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仮退院と保護観察
仮退院が認められたとしても、当然ですが完全に自由になれるわけではありません。
あくまで「仮」退院です。
仮退院が認められた場合には、必ず保護観察に付されることになります。
保護観察とは、対象者の改善更生を図ることを目的として、指導監督や補導援護を行うものです。保護観察官や保護司のもとで、定期的に面談を受けたり課題に取り組んだりしながら、再非行防止や改善更生をさらに深めていくことになります。
保護観察の期間は20歳に達するまでです。例外的に、26歳を超えない範囲で延長されることもあります。
保護観察での遵守事項
保護観察では遵守事項が定められ、これを守るように指導監督が行われます。
遵守事項は
- 一般遵守事項
- 特別遵守事項
の2種類があります。
①一般遵守事項
一般遵守事項は保護観察を受けている者全員が共通して守らなければならない事項で、5つの事項があります。
- 再犯や再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること
- 保護観察官や保護司からの呼出しや訪問には応じて面接を受けること。
また、保護観察官や保護司から労働状況や通学状況、収支状況、家庭環境、交友関係その他の生活の実態を示す事実であって指導監督を行うために把握すべきものを明らかにするように求められたときは、これに応じて事実を申告したり資料を提出したりすること - 速やかに住居を定めて、その地を管轄する保護観察所長に届け出ること
- 特別に住居又は宿泊すべき場所を定められた場合や転居の許可を受けた場合以外は、⑶の住居に住むこと
- 転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所長の許可を受けること
②特別遵守事項
特別遵守事項は、個々の対象者の問題性に応じて定められる事項です。
なぜ事件を起こしてしまったのか等によってその内容が異なってきます。また、特別遵守事項は具体的に定めることとされています。
例えば、交友関係に問題があった場合には「共犯者との交際を断ち、今後は接触しないこと」という事項が定められることがあります。
また、生活環境に問題があった場合には「就職活動を行い、又は仕事をすること。深夜の外出はしないこと」という事項が定められることもあります。
その他にも、特別なプログラム(暴力防止プログラムや薬物防止プログラムなど)を受けることを遵守事項とすることもあります。
さらに、社会貢献活動が遵守事項とされることもあります。例えば、公園の清掃や、福祉施設での介護補助活動、ボランティア活動などです。
一般遵守事項も特別遵守事項も、要は「守らなければいけないこと」ですので、遵守事項違反がある場合には、仮退院の取消しなどの不利益な処分を受けることになってしまいます。
これらの遵守事項以外にも、「生活行動指針」というものが定められることもあります。
これは、特別遵守事項では定めることのできない生活の指針や目標的な事項であり、仮退院の取消しといった厳しい制裁の下に義務付ける必要性までは認められないような事項です。
例えば、「遊興や浪費を慎むこと」や「真面目に働くこと」などが規定されることがあります。
保護者に対する措置
仮退院中の生活で気を付けないといけないのは、当該少年だけではありません。
更生保護法には「保護者に対する措置」も規定されており、保護観察所長は、必要があると認めるときは、保護観察に付されている少年の保護者に対し、その少年の監護に関する責任を自覚させ、その改善更生に資するため、指導、助言その他の適当な措置を講ずることができるとされています(更生保護法59条)。
ですので、少年の保護者も、少年の再非行防止や更生のためにできる限りの努力をしていかなければなりません。
良好・不良措置
保護観察の期間は、冒頭でも書いたように原則として20歳になるまでです。
しかし、保護観察の成績が良好であり、保護観察を継続する必要性がないと認められる場合には良好措置が採られます。
仮退院者の場合、保護観察の成績が良好で、概ね6か月が経過しており、保護観察の継続必要性がないと判断された場合には、良好措置として「退院」となります。したがって、正式に少年院を退院したことになるのです。
保護観察所長の申出を受けた地方委員会が決定をします。
一方で、遵守事項違反があったり、保護観察期間中に再犯や再非行をしてしまった場合には、不良措置が採られます。
仮退院者の場合、「戻し収容」と呼ばれ、少年院に戻されます。
保護観察所長の申出により、少年院送致を決定した家庭裁判所に対し、少年院に戻して収容する旨の決定を申請し、家庭裁判所が相当と認めれば、少年院に戻し収容されてしまいます。