高齢の受刑者の方の多くが、出所後も再び刑務所に入ってしまう(再入)ことが多いこと、またその理由として多いのが、窃盗罪、覚醒剤取締法違反、道路交通法違反であることについて解説をしました。
このような高齢の受刑者の方が増えているという課題に対しては、法務省や刑務所側として喫緊の対応が必要な課題であると捉えられています。
そして、刑務所に入ってからの矯正ではなく、刑務所に入る前からの対応(刑務所に入れないための対応、入口支援と呼ばれています)や、刑務所から出た後の対応(出口支援と呼ばれています)が取られています。
ここでは、入口支援について解説をします。
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国の施策としての「入口支援」
法務省が国として行っている入口支援は、「起訴猶予」の処分になった人や、執行猶予の判決を受けて釈放された人を対象として行われています。
つまり、逮捕されて取調べ等を受けたけれども、起訴されて実刑判決を受けるところまでは至らなかった人を対象としています。
支援の内容としては主に、起訴猶予処分等を受けて釈放された後の生活設計に関する対応です。
高齢で逮捕された方の中には、帰る場所がない人や、最低限の生活資金も持たない人、病気や障害があって身の回りのことができないという人もいます。
このような方が、釈放された後も、再犯することなく生活を続けられるように、生活保護や障害年金、福祉手帳の申請といった、行政の福祉を受けられるようにサポートをするというものです。
また、医療にかかった方が良いという人に対しては、そのまま入院の措置を取る等、適切な期間につなげることもあります。
このような入口支援の目的は、「実刑判決とならなかった人が社会に戻りやすいように」という観点からも行われています。
入口支援としての課題
このような「入口支援」ですが、どれも、「実刑判決にはならなかった(刑務所には入らなかった)」人を対象としているものです。
つまり、「入口」という名前ではあっても、「釈放された後」についての施策です。このような支援は、「起訴猶予」や「執行猶予」という処分が出された後に行われるものになります。
また、国の施策である以上、誰に対しても行われるというものではなく、あくまでこのような支援が必要であるとされる人に対してのみ、実施されるものになります。
逮捕された方が「支援をして欲しい」と希望をしても、必ずしも対応をしてもらえるというものではありません。
弁護士にできること
刑事事件の弁護士に依頼をしていれば、釈放後の「入口支援」についても共同して行うことができます。
ご家族や周りの方から選任を受けた私選の弁護士であれば、まずは、逮捕されたご本人の方が抱えるニーズを聞き、また、周囲の方として協力できること/できないことを整理していきます。
そのうえで、弁護士が、逮捕されてしまったご本人/周りの方にとって必要な支援と、行政や医療との橋渡しをしていきます。行政や医療も、法務局からの要請でなくとも、弁護士からの要請に応じて、同じような支援をしてくれます。
また、弁護士が主導で早期から生活の立て直しに向けた活動をしていることで、「不起訴」や「執行猶予」の判決を目指すことができます。
国による「入口支援」では不起訴や執行猶予となった後でなされるものですが、逆転の発想で、「不起訴」や「執行猶予」を目指すための活動として、弁護士が主導で入口支援を行うことに意味があります。
高齢の被疑者の方の場合、生活の再建のために周囲、特に家族や福祉の方の協力をもらえるかどうかという点が非常に重要になります。
逮捕の理由となってしまった犯罪に応じて、再犯することがないための対策を早期から行っていることによって、検察官や裁判官に対して、処分の軽減や釈放に向けた、積極的な交渉ができる場合もあります。
被疑者や被告人となっている方や、その社会復帰のために支援をしたい、その為の弁護士に相談をしたいという方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
ご本人が逮捕されている場合には、留置先まで弁護士が出張して法律相談を実施する、初回接見サービスを行っています。