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仮退院とは
少年院における仮退院とは、収容期間の満了前に少年の収容を解き、帰住することを認める制度です。
大半の少年が仮退院により出院しており、令和4年版犯罪白書によると、令和3年における少年院の出院者は1567人であり、このうち1560人(99.6%)が仮退院によるものです。
なお、第5種少年院に入院している少年は仮退院制度の適用が除外されているので、仮退院をすることができません。
仮退院手続きの流れ
では、仮退院手続きの流れを見てみましょう。
そもそも、仮退院が認められるためには、原則として、処遇段階が最高段階の1級に達している(新入院者は3級からスタート)ことが必要です(更生保護法41条)。
例外として、1級に達していなくても、「仮に退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるとき」にも仮退院が認められます(更生保護法41条)。
少年の処遇段階が1級に達し、かつ仮退院させることが改善更生のために相当であると認めるときには、少年院長から地方更生保護委員会に対して、仮退院許可の申出をします。この申出に先立ち、少年院では仮退院に向けて生活環境の調整が行われます。
具体的には、帰住予定地の調査や調整などです。仮退院したとしても「帰る先」がなければなりませんし、「帰る先」の環境が整っていなければ再び犯罪に巻き込まれるかもしれません。
帰住予定地の環境調整が整うことが、「改善更生のために相当であると認めるとき」の大きな要素の1つになるでしょう。
②の申出があれば、地方更生保護委員会が仮退院を許可するかどうかの判断をすることになります。
地方更生保護委員会の委員3名が合議体を組み、少年や帰住先などに面接等をしていきます。
また、被害者がいる場合には、被害者又は被害者と一定の関係にある者からも、仮退院に関する意見聴取を行い、被害に関する心情を述べたい旨の申出があったときは、その意見も聴取します(更生保護法38条1項)。
これらの調査や聴取の結果を踏まえ、合議体で評議を行い、仮退院を許すか否かの判断をします。
仮釈放を許す決定をする場合には、退院すべき日や帰住地の指定も行われます。
こうして「仮退院を許す決定」が出された場合は、晴れて仮退院できることになります。
ただし、仮退院が認められたからといって、完全に自由になるわけではありません。
仮退院後は保護観察に付されることになり、保護観察中に遵守事項違反があったり、再非行をしてしまった場合には少年院に戻されてしまうこともあります。
これを「戻し収容」などと呼ぶことがあります。
仮退院運用の実情
仮退院許可の申出に対して、仮退院が許可されない事案は極めて少ないといわれています。
実際に、近年では平成26年や令和2年は仮退院が許可されない事案はありませんでした。
また、令和4年版犯罪白書によると、仮退院者の平均在院期間は、短期義務教育課程又は短期社会適応課程の対象者(=標準的な在院期間が6か月以内とされている矯正教育課程)では147日、これら以外の対象者(=標準的な在院期間が2年以内とされている矯正教育課程)では379日となっています。