耳を傾けて浪費や事件の関与に至ってしまった背景についてしっかりと聴き取りを行います。
このように投げ銭などの浪費がきっかけとなった事件においては、例えばお金の出入りをまとめてみることです。まずは簡単な「お小遣い帳」から始めてみるので構いません。お小遣いが月3万円だとして、食費、友達と遊ぶお金、推しを応援するためのお金、どれだけの出費が必要か考える、これだけでもこれまでのお金の使い方について反省する大きな第一歩になります。
このような考え方は、犯罪を起こすきっかけにギャンブルでの浪費や買い物での浪費がある方にも必要な考え方かと思います。

3 事件後の更生支援について

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、近年の若い人が投げ銭の末に起こしてしまう刑事事件も豊富に扱っております。
「子供が特殊詐欺をしてしまった、なぜそこまでしてお金が欲しいのか解らない」「子供が万引きをした、節約したかったというけど他に削れる出費があるはずなのに、どうして」とお悩みの方は、ぜひ弊所までご連絡ください。
特殊詐欺であっても、万引きであっても、他の犯罪であっても、充実した刑事弁護を行うとともに、一緒に更生のために必要なことを考えていくことができます。

兵庫県豊岡市の特殊詐欺事件で少年院に送致されることになった事例 少年院での処遇について②

2024-06-06

【事例】
Aさんは、兵庫県豊岡市に住む17歳の男子高校生です。
ある日、AさんはSNS上である投稿を見つけました。
それは、ある物を受け取って運ぶだけで何万円もの報酬を支払うといういわゆる闇バイトを募集する投稿でした。
犯罪かもしれないと思いながらその募集に応募したAさんは、兵庫県内や鳥取県内でいわゆる特殊詐欺に何件も加担してしまいました。
高齢の方が住む自宅に赴いてキャッシュカードをすり替えて盗んだり、そのキャッシュカードを使って何百万円ものお金を引き出して盗んだりしたのです。
その後、鳥取県内の警察署に逮捕、勾留され、再逮捕もされました。
捜査を受けた後、最終的に神戸家庭裁判所豊岡支部に事件が係属し、神戸少年鑑別所に収容するという観護措置が取られました。
そして、神戸家庭裁判所豊岡支部は、Aさんの少年審判を行い、少年院に送致するという処分を決めました。

AさんやAさんの家族は、少年院に送致するという処分自体には納得していましたが、少年院ではどのようなことをするのか、どこの少年院に行くことになるのか、どのくらいの期間行くことになるのかなどが知りたいと思い、それまでもAさんの弁護人、付添人であった弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、少年院の種類についてみてきました。
今回の記事では、収容される少年院が決まる過程などについて解説していきます。

2 関係する機関

まずは、関係する機関である①家庭裁判所、②少年院、③少年鑑別所の違いが分かると理解しやすいでしょう。
特にイメージの湧きにくい②少年院と③少年鑑別所の違いが重要です。

法務省のホームページでは、②少年院は、「家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し、その健全な育成を図ることを目的として、矯正教育や社会復帰支援等を行う法務省所管の施設」とされています(https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse04.html)。

その一方で、③少年鑑別所は、「(1)家庭裁判所の求めに応じ、鑑別対象者の鑑別を行うこと、(2)観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者等に対し、健全な育成のための支援を含む観護処遇を行うこと、(3)地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行うことを業務とする法務省所管の施設」とされています(https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei_kyouse06.html)。
少年事件との関係でいえば、このうち(1)と(2)が重要です。

そして、①家庭裁判所は、離婚や相続などに関する家庭内の紛争及び非行を犯した少年の事件を専門的に取り扱う裁判所とされています(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/20130128-1katei01.pdf)。

