三重県名張市の強盗傷人事件 少年院で行われる社会復帰支援の必要性について解説します

【事例】
Aさんは、三重県名張市に住む17歳の高校生でしたが、友人らと一緒になって、老夫婦が住む三重県桑名市の一軒家に押し入り、老夫婦を殴ったり、蹴ったりといった暴行を加えて、現金100万円を奪い去りました。
このAさんたちの暴行により、老夫婦は骨を折るなどの怪我を負ってしまいました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こしたことで警察に逮捕されて捜査を受けました。
その後、津家庭裁判所に送致され、Aさんはこの強盗傷人事件で審判を受けることになりました。
Aさんは、この強盗傷人事件を起こす以前にも傷害事件を起こして保護観察処分を受けていたこともあって、少年院に送致されることになりました。

ところで、Aさんの両親は既に交通事故で他界しており、身寄りは高齢の祖母だけです。
Aさんの祖母は、何とかAさんの力になりたいと思っていますが、年齢や体調のこともあり、少年院から出てきた後のAさんの監督を十分にできるのか不安に思っていました。
場合によっては、交通の便が悪く、周囲に就業先も見当たらない自分の家に住まわせるよりも、別のところに住んでもらうのがいいのではないかということも考えています。
そこで、Aさんの祖母は、少年院から出てきたとき、Aさんにどのように生活してもらうのがいいのか、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 少年院から出ること

少年院に送致された少年が、(物理的に少年院から外に出るという意味ではなく、)法律的な意味で少年院での拘束状態が解かれることを「出院」と表現しています。
出院のバリエーションとしては、①仮退院(少年院法135条)、②退院(少年院法136条、136条の2)、③収容継続(少年院法137条、138条、139条)などがあります。
このうち、最も多いのは①仮退院で、少年院在院者のほとんどが仮退院で出院します。
仮退院の手続きの流れについて詳しく知りたい方はこちらのページも参考にしてください。

なお、「収容継続」というのは、法律で定められた少年院での収容期間(原則として少年が20歳になるまでです。)では、矯正教育の目的が達成できず、少年保護の観点からはその期間を延長し、矯正教育の目的が達成できるようにするためなど、特別な場合として収容期間を継続することです。

2 少年院による社会復帰支援

⑴ なぜ社会復帰支援が求められているか
少年院送致という処分は、懲役刑や罰金刑といった成人事件の刑罰とは性質が異なります。
少年院での矯正教育は、「在院者の改善更生及び円滑な社会復帰を図ることを目的」として行われます(少年院法1条)。
そのため、罰を与えることだけを目的としているのではありません。

それでは、社会復帰のためにはどのようなことが必要でしょうか。

まずは暮らす場所が必要です。
人が社会の健全な一員として社会生活を送るためには、住居等の宿泊場所の存在は欠かせません。

また、社会内の居場所も必要です。
具体的には、少年のことを助けてくれる人物や、学校や勤務先といった居場所も重要です。

このような場所がないと、少年院を出てからも社会に馴染むことができずに、最終的には再び非行に及んでしまうかもしれません。

⑵ 出院者の実情
それでは、実際に少年院から出院した人はどうしているのでしょうか。

実は、実父母や養父母以外の方のもとに居住する人も一定数います。
2022年の「少年矯正統計調査」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250006&tstat=000001012846&cycle=7&year=20220&month=0&tclass1=000001012848)によると、同年の出院者1363人のうち、雇主が引受人となっているのが89人、更生保護施設・自立準備ホームが引受人となっているのが93人、福祉施設が引受人となっているのが59人となっています。

また、出院者の進路としては、同じく2022年の「少年矯正統計調査」によると、就職決定が502人、復学決定が67人、進学決定が16人と半数近くに上ります。
加えて、就職先や進学先は決まっていないものの、就職希望が564人、進学希望が174人に上ります。
その一方で、その他の進路に進む者は21人、未定の者は19人にとどまります。

以上のように、親族以外が引受人となる場合が一定程度ある一方で、進路が不明瞭な状態で出院となる場合は限定的だとわかります。

少年院の社会復帰支援については、今後の記事でも解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、多数の刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、再犯や再非行の防止に向けたサポートにも力を入れています。
今回の事例であれば少年が事件に関わってしまった背景などについて面談を重ねて課題に取り組む、一緒に非行をした友人との人間関係を断つための監督をするといった更生に向けたサポートを顧問という形で行わせていただきます。
少年院の出院後の社会復帰支援更生支援についてご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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