高齢の受刑者の方が他の世代と比べて出所後も刑務所に戻ってしまうことが多いこと、その理由である窃盗罪、覚醒剤取締法違反、道路交通法違反という犯罪がどれも類型的に再犯をしてしまいやすいこと、国や法務省としても、再犯しないための入口支援/出口支援を行っています。
ここでは、恒例の受刑者の方が出所後も再犯してしまわないための支援として行われている、出口支援について解説をします。
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国の行っている「出口支援」
65歳以上の高齢の受刑者の方については、仕事をして自立した生活を送るということよりも、地域の一員としてどのように調和して生活を送るか、というが重要になります。
高齢などの理由から働けないのは、出所者であってもそうでない人でも変わりません。
そこで、出口支援としても、生活の場の確保、福祉サービスに繋ぐことが主な事項になります。
住居の確保としては、高齢者の特性に配慮ができる更生保護施設が指定されています。
現在、更生保護施設としては全国に103か所がありますが、このうちの77か所が、高齢者や障がいのある人を積極的に受け入れる施設として指定されています。
これらの施設では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士などの有資格の職員が配置されており、高齢の方の特性に応じて、必要な生活の支援を行うこととされています。
ただ、更生保護施設での保護はあくまで一時的なものになります。法律上は、基本的に6か月以内に施設から出て、新たに生活の場を確保しなければなりません。
そのため、高齢の方の場合、更生保護施設に入所している間に新しい住居を見つけ、さらに、その後の生活での支援者を探しておかなければなりません。
高齢の方の場合、身の回りに頼れる家族や知人がいなければ、日常生活で介護や介助が必要になった時に、一気に生活が苦しくなってしまうからです。
このような生活全般の相談先としては、地域包括支援センターや、地域生活定着センターという機関があります。
生活を安定させるためのこと
若年世代と高齢の方との一番の違いは、働いて所得を得て生活するということが心身的に困難であるということです。
そして、生活が安定しなければ、再犯しないで地域で生活することも困難になってしまいます。そうすると、高齢の受刑者、出所者の方にとって、生活を安定するためにも生計の安定は重要な課題です。
若いころに国民年金や厚生年金に加入していた場合、前科があったり受刑中であったりしても、受給できる年齢になれば納付した年月に応じて年金を受け取ることができます。
65歳以上になってから受刑者となった方の場合、受刑中に振り込まれた年金で、出所後数か月の収入の見通しが立てられることもあります。
年金の受給要件に満たないという場合でも、疾患がある場合には障害者年金を受給できるという場合もあります。
また、年金とは別に、身体/精神障害者手帳や、療育手帳の申請ができる場合もあります。医療費や介護にかかるお金を軽減できたり、公共交通機関の利用の負担が少なくなったりします。
家族や周囲の頼れる人がいること
最後に、高齢の受刑者の出所後支援で最も重要になってくるのは、家族がいるかどうか/周囲に頼れる人がいるかどうか、という点です。
上記のような更生保護施設や地域生活定着支援センターなどは、いずれも行政か、行政から委託を受けた団体が運営しているものです。
出所者の全員が支援の対象者となれるわけではありませんし、極力、そういった支援に頼らないで生活を維持できる方が、本人にとっても負担が少ないでしょう。
安定した住居において、必要な介護、医療を受けることが、再犯しないで地域社会で生活していくことにもつながっていきます。