Archive for the ‘性犯罪事件’ Category

神奈川県横浜市の不同意性交等事件 刑法の性交同意年齢の改正と児童犯罪について①

2023-10-26

【事例】
神奈川県横浜市に住む大学生のAさん(22歳)は、出会い系サイトで女子中学生のVさん(15歳)と知り合って、令和5年の8月に会う約束をしました。
Aさんは事前のラインでのやり取りから、Vさんが15歳であることを知りながら、会った際にラブホテルでVさんの同意を得て性行為をしてしまいました。
Vさんは当日に両親にAさんとの性行為の事を話して、激怒したVさんの両親が神奈川県警南警察署に被害届を提出しました。
その後、Aさんは南警察署の警察官に不同意性交等罪の容疑で通常逮捕されました。
Aさんは事実関係を認めたものの、自分のした行為が同意を得ていたにもかかわらず法定刑が「5年以上の懲役」と定められた不同意性交等罪にあたると知り、あまりの重さに大変驚きました。
(事例はフィクションです)

刑法では同意がある性行為についても、同意がない場合と同様に処罰される場合の規定があります。性交同意年齢についての規定もその一つです。
今回の事例のAさんのように被害者の同意がある性行為については、処罰される趣旨が分からず更生や反省が十分に進まないケースもあります。
今回の記事では令和5年に行われた刑法の性犯罪規程の改正の中の、性交同意年齢に関する改正の解説や、それが定められた趣旨についてあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

令和5年に行われた刑法の性犯罪規程の改正について

令和5年7月13日に施行された改正刑法においては性犯罪規定について大幅な法改正がなされました(以下、この改正について「令和5年改正」といいます)。
令和5年改正において、これまでは「強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪」と呼ばれていた罪が改正後の刑法第176条に「不同意わいせつ罪」と定められました。
またこれまでは「強制性交等罪、準強制性交等罪」と呼ばれていた罪が改正後の刑法第177条に「不同意性交等罪」と定められました。

具体的な改正内容は非常に多岐にわたるのでこの記事での詳細な説明は省略して、本記事では性交同意年齢の改正内容について詳しく解説させていただきます。
性交同意年齢とは対象者の年齢だけを基準として、性的な同意を無効にする、すなわち一定の年齢未満の者に対する性行為については、実際に同意があったかどうかにかかわらず、同意がなかった場合と同様に処罰するという意味である。
改正前の強制わいせつ罪の条文を例に説明させていただきます。

(令和5年改正前)刑法第176条(強制わいせつ)
十三歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

この規定の「十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」の部分が性交同意年齢に関する規定です。
その前の規定と比べると、十三歳未満の者に対しては「暴行または脅迫」を用いなくても強制わいせつ罪が成立すると定めており、単にわいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立するとしていました。
この規定について令和5年改正では性交同意年齢の引き上げが行われました。

性交同意年齢の改正内容について

令和5年改正における、刑法第176条及び刑法177条の性交同意年齢に関する改正部分は以下の通りである。

(令和5年改正後)刑法第176条(不同意わいせつ)
次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、
わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

(令和5年改正後)刑法第177条(不同意性交等
前条第一項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、
性交、肛こう門性交、口腔くう性交又は膣ちつ若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第百七十九条第二項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
3 十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

令和5年改正後の性交同意年齢についての条文は、法律の条文になれていない方には読みづらいかと思いますが、簡単に説明すると以下のような内容です。
①原則として、16歳未満の者に対してわいせつな行為や性交等を行った場合には、他の要件を問わず不同意わいせつ罪ないしは不同意性交等罪が成立する。
②ただし例外として、被害者の年齢が13歳以上かつ16歳未満である場合には、被害者と加害者の年齢差が誕生日を基準にして、5年未満であれば、各号に掲げる事由がある場合に限って不同意わいせつ罪ないしは不同意性交等罪が成立する。
③補足ですが、被害者の年齢が13歳以上かつ16歳未満であり、年齢差が誕生日を基準に5年以上離れていれば、各号に掲げる要件がなくてもわいせつな行為や性交等に該当する事実があれば不同意わいせつ罪ないしは不同意性交等罪がせいりつする。
例えば、事例のケースであれば被害者が15歳であるから「16歳未満」となり、加害者が22歳であるから年齢差は少なくとも6年以上あるので、お互いの同意のもと行われた性行為であっても、令和5年改正後の刑法によれば「不同意性交等罪」が成立します。

