このページの目次
仮退院の要件~原則
少年院からの仮退院を目指す場合、「仮退院したい!」という気持ちだけでは仮退院はできません。当然ながら、仮退院が認められるためには、いくつかの要件があります。
まずは、少年院法135条の条文を確認してみましょう。
少年院法135条
少年院の長は、第五種少年院在院者以外の保護処分在院者について、第十六条に規定する処遇の段階が最高段階に達し、仮に退院を許すのが相当であると認めるときは、地方更生保護委員会に対し、仮退院を許すべき旨の申出をしなければならない。
では、1つずつ要件をみていきましょう。
①第五種少年院在院者以外の保護処分在院者について
第五種少年院に入院している少年は仮釈放の対象ではありません。第五種少年院は一定の条件を満たす特定少年(18歳及び19歳の少年)が収容される少年院です。
なので、第一種少年院から第四種少年院に入院していることが、仮退院の前提条件となります。
②第十六条に規定する処遇の段階が最高段階に達し
第十六条に規定する処遇の段階とは、少年院における処遇段階のことです。最初は3級からスタートし、少年院の中で様々な矯正教育課程を受けていきます。
内省の深まりや改善更生の深まりがあれば、成績が向上していき、進級していきます。その処遇段階が最高段階、すなわち1級に到達にしていなければなりません。
③仮に退院を許すのが相当であると認めるとき
最後に、仮退院の相当性が必要となります。
これが最も重要な要件でもあります。
どのような場合に「相当であると認めるとき」に当たるのかはそれぞれの事件内容や少年の特性などによってさまざまでしょう。
ただ、どのような少年であっても必要となってくるのが帰住先の確保になります。仮退院したとしても、「行くあて」がないのであれば仮退院を認めるわけにはいかないでしょう。
帰住先としては家族のもとや、仮退院後に面倒を見てくれる場などが挙げられるでしょう。
家族などの協力が難しい場合には、更生保護施設や自立準備ホーム、児童養護施設なども帰住先として考えられます。この場合は、少年院が施設を探し、保護観察所の調査を経て決定されます。
また、その帰住先がきちんと少年を受け入れる態勢を整えているかも重要です。
例えば家族のもとに返したとしても、両親の監督能力が不十分であったり、また犯罪に巻き込まれてしまうような環境のままだったりするのであれば、仮退院は認められにくいでしょう。
少年だけでなく、帰住先側も仮退院に向けてきちんと準備を進めておかなければならないのです。
さらに、就労先の確保も重要です。
特に、家族の協力が難しく、施設が帰住先になる場合は、ずっとその施設に居続けるわけにはいかないので、自立した生活を送るためには就労先を見つけておくことも大切です。
法務省と厚生労働省の連携により、少年院入院中からハローワークの担当者と面談することができる制度(刑務所出所者等総合的就労支援対策)もあります。
また、近年は「協力雇用主制度」なども充実してきており、少年院にいた経験があったとしても、雇用を受け入れてくれる事業主も増えています。
このような仮退院に向けた準備を「環境調整」と呼んだりします。
少年が二度と犯罪を起こさないように、犯罪に巻き込まれないようにするための環境をきちんと整えておくことがとても重要です。
少年院で本人が更生のために努力しているのと同じように、仮退院を目指すのであれば、受け入れる側も環境調整の努力をしていかなければなりません。
仮退院の要件~例外
仮退院が認められる場合として、例外もあります。
それは少年院法ではなく、更生保護法という法律に規定があります。
では、更生保護法41条の条文を見てみましょう。
更生保護法41条
地方委員会は、保護処分の執行のため少年院に収容されている者(第六十八条の五第一項に規定する収容中の特定保護観察処分少年を除く。第四十六条第一項において同じ。)について、少年院法(平成二十六年法律第五十八号)第十六条に規定する処遇の段階が最高段階に達し、仮に退院させることが改善更生のために相当であると認めるとき、その他仮に退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるときは、決定をもって、仮退院を許すものとする。
ここで重要なのは後半(その他仮に退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるとき)です。
この条文により、処遇段階の最高段階に達していない場合、要するに一級に達していなくても、仮退院が改善更生に「特に必要である」場合には、仮退院が認められることになります。
では、仮退院が改善更生に「特に必要である」場合とはどのような場合でしょうか。
実は「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」というものに規定があります。
犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則30条
法第四十一条に規定する仮に退院させることが改善更生のために特に必要であると認めるときとは、保護処分の執行のため少年院に収容されている者について少年院法第十六条に規定する処遇の段階が最高段階に達していない場合において、その努力により成績が向上し、保護観察に付することが改善更生のために特に必要であると認めるときとする。
これによると、「その努力により成績が向上し、保護観察に付することが改善更生のために特に必要がある」場合ということになります。
処遇段階が一級に達していなくても仮退院を認めるものなので、処遇段階が一級に達していると同視できるほどの努力や環境調整が必要となるでしょう。