兵庫県姫路市の不同意わいせつ事件 性犯罪再犯防止プログラムではどんなことをするの?

【事例】
Aさんは、神戸市内の大学に通う18歳の方で、兵庫県姫路市内のマンションで両親と一緒に生活しています。
Aさんは、大学近くの路上で女性に抱きつくという不同意わいせつ事件を起こしてしまいました。
その後、警察の捜査を受け、最終的に神戸家庭裁判所姫路支部は、Aさんを保護観察処分としました。
性犯罪は再犯率が高いというインターネット上の記事を読んだAさんの両親は、Aさんが今後、再犯をしないためにはどうしたらいいのか不安になりました。
そこで、Aさんと両親は、保護観察処分ではどのようなことをするのか、Aさんの再犯防止に向けてどのようなことができるのかを相談するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

以前の記事で、いわゆる性犯罪を理由に保護観察を受けるAさんは、保護観察所の「性犯罪再犯防止プログラム」の対象となる可能性があるという解説をしてきました。
以前の記事の内容に興味を持っていただいた方はこちらから読んでいただけます。
今回は、その「性犯罪再犯防止プログラム」の内容について、さらに解説していきます。

2 認知行動療法について

性犯罪再犯防止プログラム」は保護観察所が実施する認知行動療法に基づいたプログラムです。

この認知行動療法とは、ある状況に出くわした時に、私たちが持つ感情と行動が、その状況をどうとらえているか(つまり、「認知」)によって影響を受けることに着目した心理療法です。
認知行動療法の対象の方の感情や行動に影響を及ぼしている極端なとらえ方(歪んだ認知)を、対象の方と治療者が共同で確認します。
その上で、対象の方が、より現実的で幅広いとらえ方(認知)を自分自身で選択できるようにすることで、本来持っている力を発揮できることを目指すという心理療法です。

なお、認知行動療法に関する以上の記載は厚生労働省の「e-ヘルスネット」(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-044.html)を参照しています。

3 「性犯罪防止プログラム」

「性犯罪防止プログラム」は、導入プログラム、コアプログラム、メンテナンスプログラムの三段階に分けて行われます。

⑴ 導入プログラム
保護観察処分を受けた方のうち、仮釈放を許されて保護観察に付された場合など、一度刑事施設に収容されて、そこで刑事施設でのプログラムを受講した方以外の方が受けるプログラムです。
プログラムの目的や概要の説明を受けたり、自分の事件当時の状況やこれからの目標などを確認することでコアプログラムへの動機付けを行なったりします。
原則的には、コアプログラムを実施する予定の保護観察官が、個別に面接形式で実施されるとされています。

⑵ コアプログラム
保護観察開始後、おおむね2週間に1回ほどの頻度で行われ、全5過程をおおむね3か月間で実施することになります。
具体的には、
①性加害のプロセス
②性加害に繋がる認知
③コーピング(対処方法)
④被害者の実情を理解する
⑤二度と性加害をしないために
という5過程が行われます。

①「性加害のプロセス」とは、性加害を起こすときの行動や気持ちなどを振り返り、自分が性加害を起こすパターンなどについて考えるものです。
②「性加害に繋がる認知」とは、性加害に繋がりやすい特有の認知があること、認知を選び直す方法について学ぶものです。
③「コーピング(対処方法)」とは、日常生活で上手くいかないときにどのように対処すればよいかを考えるものです。
④「被害者の実情を理解する」とは、性加害が被害者に及ぼす被害の実情について学び、被害者に対する認知の癖などを改めて考えるものです。
⑤「二度と性加害をしないために」とは、性加害をしないとともに、なりたい自分になるための再発防止計画をまとめるものです。

なお、コアプログラムにおいては、共通の指導のみでは対応困難な対象者に対して、その特性等を踏まえた指導も実施されます。

⑶ メンテナンスプログラム
保護観察官や保護司の定期的な面接を行い、コアプログラムまでで学んだことを復習したり、再発防止計画の点検や見直しを行なったりします。

なお、以上の記載は法務省のホームページ(https://www.moj.go.jp/hogo1/kouseihogoshinkou/hogo_hogo06_00002.html)に公開されている「刑事施設及び保護観察所の連携を強化した性犯罪者に対する処遇プログラムの改訂について(令和4年度~)」を参照しています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、これまで数多くの刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、保護観察中のサポートにも力を入れています。
審判終了後後であっても顧問契約を準備させていただいており、真の更生に向けて弁護士作成の課題を実施するなどの更生支援活動を行っています。
保護観察中の刑事事件・少年事件に精通した弁護士によるサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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