改正刑法前には性交同意年齢が13歳未満であるとしていたので、不同意性交等罪(旧強制性交等罪)に問われると聞いたAさんが戸惑うのは無理ないことかもしれません。
しかしながら既に改正刑法は施行されているので、Aさんはより自覚を持って慎重に行動する必要があったでしょう。

性交同意年齢が定められる趣旨について

ではなぜ、刑法の性犯罪規定には性交同意年齢についての定めがあり、令和5年改正によって性交同意年齢がさらに引き上げられたのでしょうか。
性交同意年齢が定められているのは、定める年齢以下の者については判断能力が未熟であり、性的行為の意味を十分に理解できずにその未熟さに付け込まれるおそれもあるので、法律上特別に保護する必要があるとされています。
そして令和5年改正においては13歳以上16歳未満の者についても、性的行為の意味は一応理解できるものの 相手との関係によって、相手の言動の影響を受けやすく、状況に流されて適切に対処する能力が不十分であることを考慮され、一定の年齢差以上の者との関係に対しては、有効な性的同意が肯定できないとの考えから、年齢差の条件を付された上で性交同意年齢が引き上げられました。
加害者の側からすれば、一見して性行為の意味を理解し同意をとったとしても、一定の年齢未満の者であれば、性交をするかしないかという自分の体への侵害を受け入れるかどうかという重要な判断を、ちゃんとできないものだという相手の立場に立った考えを持つことが求められます。
事例のAさんのような場合では、自分の欲求で安易に性行為に及んでしまったことを反省し、15歳のVさんや、同年代の児童は、その場ではっきりとノーということができない場合もあり得、そうだった場合後から自分のした判断を後悔して、一生心の傷として残るかもしれないこと、そうなれば自分のした行為は相手の未熟さに乗じて無理やり性行為をしたことと何も変わらないことを胸に刻んで同じことを決してしないように更生を目指すべきです。

不同意性交等罪が成立する場合には実刑判決となる可能性が高いので、事件の反省と併せて早期に示談交渉に着手する必要が高いです。
自身の性癖や欲求のコントロールができなかった結果の犯行であれば、専門機関への通院が必要になるケースもあります。
性犯罪の加害者に対する弁護活動については、当サイトの痴漢、盗撮事件のページにも解説がありますので、そちらも参考にしてください。
次回は、不同意性交等罪に限定せず、未成年者を被害者とする犯罪に関して広く説明させていいただきます。

宮城県仙台市の不同意性交等事件 保釈決定を得て早期に専門機関を受診したい

2023-10-05

【事例】
宮城県仙台市に住むAさんは3年前に強制わいせつ事件を起こして懲役2年執行猶予4年の有罪判決を受けていました。
Aさんは執行猶予中にもかかわらず、仙台市内の路上で通りすがりの女性に抱き着き、膣内に指を入れるという事件を起こしてしまいました。
事件を起こした1か月後にAさんは不同意性交等罪の容疑で仙台中央警察署の警察官に通常逮捕されました。
その後Aさんは不同意性交等罪の事実で起訴されました。
AさんとAさんの家族は保釈を認めてもらい、その期間に性犯罪加害者の更生プログラムがある専門機関を受診させようと考えました。
(事例はフィクションです)

今回の記事では上記事例を用いて性犯罪事件における保釈請求について、あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

性器を挿入していないのに不同意性交等罪?

