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仮釈放と仮釈放に向けた弁護活動② 仮釈放支援に精通した弁護士
【事例】
Aさんは強盗致傷罪で懲役3年6か月の判決を受け服役しています。Aさんは現在服役し始めてから2年半を経過しているところです。
Aさんは最近刑務所で知り合った人が仮釈放が認められて、釈放されたことを聞いて、自分も仮釈放を認めてもらうために何か出来ることはないか家族に相談しました。
家族は仮釈放を認めてもらい早期の社会復帰や更生ができないものかと、仮釈放支援に詳しいあいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用しました。
(事例はフィクションです)
前回の記事で紹介した事例を基に、今回の記事では仮釈放に向けた具体的な弁護活動について紹介させていただきます。
仮釈放に向けて弁護士ができること
前回の記事で紹介したように、仮釈放が認められるためには地方更生保護委員会に対して申し出が行われる必要がありますが、その権限を有するのは刑務所長であるということです。
受刑者本人や受刑者の家族は申し出の権限がないのと同様に、受刑者から委任を受けた弁護士であっても地方更生保護委員会への申し出を直接行うことはできません。
しかし申し出の権限が弁護士にないからといって、早期に仮釈放を認めてもらうことを目指した活動が一切ないわけではありません。
弁護士を通じて書面を提出するなどして、刑務所長に働きかけを行うことで地方更生保護委員会に対して仮釈放に向けた申し出をするように促すことはできます。
また地方更生保護委員会に対して書面を提出するなどして、仮釈放の許否に関する判断をするように働きかけを行うことも可能です。
もちろん、弁護士が書面を提出して要求して申し出を行うことなどを促しても、申し出をする強制力があるわけではないので、必ず仮釈放が認められるわけではありません。
しかしながら、弁護士が仮釈放に向けて必要な活動を受刑者の方本人に代わって行うこと、申し出を行う権限のある刑務所長にその活動の結果等を報告することで仮釈放が認められやすくなる場合もあります。
仮釈放に向けた具体的な活動
前回の記事で仮釈放の要件について説明させていただきました。また仮釈放の要件については当サイトの仮釈放が認められる場合のページにも詳しく解説しています。
そして前回の記事では仮釈放が認められるためには「改悛の情」が認められることが必要であると説明させていただきました。
では「改悛の情」が認められると刑務所長や地方更生保護委員会に判断してもらうためには具体的にどのような活動が考えられるでしょうか。
改悛の情をどのように判断するかについては、「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」の28条に規定があります。
条文は省略しますが、改悛の情が認められるためには大まかに言って
①受刑者に悔悟の情があること
②受刑者に改善更生の意欲があること
③受刑者が再び犯罪をするおそれがないこと
④保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められること
⑤社会の感情が仮釈放を是認すること
という要件を満たす必要があると定めています。要件の詳しい内容については当サイトの仮釈放が認められる場合のページもご確認ください。
弁護活動としては、条文の要件を満たすように弁護士が活動を行い、これらの要件を満たしていることを刑務所長などに上申書等の資料を提出するなどして主張していくことを行っていきます。
本事例における仮釈放に向けた活動
では本事例においては、改悛の情が認められることを示すためにどのような弁護活動を行い、どのような書類を提出する必要があるでしょうか。
まず上記①、②の要件を満たすために受刑者本人の方の内省の深まりを示すことが必要です。
刑務所においても具体的な再犯防止プログラムは行われますので、まずはこれに真面目に取り組むことが必要になります。取り組み状況によっては、弁護士が面会や手紙のやり取りを通じて取り組み状況を聞いて、受刑者本人にアドバイスをすることも考えられます。
加えて事件のことを反省していることを示すために、強盗致傷事件の被害者の方への謝罪文を書く、自分のした犯罪により被害者や社会にどのような影響があるかを課題を準備して、作成した課題を刑務所長に提出する上申書に添付することも考えられます。
③、④の要件を満たすためには上記の反省に加えて、身元引受人などの更生環境が整っていることも示す必要があります。
具体的には帰住先などがあることを示すために家族などの身元引受書を添付して提出することが考えられます。
そして単に身元引受人がいるというだけではなく、帰住先での生活で更生できることを具体的に示すことができると、より改悛の情があると判断されやすくなります。
例えば強盗致傷を起こした原因が生活苦であれば、仮釈放中の勤務先があることや家族の経済的援助を受けられる状況があることなど生計を立てられる状況があることを示すことなどが考えられます。