以上の違いを、Aさんのように観護措置が取られたうえで、少年審判が開かれ、少年院に送致された場合に即して説明していきます。
①家庭裁判所が非行を犯した少年の事件を取り扱いますので、少年審判を開き、処分(Aさんの場合は少年院送致という処分です。)をどうするのかを決めます。
このように①家庭裁判所が審判を開くのに先立ち、Aさんの鑑別をしたり、観護処遇をしたりするのが③少年鑑別所の役割です。
そして、少年審判で①家庭裁判所が少年院送致という処分を決定したのを受けて、その処分を実際に実行して、Aさんの矯正教育や社会復帰支援などをするのが②少年院ということになります。
大まかにいえば、③少年鑑別所は審判を行う前から少年院に行くまでに役割があり、②少年院は少年院に来てから役割があるということになります。
少年鑑別所における付添人活動についてはこちらも参考にしてください。

次回の記事でも、収容される少年院が決まる過程についてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

三重県名取市の強盗傷人事件 少年院による社会復帰支援を協力してくれる協力者について

2024-03-21

【事例】
Aさんは、三重県名張市に住む17歳の高校生でしたが、友人らと一緒になって、老夫婦が住む三重県桑名市の一軒家に押し入り、老夫婦を殴ったり、蹴ったりといった暴行を加えて、現金100万円を奪い去りました。
このAさんたちの暴行により、老夫婦は骨を折るなどの怪我を負ってしまいました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こしたことで警察に逮捕されて捜査を受けました。
その後、津家庭裁判所に送致され、Aさんはこの強盗傷人事件で審判を受けることになりました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こす以前にも傷害事件を起こして保護観察処分を受けていたこともあって、少年院に送致されることになりました。

ところで、Aさんの両親は既に交通事故で他界しており、身寄りは高齢の祖母だけです。
Aさんの祖母は、何とかAさんの力になりたいと思っていますが、年齢や体調のこともあり、少年院から出てきた後のAさんの監督を十分にできるのか不安に思っていました。
場合によっては、交通の便が悪く、周囲に就業先も見当たらない自分の家に住まわせるよりも、別のところに住んでもらうのがいいのではないかということも考えています。
そこで、Aさんの祖母は、少年院から出てきたとき、Aさんにどのように生活してもらうのがいいのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

以前の記事で、少年院による社会復帰支援の支援の内容について解説してきました。
前回の記事についてはこちらからご覧ください。
今回は、少年院による社会復帰支援協力者について解説していきます。

2 少年院による社会復帰支援の協力者

以前の記事で、少年院社会復帰支援としては、引受人の確保や就職・進学先の確保、医療機関に繋げること、障害者手帳等の取得の補助などといったことがあると解説してきました(少年院法44条1項)。
それでは、このような支援は少年院の長だけが行うのでしょうか。

まず、少年院の長は、以前解説したような少年院法44条1項の支援を行う際、「保護観察所の長と連携を図るように努めなければならない」とされています(少年院法44条4項)。
少年院から出院する場合、ほとんどが仮退院(少年院法135条)として出院します。
出院者のうち仮退院の者の割合を示したデータがこちらです。
少年院から仮退院した場合、法律上、保護観察が付されることになります(更生保護法42条、40条)。
この保護観察を担当するのは、出院者の住居地を管轄する保護観察所で(更生保護法60条)、実際に保護観察を実施するのは、保護観察所の保護観察官や保護司と呼ばれる方です(更生保護法61条1項)
つまり、仮退院として出院となれば、必然的に保護観察所が関与することになりますから、「保護観察所の長」とも連携を図る必要があるのです。

そして、このような少年院の社会復帰支援については、弁護士が関わることも考えられます。
最も典型的なのは、少年審判までの間に少年の弁護士(付添人といいます。)であった弁護士が、新たに少年の代理人となって活動をするという方法です。
このような弁護士であれば、警察などが捜査をしていたり、少年審判の前段階として家庭裁判所が調査をしていたりする段階から関わっていますから、少年の周りの環境をよく知っている場合もあるでしょう。
また少年院や保護観察所はあくまで公的機関ですから、そうではない弁護士がより柔軟な方法で活動することで、少年の社会復帰支援に有益な場合もあるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
例えば保護司の方との相性が合わなくて不安だ、課題についてももっと取り組んでいきたいなどの要望がある場合には、保護観察中であっても弁護士が、保護観察中に面談を行う、課題を実施するなどの活動をさせていただきます。
少年院の出院後の社会復帰についてご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