まず今回の記事の本題とは逸れますが、事例においてAさんの起訴罪名となった不同意性交等罪について簡単に解説します。
不同意性交等罪は令和5年7月13日に施行された改正刑法において新設された罪名になります。
新設とはいっても不同意性交等罪の処罰範囲はこれまで強制性交等罪、準強制性交等罪として処罰されていた行為がほとんどです。
しかしながら、これまでは強制わいせつ罪(改正刑法では不同意わいせつ罪に変更)で処断されていた、「膣または肛門に身体の一部や物を挿入する行為でわいせつなもの」も不同意性交等罪で処罰するように改正されました。
したがってAさんのした膣内に指を入れる行為は、改正刑法の施行後においては不同意性交等罪が成立するのです。
不同意性交等罪(旧強制性交等罪)の法定刑は「5年以上(20年以下の)の懲役刑」であるのに対して、不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役刑」と定められており、法定刑に大きな差があります。
刑法改正については、当事務所の各支部のホームページ(仙台支部の解説ページ)でも詳しく解説していますので、是非ご確認ください。

保釈請求が認められる要件について

それでは、次に保釈が認められるための要件について簡単に解説していきます。
保釈に関しては当サイトの保釈について詳しく解説したページも参照してください。
保釈には大きく分けて2種類があり、1つが権利保釈、もう1つが裁量保釈です。その他に義務的保釈という保釈もありますが実務上認められる例はほとんどないので説明は割愛します。
簡単に説明しますと、権利保釈とは刑事訴訟法89条に定める各事由のすべてを満たさなかった場合に認められる保釈のことを言います。
刑事訴訟法89条には6つの事由が定められており、特に問題になるのは常習性に関する事由と罪証隠滅に関する事由です。
一方で裁量保釈とは、権利保釈の要件を満たさない場合であっても、裁判所又は裁判官の裁量によって保釈が許可されることをいいます。
裁量保釈について定める刑事訴訟法90条では、裁量の判断事由として「被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情」を明文であげています。
専門機関に通わせる必要があるという事情は、これが遅れることにより、被告人の更生が阻害されるという不利益があるということで、被告人に不利益を与える事情として裁量保釈の判断事由の一つになると考えられます。

専門機関を受診したいことを理由に保釈請求は認められるか

性犯罪を繰り返してしまう方には、性癖に問題が見られる場合や認知に大きな歪みが生じている場合があります。そのような場合には専門機関での専門的治療を受けることが更生に重要な意味を持つこともあります。
詳しくは認知行動療法を紹介した記事やページもご参照ください。
当然ですが留置施設や拘置所では性犯罪に関する更生プログラムを受けることはできません。
また刑務所に収監された後も更生のためのプログラムは用意されていますが、当然刑務所のプログラムは性犯罪の加害者に特化したものではありません。
専門的な治療を、本人に合った専門機関で早期に受けさせるためには、保釈を認めてもらい、判決前に受診をする必要があります。
特にAさんの事例のように執行猶予中の犯行であり実刑判決を受ける可能性が高いケースでは、専門機関で治療を受けるタイミングは判決の前しかありません。

Aさんが保釈を認められるためには権利保釈ないしは裁量保釈を認めてもらう必要があります。
そしていずれの保釈であれ、まずは証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがないことを保釈を判断する裁判官に主張する必要があります。
その上で、専門機関を受診させる必要性が高いケースであり保釈をする必要が高く裁量保釈を認めるべき事案であることを主張することになります。
罪証隠滅のおそれがないことを主張するためには、被害者との示談が成立していること、家族による監督が期待できることなどを具体的に主張していきます。
逃亡のおそれがないことについても、家族の監督体制が重要な考慮事情になります。
事例のように執行猶予中の再犯のケースは実刑判決が見込まれるため、起訴直後に保釈が認められることは容易ではありません。
上記の事情を丁寧に主張し、かつ専門機関への通院が必要なことなど保釈を認めるべき事案であることを弁護士が作成する保釈請求書において詳しく主張する必要があります。

保釈がなかなか認められない事案でも、保釈請求書の内容等を検討すれば保釈が認められる事案もあります。あいち刑事事件総合法律事務所では、これまで実刑判決が見込まれる事案や否認している事案等一般に保釈が難しいと言われる事案でも数多くの保釈許可決定を獲得しています。保釈が認められずにお困りの方、保釈を認めてもらい早期に専門機関での治療を開始されたい方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