⑤の要件では実刑判決を受けることになった事件の被害者への対応が重要になります。
仮に判決時に示談や被害弁償が未了であれば、これを行うことで改悛の情が認められるかどうかの判断において有利な事情として考慮されます。
以上のように、たとえ仮釈放を認めさせる権限はなくとも、弁護士がついて仮釈放が早期に認められるように働きかけるためには様々な活動が考えられます。
今回の事例は一例ですが、具体的な事案や受刑者の方が置かれている状況において、仮釈放に向けて必要な活動は様々です。
まずは弁護士に相談して、具体的な事例の検討や状況の把握を通じて最善の活動を検討していくことが必要になります。
仮釈放に関して悩まれている方は是非一度、仮釈放に向けた活動に精通しているあいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
仮釈放と仮釈放に向けた弁護活動① 仮釈放支援に精通した弁護士
【事例】
Aさんは強盗致傷罪で懲役3年6か月の判決を受け服役しています。Aさんは現在服役し始めてから2年半を経過しているところです。
Aさんは最近刑務所で知り合った人が仮釈放が認められて、釈放されたことを聞いて、自分も仮釈放を認めてもらうために何か出来ることはないか家族に相談しました。
家族は仮釈放を認めてもらい早期の社会復帰や更生ができないものかと、仮釈放支援に詳しいあいち刑事事件総合法律事務所の無料相談を利用しました。
(事例はフィクションです)
この事例を基に、仮釈放の制度と仮釈放を認めてもらうための弁護活動についてあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が解説します。
仮釈放とは
仮釈放とは、受刑者に「改悛の状」があることを前提に、収容期間(実刑期間)満了前に受刑者を仮に釈放して更生の機会を与え、その円滑な社会復帰を図ることを目的とした制度のことです。
したがって、仮釈放が認められれば受刑者が受けた懲役刑や禁錮刑の期間よりも短い期間で出所することが可能になります。
仮釈放が認められることで早期の再就職ができる、家族の支援の下で更生を図れるなど事件を起こされた方の更生に向けて前向きな一歩を早期に歩みだすことができると思います。
ただし仮釈放はあくまで「仮の」釈放であることには注意が必要です。
仮釈放が認められた場合には、刑期の満期まで保護観察に付されることになります。保護観察の際には社会生活を送る上で守らなければならない遵守事項が定められ。遵守事項に違反したり、素行不良が明らかになったりした場合には仮釈放が取り消される場合もあることに注意が必要です。
仮釈放については、本サイトの仮釈放のページにも詳しい解説がありますのでそちらも参照してください。
仮釈放が認められる要件とは
では次に仮釈放が認められるための要件について説明します。
仮釈放が認められるための要件には、一定期間の経過という形式的な要件と「改悛の情」が認められるという実質的な要件があります。
形式的な要件については、「有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過」することが必要になってきます(刑法第28条)。
今回のケースのAさんであれば、3年6か月の懲役刑を受けていますので、少なくとも1年2か月の刑期が経過しなければ、そもそも仮釈放の形式的な要件も満たさず、仮釈放が認められる余地はありません。
Aさんの場合、現時点で2年6か月服役していることになりますので、この形式的要件については問題なく満たします。
したがって、Aさんに「改悛の情」が認められれば、仮釈放が認められるための要件を満たすことになります。
改悛の情がどのような場合に認められるかは、当サイトの仮釈放が認められる場合のページに詳細な説明がありますし、次回の記事で取り上げる仮釈放に向けた弁護活動のところで詳しく解説させていただきます。
仮釈放が認められるまでの流れ
先程仮釈放が認められる要件について説明をしましたが、仮釈放の要件を満たして初めて仮釈放が認められるためのスタートラインに立ったといえます。
次に、仮釈放が認められるまでの流れについて説明します。仮釈放が認められるまでの流れの詳しい説明については当サイトの仮釈放手続きの流れのページも参照してください
実際に仮釈放が認められるためには、刑務所長が当事者につき仮釈放の要件を満たしていると判断して、地方更生保護委員会に対して、仮釈放許可の申出をすることが必要になります(更生保護法34条1項)。
そして、地方更生保護委員会で協議がなされ、その上で地方更生保護委員会において調査や聴き取りが行われ、仮釈放を許可する旨の決定が出て初めて仮釈放が認められることになります。
ここで注意しておきたいのは、地方更生保護委員会に対して仮釈放の申し出を行う権限があるのは刑務所長であり、受刑者本人には申し出の権限がないということです。
では、仮釈放が認められる方向に導くためにはどのような弁護活動が考えられるのでしょうか。
次回の記事では、本事例における仮釈放に向けた活動の例もあげながら、仮釈放に向けた弁護活動について解説します。