三重県名張市の強盗傷人事件 少年院による社会復帰支援について深堀りして解説します

2024-03-07

【事例】
Aさんは、三重県名張市に住む17歳の高校生でしたが、友人らと一緒になって、老夫婦が住む三重県桑名市の一軒家に押し入り、老夫婦を殴ったり、蹴ったりといった暴行を加えて、現金100万円を奪い去りました。
このAさんたちの暴行により、老夫婦は骨を折るなどの怪我を負ってしまいました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こしたことで警察に逮捕されて捜査を受けました。
その後、津家庭裁判所に送致され、Aさんはこの強盗傷人事件で審判を受けることになりました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こす以前にも傷害事件を起こして保護観察処分を受けていたこともあって、少年院に送致されることになりました。

ところで、Aさんの両親は既に交通事故で他界しており、身寄りは高齢の祖母だけです。
Aさんの祖母は、何とかAさんの力になりたいと思っていますが、年齢や体調のこともあり、少年院から出てきた後のAさんの監督を十分にできるのか不安に思っていました。
場合によっては、交通の便が悪く、周囲に就業先も見当たらない自分の家に住まわせるよりも、別のところに住んでもらうのがいいのではないかということも考えています。
そこで、Aさんの祖母は、少年院から出てきたとき、Aさんにどのように生活してもらうのがいいのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに
以前の記事で、少年院による社会復帰支援の対象者や支援の内容について解説してきました。
今回は、少年院による社会復帰支援の内容をさらに深掘りしていきます。

2 少年院による社会復帰支援
以前の記事で、少年院の長は、出院(法律的な意味で少年院での拘束状態が解かれることをいいます。)する場合の引受人の確保・調整(帰住先調整ともいいます。)や就職先や就学先の確保・調整といったことができると解説してきました(少年院法44条1項)。
以前の記事について確認されたい方はこちらからどうぞ。

まず、この社会復帰支援は、「効果的な実施を図るため必要な限度において」、少年院以外の適当な場所で行うこともできます(少年院法44条2項)。
例えば、就職をしようとしている場合に、就職予定の場所に実際に訪れることが必要な場合もあるでしょう。
また、進学を希望する場合に、進学先の学校を見学したり、その学校で入学試験を受けたりすることが必要な場合もありえます。
さらには、出院後に入院や通院をする病院を見学する必要がある場合もあるでしょう。
こういった少年院の外での社会復帰支援は、少年院の職員が同行して行われることになります。

また、少年院の職員の同行なしに外出や外泊が認められる場合もあります。
少年院法45条では、「少年院の長は、在院者」「の円滑な社会復帰を図るため、少年院の外において、その者が、出院後の住居又は就業先の確保その他の一身上の重要な用務を行い、更生保護に関係のある者を訪問し、その他その出院後の社会生活に有用な体験をする必要があると認める場合であって、その者の改善更生の状況その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、少年院の職員の同行なしに、外出し、又は七日以内の期間を定めて外泊することを許すことができる」と定めています。
具体的には、就職予定の場所に実際に通うことが有用であったり、住み込みで働く予定の場合に実際に住み込みで働いてみることが有用であったりということが考えられます。

このように少年院社会復帰支援としては、様々なバリエーションが考えられます。
少年院における社会復帰支援の取組みについてはこちらの法務省のホームページも参考にしてください。具体的な取り組みについて紹介されています。
今後の記事では、少年院社会復帰支援を誰と行うのかについても解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に多数関わってきた経験を活かし、再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
具体的には顧問契約という形で、処分を受けた少年の方にたいし課題の実施や定期的な面談、交友関係の清算に向けた見守りなどによって真の意味での更生を目指していきます。
少年院の出院後の社会復帰支援についてご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

