仮釈放

仮釈放とは

仮釈放とは、改悛の状があることを前提に、懲役や禁錮の受刑者が、収容期間(実刑期間)満了前に仮に釈放して更生の機会を与え、その円滑な社会復帰を図ることを目的とした制度のことです。

あくまで「仮の」釈放にすぎないことには注意が必要です。

令和4年版犯罪白書によると、令和3年における仮釈放審理を開始した人員は1万2091人とのことです。

また、令和3年に「仮釈放が許可された人員と不許可の人員の合計」における不許可人員の割合は3.8%とのことです。このことから、多くの場合で仮釈放が認められていることが分かります。

また、同じく令和4年版犯罪白書によると、令和3年における満期釈放者は6963人であるのに対し、仮釈放者は1万830人となっており、仮釈放率は約60%となっています。

出所受刑者人員・仮釈放率の推移

仮釈放手続きの流れ

では、仮釈放手続きの流れを概観してみましょう。

仮釈放のスタートラインに立つ

仮釈放が認められるための条件はこちらのページで解説していますが、まずは仮釈放が認められる形式的条件を満たすことが大前提になります。

具体的には「有期刑についてはその刑期の3分の1を、無期刑については10年を経過していること」(刑法28条)です。

例えば、「懲役6年」の場合であれば、少なくとも2年間が経過しないと仮釈放はできません。

なので、「刑務所に入ってすぐに仮釈放をする」ということはできません。

さらに、形式的要件だけではなく、実質的要件として「改悛の状がある」ことも仮釈放の要件になります。

「改悛の状」が認められるためには、⑴悔悟の情があること、⑵改善更生の意欲があること、⑶再び犯罪をするおそれがないこと、⑷保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めること、が必要とされています。ただし、⑸社会の感情が仮釈放を是認すると認められない場合には、仮釈放が認められません(犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則28条)。

刑務所長による地方更生保護委員会に対する仮釈放許可の申出

刑務所に収容されると、釈放後の生活環境の調査等も並行して開始されます。

受刑者本人との面談だけでなく、家族や身元引受人、就職先等の関係者などからも聞き取り調査を行うようです。家庭環境や出所後の生活環境など、社会復帰後を見据えた調査が行われます。

そして、受刑者が①の要件を満たすと判断された場合には、刑務所長から地方更生保護委員会に対して、仮釈放許可の申出をします(更生保護法34条1項)。

ここで重要なのは、仮釈放許可の申出をするのは刑務所長であり、受刑者本人からの申出はできないということです。

刑務所長からの申出がなくとも、地方更生委員会が必要と認める場合には、仮釈放審理を開始することができるとされていますが(更生保護法35条1項)、そのような例はほとんどないようです。

地方更生保護委員会による審理・評議

②の申出があれば、地方更生保護委員会が仮釈放を許可するかどうかの判断をすることになります。

地方更生保護委員会の委員3名が合議体を組み、受刑者や帰住先などに面接等をしていきます。

また、被害者がいる場合には、被害者又は被害者と一定の関係にある者からも、仮退院に関する意見聴取を行い、被害に関する心情を述べたい旨の申出があったときは、その意見も聴取します(更生保護法38条1項)。

これらの調査や聴取の結果を踏まえ、合議体で評議を行い、仮釈放を許すか否かの判断をします。仮釈放を許す決定をする場合には、釈放すべき日や帰住地の指定も行われます。

仮釈放を許す決定

こうして「仮釈放を許す決定」が出された場合は、晴れて仮釈放できることになります。

ただし、仮釈放が認められたからといって、完全に自由になるわけではありません。

仮釈放後は保護観察に付されることになり、保護観察中に遵守事項違反があったり、再犯をしてしまった場合には仮釈放決定が取り消され、刑務所に戻されてしまうこともあります。

仮釈放運用の実情

冒頭にも書いたように、仮釈放率は約60%となっており、近年は微増の傾向にあるようです。

仮釈放率が50%を切っていた時期もあったようですが、近年では仮釈放は決して高い壁ではなくなってきているようです。

一方で、刑の執行率という問題もあります。

法律上は有期刑の場合は3分の1が経過すれば仮釈放をすることができます。

しかし、実際にはその程度で仮釈放が認められるケースはほとんどなく、8割から9割程度の刑期が過ぎなければ、仮釈放は認められない傾向にあります。

定期刑の仮釈放許可人員の刑の執行率の区分別構成比の推移等

さらに、無期刑の場合には35年前後の刑期が経過しなければ仮釈放は認められないようです。

無期刑仮釈放許可人員の推移

  

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