仮釈放のための弁護活動

仮釈放と弁護士

仮釈放の手続きについては他のページ(仮釈放仮釈放が認められる場合)でも解説してきました。

では、仮釈放に向けて、弁護士をつけることによってどのような活動ができるのでしょうか。

まずここで注意しておかないといけないのは、仮釈放の申出は刑事施設長、すなわち刑務所長しかできないということです。

仮釈放は、刑務所長が地方更生保護委員会(地方委員会)に対し、仮釈放を許すべき申出をし、地方委員会が調査・合議を行って仮釈放を認めるか否かを決定します(更生保護法34条1項)。

また、例外的に、刑務所長からの申出なくとも、「必要があると認めるとき」は地方委員会が自ら仮釈放の許否の判断を開始します(更生保護法35条1項)。

この場合も、刑務所長に意見を聴くことになります。

なので、受刑者本人やその代理人(弁護士など)、受刑者の家族などは仮釈放を求める権限を有していないのです。

では、「弁護士ができることはない」ということになるのでしょうか。

実はそういうわけでもありません。

仮釈放の申出は刑務所長しかできないということは、仮釈放の申出をするように刑務所長に対して意見書や上申書を提出することが考えられます。

また、地方委員会に対して、「必要があると認めるとき」に該当するので、仮釈放の許否の判断をするように求めて意見書や上申書を提出することが考えられます。

このように、仮釈放でも弁護士にできることはあるのです。

仮釈放に向けての活動

では、具体的にはどのような活動が考えられるでしょうか。

⑴ 事件記録の検討

受刑者本人の刑事裁判を担当した弁護人であれば、事件の内容も詳しく分かっているでしょうから、事件記録の検討は不要かもしれません。

しかし、当時の弁護人とは別の弁護士が仮釈放に向けての弁護活動を行うのであれば、まずは事件記録を検討する必要があります。

判決はもちろんのこと、そもそもどのような事件を起こしてしまったのか、なぜ事件を起こしてしまったのか、法廷で被告人(=受刑者)は何を語ったのか、被害者がいる事件であれば被害者に対して賠償等をしているのか等、検討すべき事項は多岐にわたります。

事件記録は、保管期間内であれば検察庁に閲覧請求をし、認められれば閲覧が可能です。
また、当時の弁護人と連絡を取り、当時のことを聞き取ることも重要でしょう。

⑵ 受刑者本人との面会

仮釈放が認められるためには、「改悛の状」が認められることが必要です。そこで、弁護士としてはまずは受刑者本人と面会し、事件の受け止めや内省の深まりなどを確認することが第一歩の活動となるでしょう。

また、受刑者本人が刑務所で刑務作業や種々の改善プログラムを真摯に受けていなければ、「改悛の状」が認められる可能性は低くなります。

受刑者本人の内省の深まり等を確認するとともに、もし不足があるのであれば、内省を促すことも重要となります。

さらに、仮釈放は受刑者本人の努力だけでは認められない場合もあります。仮釈放後に支援や受け入れをしてくれる人(例えばご家族や就職先など)がいるかどうかも重要な要素になります。こういった人たちを身元引受人と呼んだりします。

そういう人たちがいるかどうか、いるのであればその人たちの連絡先等を聞き取ったり、いないのであれば利用できる制度や仕組みがないかを探し、受刑者に紹介したりすることも必要となるでしょう。

⑶ 身元引受人の確保

次に、⑴でも触れましたが、身元引受人がいるのであれば、その方と連絡を取り、引受体制を整えることが重要です。

帰住地、いわゆる「帰る先」がなければ仮釈放が認められる可能性は低くなってしまいます。

身元引受人や帰住地の確保は仮釈放に向けてとても重要な要素となります。

ただ、単に「私が身元を引き受けます」というだけでは説得力にも欠けるでしょう。そこで、仮釈放後の再犯防止や生活環境の調整、社会復帰に向けた活動などを具体的にどのように行っていくのかを考えておく必要があります。

身元引受人を確保したうえで、どのような取り組みをしていくのかを、弁護士とも相談のうえ、具体的に考えていき、その準備を進めていかなければいけません。

また、頼れる親族など、適切な身元引受人がいない場合には、受刑者の社会復帰を支援している団体等と連絡を取り、仮釈放に向けた施策を具体的に考えていくことも必要となるでしょう。

⑷ 被害者との示談や被害弁償

「改悛の状」の判断要素の1つに、「社会の感情が仮釈放を是認するかどうか」というものがあります。

被害者がいる事件の場合には、仮釈放の判断に際して被害者に意見聴取をすることもあります。

もし、判決確定までに被害者との示談や賠償ができていないのであれば、改めて被害者に連絡を取り、示談や賠償の交渉をすることも考えられます。

ただし、被害者が仮釈放を是認するような態度を示すことは一般的には多くないと考えられます。また、被害者にとっては、また事件のことを掘り返されることにもなってしまいます。

ですので、弁護士から被害者に連絡を取るかどうかは極めて慎重に判断することになるでしょう。

⑸ 書面の提出

これらの活動によって得た情報を「意見書」や「上申書」としてまとめ、刑務所長や地方委員会に提出することになります。

また、ここで挙げたような活動や調査は保護観察官や地方委員会も行っています。

意見書や上申書を提出することにより、保護観察官や地方委員会の調査をスムーズにしたり、保護観察官や地方委員会が見落としがちなポイントに焦点を当てることも可能となります。

このように、仮釈放に向けて弁護士ができる活動はいろいろと考えられます。

また、当然ですがこれらの活動は数日や数週間で完了できるものではありません。仮釈放を目指すのであれば、入念かつ丁寧な準備が必要となります。

関連ページ

keyboard_arrow_up

0120631881 問い合わせバナー LINE予約はこちら