特殊詐欺に加担してしまった少年事件における少年院送致回避に向けた弁護活動・付添人活動 

2024-02-29

【事例】
未成年者のAさんは、先輩から特殊詐欺の仕事を紹介されて、これを行ってしまいました。
具体的な内容は、指示役からの電話に従って、高齢者の家に行き、段ボール箱1箱を受け取るという仕事です。
Aさんとしては、そのようなことをしたくなかったのですが、先輩から「俺の代わりにこの仕事をしてくれる人を探している。今までよくしてやったのだから、お前がやるよな。」と強く言われて断れなかったからです。
結局、Aさんは、詐欺罪で逮捕されてしまいました。
Aさんや家族は、少年院に行くことだけは避けたいと思っています。
どうすれば良いでしょうか。
(事例はフィクションです)

この事例をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所であれば、Aさんの審判の対応について、今後の更生について交えながら解説します。
少年事件に関する詳しい弁護活動についてはこちらのページも参考にしてください。

特殊詐欺事件では少年事件であっても厳しい処分が下される可能性が高いです

まず20歳未満の人が犯罪をした場合、少年法が適用され、少年事件として扱われます。
大人では刑務所に入ってしまうのと同じように、少年は、少年院というところに入れられてしまうかもしれません。
そして、Aさんのように特殊詐欺をしてしまった少年は、少年院に入ることになる可能性が十分あります。
これは特殊詐欺が社会問題化して厳罰化の流れがあること、特殊詐欺に加担するケースでは交友関係や本人の規範意識にに問題があると判断されるケースが多い傾向にあることなどが理由になっているようです。
ですから、本当にしっかりとした対応をしないと、少年院送致を回避すること回避はできませんし、一生懸命頑張っても少年院に送致されてしまうことも珍しくないです。
もし特殊詐欺事件に加担したとして逮捕された場合には、早いうちから少年院に行かなくて済むようやれることをしっかりしていく必要があります。

特殊詐欺事件で弁護士はどのような事情を家庭裁判所に主張するか

Aさんの場合、弁護士から色々と主張することになります。
特殊詐欺事件で責任の重さを図る事情として主なものとしては以下のような事情があります。
特殊詐欺に成功したのか
・成功したとして被害額はどれくらいなのか
・被害者に対しいくら賠償できているのか
・逮捕されるまでに何回くらい特殊詐欺をしているのか
・そもそも段ボールの中身を何と認識していたのか
早期に弁護士がつくことで上記の点について不利な調書が作成されることを回避する、被害者に対し賠償や示談を行っていくなどの弁護活動を受けることができます。

このように既にしてしまったことの分析も大切ですが、少年事件では今後どうするかということも大切です。少年事件において、家庭裁判所が処分を決める際に関心を持つ事項としては次のような事情があります。
・なぜ事件を起こしてしまったのか家族と話し合えているか
・今後犯罪をしないために家族はどうサポートするつもりか?
・今回特殊詐欺をしてしまった原因をどうやってなくすことができるか?
以上のような事情について、今後再犯をしないためにどのように改善していけるかが少年事件において処分を決める上で重要になります。