北海道札幌市の盗撮事件 認知行動療法や更生支援について盗撮事件の弁護に精通した弁護士が解説します

2023-08-31

【事例】
北海道札幌市に住むAさんは電車内でVさんのスカート内を盗撮したとして性的姿態等撮影処罰法(略称)違反で逮捕されました。
Aさんは釈放後に家族と一緒にあいち刑事事件総合法律事務所の無料法律相談を利用して、逮捕された盗撮事件について相談しました。
相談の中でAさんは盗撮について、自分はストレス発散のために盗撮をしていたが、盗撮をされる被害者側にも落ち度があるという趣旨の発言があったので、担当した弁護士からAさんらに対して認知に歪みがあるので専門機関で認知行動療法を受けたらどうかというアドバイスをしました。
(事例はフィクションです)

今回の記事では上記の事例を基に、認知行動療法盗撮事件を起こした方の更生支援について、あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。

認知の歪みと認知行動療法

この事例のAさんは、一方的に盗撮事件を起こした加害者であるにもかかわらず、被害者の側にも落ち度があるという一般的には誤った考え方をしていました。
実際に盗撮事件を起こした方の相談を担当していますと、
「被害者が短いスカートを履いているのは盗撮されてもいいと思っているからだ」
「被害者が気付かないのであれば盗撮は悪いことではない」
などといったことを話される相談者の方は一定数いらっしゃいます。

この事例のAさんのように一般的に見て誤った考え方、捉え方をしていることを認知に歪みがあるという場合があります。
「認知」とはものの受け取り方や考え方という意味です。
認知が歪んだままであれば再犯のリスクは高いので、再犯防止や更生の観点からこの認知の歪みを改善することは非常に重要になります。
そして認知の歪みの改善には、まず認知の歪みがあることや、そのような歪んだ嗜好をしてしまった原因を事件の被疑者自身が認識しそれを改めようとする気持ちを持つことが重要になります。

日々の生活で行っている「行動」や上記の「認知のゆがみ」などを取り扱いながら、ストレスと上手に付き合いながら生活することを目指す心理療法の1つに「認知行動療法」があります。
認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy)はCBTとも呼ばれ、ストレスなどで固まって狭くなってしまった考えや行動を、ご自身の力で柔らかくときほぐし、自由に考えたり行動したりするのを助ける心理療法です。
認知行動療法は実際に性犯罪の再犯防止を専門に扱う機関や心療内科でも実施されているところがあります。
盗撮事件を起こして法律相談を利用された方で、盗撮事件の再犯防止で認知行動療法などの専門的療法を希望される方には、お近くの専門機関をご案内させていただくこともあります。
今回の事例でもカウンセラーや心理士の方による認知行動療法を受けて、認知の歪みの改善やストレスへの対処法をアドバイス頂くことが再犯防止に重要な意味を持つと思います。

盗撮事件を起こした方の更生支援

現代はスマートフォンの普及や小型カメラの性能向上などにより、その気になってしまえば簡単に盗撮を行うことができてしまう時代になっています。
その一方で、今回の事例で問題になる性的姿態等撮影処罰法(略称)の制定により盗撮行為に対する法定刑が厳しくなるなど厳罰化の流れとなっています。
そのような環境で盗撮事件を起こした方の再犯防止や更生には、自身の行動の変化や周囲の監督体制の強化に加えて、盗撮の原因となった考え方の改善やストレスの除去も重要になります。
今回の事例はあくまで一例ですので、盗撮事件を起こしてしまう方の原因や背景は実に様々です。
盗撮するに至った原因やそれに対する対処を見誤ってしまえば、再犯のリスクが高い状態が続いてしまうかもしれません。再犯をしてしまえばより厳しい刑事罰を科されるリスクや、生活状況が一変してしまうおそれもあります。

あいち刑事事件総合法律事務所では、盗撮事件を起こしてしまった方の弁護やご相談を数多くお受けしてきました。
盗撮事件を起こした方の弁護活動については痴漢、盗撮事件のページもご参照ください。
経験豊富な弁護士が相談や受任後の面談を担当することでご自身では気付かなかった原因や、再犯防止のためにどのような対応をとることが適切かについて丁寧にアドバイスさせていただきます。
必要があれば今回の事例のように専門機関での治療をおすすめすることもあります。
事件を起こされた方や、再犯防止や更生に不安を抱えるご家族の方などは、まずは是非あいち刑事事件総合法律事務所の無料相談や初回接見サービスをご利用ください。

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