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【再犯防止の鍵】刑務所で行われる犯罪傾向を改善する「特別なプログラム」とは? – 弁護士が解説する更生計画の重要性

1 刑罰から「矯正教育」へ
「刑務所」と聞くと、ただ刑罰を執行する場所、というイメージを持たれがちです。
しかし、現代の日本の刑事施設(刑務所など)は、単に受刑者を収容するだけでなく、出所後の再犯防止を最大の目標とした「矯正教育」に力を入れています。
特に注目すべきは、個々の受刑者がなぜ犯罪に至ったのか、その犯罪傾向を専門的に分析し、改善を図るための「特別なプログラム」です。収容されているご家族にとって、このプログラムへの取り組みは、更生に向けた重要な一歩であり、仮釈放審査でも重視される要素となります。
この記事では、弁護士として、刑務所が受刑者の方にする取組みを見守り、受刑者の更生支援に寄り添ってきた経験から、この特別なプログラムの実態と、出所後の更生にどのように役立つのかを分かりやすく解説します。
2 なぜ「特別なプログラム」が必要なのか? 犯罪の根源へのアプローチ
人が犯罪行為に及ぶ背景には、社会的な要因だけでなく、認知の歪みや感情のコントロールの難しさ、依存症など、様々な犯罪傾向が潜んでいます。
従来の矯正教育は一律的なものが多かったのですが、それでは個々の再犯リスクに対応できません。そこで、受刑者一人ひとりの犯罪傾向を診断し、その根源的な問題に特化して取り組ませるのが、この特別なプログラムです。
プログラムの目的:再犯防止のための「心と行動の変革」
このプログラムの究極の目的は、受刑者が刑務所を出た後、二度と犯罪に手を染めないよう、「考え方」と「行動」を変えることにあります。これは、国が進める最も重要な更生支援策の一つです。
3 犯罪傾向別に分類される主な「特別なプログラム」
法務省では、受刑者の抱える問題に応じて、いくつかの特別なプログラムを用意しており、全ての受刑者は、入所後に実施される心理検査や面接に基づき、個々の受刑者の特性等に応じたプログラムに参加することになります。
① 薬物依存離脱指導
薬物犯罪の再犯率は非常に高いのが現状です。この指導は、薬物依存が再犯の大きな原因である受刑者を対象とします。グループワークや専門家との面談を通じて、薬物使用の引き金となる状況や感情を理解し、断薬のための具体的な対処法(「スリップ」防止策、「リラプス」防止策)を学びます。再犯防止において、最も重要なプログラムの一つです。
② 暴力防止プログラム
暴力事件や傷害事件を犯した受刑者を対象とします。怒りや衝動的な感情を適切にコントロールできないことが再犯につながるため、自分の暴力につながりやすい思考の「くせ」や暴力の背景にある感情などを把握し、認知行動療法の基本モデルを理解したり、暴力以外の感情の表現方法を習得することなどを目指します。
③ 性犯罪者の改善指導
性犯罪は再犯性が高い犯罪の一つであり、専門的かつ多層的な、根気強い指導が不可欠です。犯罪の引き金となった思考パターンや性的な逸脱行為を認識させ、被害者の視点を理解する指導、そして適切な対人関係を築くスキルなどを学びます。
④ 被害者との関係改善指導
特に被害者の方の命を奪ってしまったり、心身に重大な被害をもたらしてしまったりした場合に、命の尊さや罪の重さ、果たすべき責任を深く理解するための指導です。これにより、受刑者に真の悔悟の念を促し、償いへの意識を高めます。
4 刑務所内での取り組みが「仮釈放」に直結する理由
受刑者がこれらの特別なプログラムにどれだけ真剣に取り組み、改善更生の成果を示したかは、仮釈放を審査する地方更生保護委員会にとって、極めて重要な判断材料になると思われます。
重要な評価ポイント:単なる参加ではなく「変化」
審査員がチェックするのは、プログラムに「参加した」という事実だけではありません。
プログラムの成果報告:指導担当官から、受刑者がどれだけ思考や行動が変化したか、その姿勢が真摯なものだったかなど報告されることになるでしょう。
再犯リスクの低減:プログラムを通じて、再犯につながる犯罪傾向が改善されていると評価されれば、仮釈放の許可を得やすくなります。
更生意欲の証明:困難な課題に粘り強く取り組み、自分自身の負のパターンに向き合ったという事実は、出所後の更生支援への意欲を裏付けるものと評価されるでしょう。
5 弁護士がサポートする「刑務所内プログラムと社会復帰計画の連携」
私たち弁護士は、刑務所内のプログラムが効果的に更生につながるよう、受刑者と外部社会(家族、支援団体、保護観察所)を繋ぐ役割を担います。
① プログラム参加の促しと情報共有
弁護士は面会を通じて、これらのプログラムの重要性を本人に伝え、真剣に取り組むよう促します。また、家族に対してプログラムの内容を説明し、更生の方向性を共有することで、出所後の生活支援を円滑にします。
② 帰住後の更生計画への組み込み
刑務所内で学んだことが、出所後に途切れないようにすることが、再犯防止の鍵です。例えば、薬物依存離脱指導を受けた受刑者に対し、弁護士は出所後の自助グループへの参加、専門病院への通院計画などを更生保護計画に具体的に組み込みます。
③ 審査への意見書や嘆願書などの提出
仮釈放の審査に際し、弁護士は、本人がプログラムに真摯に取り組んだ証拠、改善更生の具体的な成果、そしてその後の再犯防止のための計画などをまとめた弁護士意見書や家族からの嘆願書などを提出し、許可を強く後押しします。
結びに変えて~特別なプログラムは「新しい人生の設計図」~
刑務所内の「特別なプログラム」は、過去の過ちを深く反省し、犯罪傾向を改善するための「新しい人生の設計図」です。このプログラムを最大限に活用し、外部の更生支援と連携させることで、真の再犯防止が実現するのではないでしょうか。
私たちは、受刑者とそのご家族が、この設計図を現実のものとするための伴走者です。刑務所での矯正教育の成果を最大限に活かし、更生に向けて取り組みたいとお考えの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
また弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では仮釈放の早期実現に向けた弁護士による支援活動も行っています。初回相談は無料ですので実刑判決を受けた方、ご家族が服役中の方はお気軽にご相談ください。