事例のケースにおける弁護活動

事例のAさんの場合、なかなか強く意見することができない先輩からの依頼を断れずに特殊詐欺に関与してしまっています。
Aさんを少年院に入れるかどうか判断する裁判官としては、この先輩との関係をどうやって断ち切るか、またその先輩以外にも不良交友がないか気にしてきます。
ですので、Aさんの弁護士としては、その先輩との関係はもちろん不良交友をなくすためにはどうすれば良いか、一緒に考えることになります。
しかしAさんの場合、今後も先輩から色々と接触される可能性が十分あります。大人であれば、誰かと縁を切ることも可能かもしれませんが、未成年者同士だといったんは会わなくなったけどSNSでまた接触してしまうということもあり得ます。
一方で、常に家族だけで子供の様子を見張るのも限界があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、Aさんのような方の審判対応や今後の更生を見据えて、身元引受業務を内容とする顧問契約のサービスを提供しています。
この顧問契約は、一定の期間(半年にするか、1年にするか、もっと長くするかは話合いで決めます。)、Aさんと弁護士が密に連携して、先輩から接触を受けていないかという確認をすること、先輩から接触があった場合には相談を受けて防衛のための協議をすることを行います。
もちろんそれ以外にも、最近の生活状況について丁寧に確認し、再犯防止のためのアドバイスをしていくことになります。
「このような身元引受業務を裁判が終わった後もしっかり続けますよ」ということを少年事件の裁判官にしっかりと伝えると、裁判官に対してもある程度の安心材料になるため有利な事情となってきます。
少年院送致も考えられた事例で、弁護士による継続的なサポートと監督を主張したことが考慮されて、試験観察処分を獲得し少年院送致を回避した事例もあります。

もちろんこういった業務をするからといって確実に少年院を避けられるわけではありません。それくらい特殊詐欺で少年院回避は大変です。
少しでも少年院回避の可能性を高めるためにも、また今後の更生のためにも弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、全力でサポートをさせていただきます。
ご関心があれば、いつでもお問い合わせください。

三重県名張市の強盗傷人事件 少年院で行われる社会復帰支援の内容について紹介します

2024-02-22

【事例】
Aさんは、三重県名張市に住む17歳の高校生でしたが、友人らと一緒になって、老夫婦が住む三重県桑名市の一軒家に押し入り、老夫婦を殴ったり、蹴ったりといった暴行を加えて、現金100万円を奪い去りました。
このAさんたちの暴行により、老夫婦は骨を折るなどの怪我を負ってしまいました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こしたことで警察に逮捕されて捜査を受けました。
その後、津家庭裁判所に送致され、Aさんはこの強盗傷人事件で審判を受けることになりました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こす以前にも傷害事件を起こして保護観察処分を受けていたこともあって、少年院に送致されることになりました。

ところで、Aさんの両親は既に交通事故で他界しており、身寄りは高齢の祖母だけです。
Aさんの祖母は、何とかAさんの力になりたいと思っていますが、年齢や体調のこともあり、少年院から出てきた後のAさんの監督を十分にできるのか不安に思っていました。
場合によっては、交通の便が悪く、周囲に就業先も見当たらない自分の家に住まわせるよりも、別のところに住んでもらうのがいいのではないかということも考えています。
そこで、Aさんの祖母は、少年院から出てきたとき、Aさんにどのように生活してもらうのがいいのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです)

今回の事例は17歳の少年を対象にしましたが、仮に少年が18歳または19歳であった場合には現行の改正少年法においては特定少年という扱いになり、今回の事例のように強盗傷人罪を犯した場合には成人と同じ手続きにより審理される場合もあります。特定少年事件に関する詳しい説明につきましてはこちらのページも参考にしてください。

1 はじめに

前の記事で、出院(法律的な意味で少年院での拘束状態が解かれることをいいます。)の種類や、少年院による社会復帰支援が求められている理由や実情について解説してきました。
前回の記事についても興味がある方はこちらからお読みください。
今回は、少年院による社会復帰支援の内容について解説していきます。

2 少年院による社会復帰支援

⑴ 少年院が社会復帰支援をする根拠と対象者
以前の記事で、少年院から出院した場合の暮らす場所(住居など)や社会の中での居場所(就職先や学校など)が、その後の更生のためにも重要であることは解説してきました。

そして、少年院法44条1項柱書では、「少年院の長は、在院者の円滑な社会復帰を図るため、出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者に対しては、その意向を尊重しつつ、」支援を行うとされています。
そのため、「出院後に自立した生活を営む上での困難を有する在院者」を対象に、少年院も出院後の社会復帰支援を行うことになります。

