兵庫県豊岡市の特殊詐欺事件で少年委任に送致されることになった事例 少年院での処遇について⑦

【事例】
Aさんは、兵庫県豊岡市に住む17歳の男子高校生です。
ある日、AさんはSNS上である投稿を見つけました。
それは、ある物を受け取って運ぶだけで何万円もの報酬を支払うといういわゆる闇バイトを募集する投稿でした。
犯罪かもしれないと思いながらその募集に応募したAさんは、兵庫県内や鳥取県内でいわゆる特殊詐欺に何件も加担してしまいました。
高齢の方が住む自宅に赴いてキャッシュカードをすり替えて盗んだり、そのキャッシュカードを使って何百万円ものお金を引き出して盗んだりしたのです。
その後、鳥取県内の警察署に逮捕、勾留され、再逮捕もされました。
捜査を受けた後、最終的に神戸家庭裁判所豊岡支部に事件が係属し、神戸少年鑑別所に収容するという観護措置が取られました。
そして、神戸家庭裁判所豊岡支部は、Aさんの少年審判を行い、少年院に送致するという処分を決めました。

AさんやAさんの家族は、少年院に送致するという処分自体には納得していましたが、少年院ではどのようなことをするのか、どこの少年院に行くことになるのか、どのくらいの期間行くことになるのかなどが知りたいと思い、それまでもAさんの弁護人、付添人であった弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

以前の記事では、少年鑑別所長が少年を収容すべき少年院を決める過程について解説をしてきました。
今回の記事では、その中で出てきた矯正教育課程についてさらにみていきます。
各過程の人員や法務省からの解説についてはこちらをご覧ください。

2 矯正教育課程

以前の記事で解説してきたように、家庭裁判所から執行指揮を受けた少年鑑別所長は、少年の「鑑別を行い」、「矯正教育課程」「その他の事情を考慮して」、その少年を「収容すべき少年院を指定する」ことになります(少年鑑別所法18条1項)。
この「矯正教育課程」とは、法務大臣が定める少年院における矯正教育全体に適用される計画で、「在院者の年齢、心身の障害の状況及び犯罪的傾向の程度、在院者が社会生活に適応するために必要な能力その他の事情に照らして一定の共通する特性を有する在院者の類型ごとに、その類型に該当する在院者に対して行う矯正教育の重点的な内容及び標準的な期間を定めたもの」です(少年院法30条)。
具体的には、「矯正教育課程に関する訓令(平成27年法務省矯少訓第2号大臣訓令)」というものの中に定められていますので、今回はその内容について具体的に見ていきます。

例えば、第一種少年院に送致する場合で、短期間の処遇でよいとの勧告はされなかった場合を考えます。

「在院者の年齢」という観点からすると、例えば年齢が15歳、本来なら中学3年生という義務教育が終了していない少年もいます。
その場合、矯正教育においては、「義務教育課程Ⅱ」という矯正教育課程に分類され、中学校の学習指導要領に準拠した教科指導に重点がおかれることが多いと思われます。

また、「心身の障害の状況」という観点からすると、例えば、知的障害があり、処遇上配慮する必要があると考えられる少年もいます。
その場合、矯正教育においては、「支援教育課程Ⅰ」という矯正教育課程に分類され、社会生活に必要となる基本的な生活習慣、生活技術を身に付けるための指導に重点がおかれることが多いと思われます。

そして、「犯罪的傾向の程度」という観点からすると、例えば、反社会的な価値観や行動傾向がある、自己統制力が低い、認知に偏りがあるなど、その資質上特に問題となる事情があって、その改善が必要だと考えられ、義務教育も終了している少年もいます。
その場合、矯正教育においては、「社会適応過程Ⅱ」という矯正教育課程に分類され、自己統制力を高め、健全な価値観を養い、堅実に生活する習慣を身に付けるための指導に重点がおかれることが多いと思われます。

次回の記事では、矯正教育課程についてさらに解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

また弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では少年事件の審判に向けた付添人活動についても豊富な実績があります。特殊詐欺事件での付添人活動に関してはこちらの記事も参考にしてください。

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