⑵ 社会復帰支援の内容
少年院法44条1項では、少年院の長が行う社会復帰支援の内容として、次のものを定めています。
①「適切な住居その他の宿泊場所を得ること及び当該宿泊場所に帰住することを助けること」(1号)
②「医療及び療養を受けることを助けること」(2号)
③「修学又は就業を助けること」(3号)
④以上の①から③のほか、「在院者が健全な社会生活を営むために必要な援助を行うこと」(4号)

①の具体的な例としては、親族の誰に引受人となってもらうのがいいのか、それとも親族ではなく、雇用主や更生保護施設、福祉施設に引受人となってもらうのがいいのかなどといったことを考え、引受人を確保すること(帰住先調整ということがあります。)などが挙げられます。

②の具体的な例としては、継続的な医療を受ける必要がある者に対して通院や入院が可能な病院を確保することや、障害者手帳等の取得が必要な者に対して取得手続きを補助することなどが挙げられます。

③の具体的な例としては、進学や復学を望むのであれば学校と調整を図ったり、就職を望むのであればハローワークや受入れ可能な雇主と調整を図ることなどが挙げられます。

少年院社会復帰支援については、今後の記事でも解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
具体的には少年事件に対する審判が終わった後についても、課題を出して取り組んでもらう、不良交友が再開しないように定期的に面談を行い確認するなどの更生支援活動を顧問として行っていきます。
少年院の出院後の社会復帰についてご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

三重県名張市の強盗傷人事件 少年院で行われる社会復帰支援の必要性について解説します

2024-02-16

【事例】
Aさんは、三重県名張市に住む17歳の高校生でしたが、友人らと一緒になって、老夫婦が住む三重県桑名市の一軒家に押し入り、老夫婦を殴ったり、蹴ったりといった暴行を加えて、現金100万円を奪い去りました。
このAさんたちの暴行により、老夫婦は骨を折るなどの怪我を負ってしまいました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こしたことで警察に逮捕されて捜査を受けました。
その後、津家庭裁判所に送致され、Aさんはこの強盗傷人事件で審判を受けることになりました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こす以前にも傷害事件を起こして保護観察処分を受けていたこともあって、少年院に送致されることになりました。

ところで、Aさんの両親は既に交通事故で他界しており、身寄りは高齢の祖母だけです。
Aさんの祖母は、何とかAさんの力になりたいと思っていますが、年齢や体調のこともあり、少年院から出てきた後のAさんの監督を十分にできるのか不安に思っていました。
場合によっては、交通の便が悪く、周囲に就業先も見当たらない自分の家に住まわせるよりも、別のところに住んでもらうのがいいのではないかということも考えています。
そこで、Aさんの祖母は、少年院から出てきたとき、Aさんにどのように生活してもらうのがいいのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 少年院から出ること

少年院に送致された少年が、(物理的に少年院から外に出るという意味ではなく、)法律的な意味で少年院での拘束状態が解かれることを「出院」と表現しています。
出院のバリエーションとしては、①仮退院(少年院法135条)、②退院(少年院法136条、136条の2)、③収容継続(少年院法137条、138条、139条)などがあります。
このうち、最も多いのは①仮退院で、少年院在院者のほとんどが仮退院で出院します。
仮退院の手続きの流れについて詳しく知りたい方はこちらのページも参考にしてください。

なお、「収容継続」というのは、法律で定められた少年院での収容期間(原則として少年が20歳になるまでです。)では、矯正教育の目的が達成できず、少年保護の観点からはその期間を延長し、矯正教育の目的が達成できるようにするためなど、特別な場合として収容期間を継続することです。

2 少年院による社会復帰支援

⑴ なぜ社会復帰支援が求められているか
少年院送致という処分は、懲役刑や罰金刑といった成人事件の刑罰とは性質が異なります。
少年院での矯正教育は、「在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的」として行われます(少年院法1条)。
そのため、罰を与えることだけを目的としているのではありません。

それでは、社会復帰のためにはどのようなことが必要でしょうか。

まずは暮らす場所が必要です。
人が社会の健全な一員として社会生活を送るためには、住居等の宿泊場所の存在は欠かせません。

また、社会内の居場所も必要です。
具体的には、少年のことを助けてくれる人物や、学校や勤務先といった居場所も重要です。

このような場所がないと、少年院を出てからも社会に馴染むことができずに、最終的には再び非行に及んでしまうかもしれません。

⑵ 出院者の実情
それでは、実際に少年院から出院した人はどうしているのでしょうか。

実は、実父母や養父母以外の方のもとに居住する人も一定数います。
2022年の「少年矯正統計調査」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250006&tstat=000001012846&cycle=7&year=20220&month=0&tclass1=000001012848)によると、同年の出院者1363人のうち、雇主が引受人となっているのが89人、更生保護施設・自立準備ホームが引受人となっているのが93人、福祉施設が引受人となっているのが59人となっています。

また、出院者の進路としては、同じく2022年の「少年矯正統計調査」によると、就職決定が502人、復学決定が67人、進学決定が16人と半数近くに上ります。
加えて、就職先や進学先は決まっていないものの、就職希望が564人、進学希望が174人に上ります。
その一方で、その他の進路に進む者は21人、未定の者は19人にとどまります。

以上のように、親族以外が引受人となる場合が一定程度ある一方で、進路が不明瞭な状態で出院となる場合は限定的だとわかります。

少年院の社会復帰支援については、今後の記事でも解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、多数の刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯や再非行の防止に向けたサポートにも力を入れています。
今回の事例であれば少年が事件に関わってしまった背景などについて面談を重ねて課題に取り組む、一緒に非行をした友人との人間関係を断つための監督をするといった更生に向けたサポートを顧問という形で行わせていただきます。
少年院の出院後の社会復帰支援更生支援についてご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

執行猶予中の再度の万引き事案 裁判後に再犯しないように弁護士がサポートをさせていただきます

2023-12-28

【事例】
Aさんは、現在75歳ですが、スーパーで食料品や衣料品を万引きしたことが発覚し、窃盗罪で逮捕されてしていました。
Aさんの万引きは今回が初めてではなく、5回目で、今回の件の5カ月前に執行猶予付きの判決が下されていました。
Aさんは、前回の裁判で執行猶予の判決を受けた際、裁判官から「次同じようなことがあった場合、あなたは刑務所に行くことになります。十分に気を付けて生活をしてください」と言われて、「もう絶対にやりません。」と答えていました。
しかしAさんは、裁判後に単独行動をした際、万引きの衝動をどうしても抑えることができず、今回の万引きを行っていました。
Aさんは、10日間の勾留後、無事に保釈されましたが、今後の裁判や服役後の生活をどうすればよいか心配になり、裁判を担当してくれる弁護士に相談することとしました。
(事例はフィクションです)

この事例をもとに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所であれば、どのようなサポートをAさんにして差し上げられるか、解説します。

再度の執行猶予について

まず事例のAさんが再度猶予判決を受けることは可能でしょうか。
執行猶予中に再犯をした場合に再度執行猶予付きの判決を得るためには、再度の執行猶予(刑法25条2項)の要件を満たす必要があります。
現状の刑法においては再度の執行猶予の要件は以下の通りです。

①前の刑について執行猶予期間中の者で、保護観察に付せられていない者
②今回、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」である
③情状に特に酌量することがある

ただし刑法改正により今後②の要件が「1年以下の懲役又は禁錮」から「2年以下の拘禁刑」と緩和されるようになります。
拘禁刑と懲役刑・禁錮刑の違いについては別の記事で解説させていただきますが、再度の執行猶予の要件は一部緩和されています。

しかし、いずれにせよ再度の執行猶予を得られるかどうかについて最も重要なのは③の情状に特に酌量するべき点があるといえるかどうかです。
万引き事件において再度の執行猶予を獲得している例を見ると次のような要素が、「特に酌量すべき事情」として考慮されてているようです。

・摂食障害の影響が認められ、専門的な治療を開始している
・被害者との間で示談が成立している
・今後の更生支援計画が策定され、裁判後の社会内での再犯可能性が低くなっている

もちろんこれらの事情が全てある場合でも、必ず再度の執行猶予判決が得られるわけではありません。
ですが、重要なのは再度万引きをしないようにするためにはどうすればよいのかを真剣に考え、上記の事情など有利な事情を積み上げて、それを適切に裁判所に伝えることです。
そのためには専門機関との協力が必要な場合、お店への対応が必要な場合、ご家族の協力が必要な場合と事件によって、当事者の方の特性によっても様々です。
再度の執行猶予に関しては弊所の窃盗事件専門サイトにも詳しく解説をしていますので、より詳しい解説を読みたい方はこちらも参考にしてください。

あいち刑事事件総合法律事務所では、今後の再犯防止と真の更生のために必要な対策を実施し、そのためには社会内での更生が相当であることを裁判所に訴えていきます。
場合によっては、後述するように判決後に再犯を防止するための弁護士による支援計画や更生計画について作成し、それを公判で証拠として提出させていただくことも可能です。
それらの弁護活動の結果として、あいち刑事事件総合法律事務所では執行猶予中に万引きの再犯をしてしまったケースでの再度の執行猶予判決や、1度執行猶予を受けている方について2度目の執行猶予判決を得た多数の実績があります。
また、窃盗症・クレプトマニアが疑われる方の詳しい弁護活動の内容についてはこちらのページも参考にしてください。

判決後の再犯防止のサポートについて

万引きを繰り返し裁判にまでなってしまった場合、裁判の場では、ほとんどすべての方が「もう二度とやりません。」と証言します。そして、多くの人は、その場では本当にもう万引きをやりたくないと思っているところでしょう。
しかし、執行猶予判決が出ているにもかかわらず、万引きの衝動や欲求を抑えることができず、万引きを繰り返してしまう方がいます。盗んだ物を捨ててしまったり、人にあげたり、クローゼットに隠すなど、盗んだ物を使わない方も多いです。そのような方は、物が欲しくて万引きするのではなく「万引き」という行為自体に依存してしまっています。その衝動は、もしかしたらクレプトマニア(窃盗症)よるものかもしれません。
クレプトマニアは精神疾患の一種と位置付けられています。
このようなクレプトマニアの疑いがある場合には専門のクリニックで診察を受けることが重要ですが、少しでも再犯の可能性を下げるため、家族や専門家といった誰かのサポートが必要となってきます。
今回のAさんの場合、執行猶予判決後5カ月で万引きを行ったことになるので、万引き行為に対する依存性が心配されます。そこでクレプトマニアを専門にする精神科などの病院に通院することが考えられます。
しかし、万引きは、ふとした瞬間に起こしてしまう犯罪であり、四六時中Aさんの監督をすることを専門医に期待することは現実的ではありません。
より再犯のリスクを下げるためにはAさんを支えることができる人物が多いに越したことはありません。

あいち刑事事件総合法律事務所の更生支援に向けた顧問契約

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、今回のAさんのように、再犯することなく窃盗症を克服する必要のある方のために、更生支援を目的とする顧問契約を用意しています。
この顧問契約は、顧問の期間中に、何か困ったことや不安があった場合に、いつでも弁護士に相談して、アドバイスを受けることができるというものです。
またご希望される方に対しては担当中に聴き取った万引きをしてしまう原因等に応じて、再犯を起こさないための計画を一緒に立てさせていただきます。
その際に顧問契約の期間中に実施する課題についても、担当弁護士が事件を起こされた方に合わせてオーダーメイドで作成させていただきます。

万引きをした方の裁判を数多く担当した弁護士が専門的な立場からアドバイスや定期的な監督をすることで、再犯をすることなく窃盗症克服や真の更生に向けて精一杯サポートをいたします。ご関心があれば、いつでもお問い合わせください。

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