服役期間中の過ごし方

このページでは、実刑判決を受けてしまい、懲役刑や禁固刑が確定し、実際に受刑者となった場合にどのような生活を送ることになるのかということを解説します。

基本的には規則正しい生活になる

受刑中は、生活を送る上ですべてのことが決められています。

一日のタイムスケジュールは、「日課」として最初から決められています。

朝起きる時間から、三食の食事の時間、入浴の時間、就寝時間が決められているのは当然のこと、さらに細かい時間の決まりがあります。

例えば、朝起きたとしても「○時までは布団から出てはいけない」、「○時○分になったら布団から出て布団を畳まなければいけない」、「○時○分までに布団を畳んで、部屋の中で正座して点呼を待たなければならない」といったように、朝起きるだけでもすべてが決められています。

実刑判決を受けて服役している間、その多くの時間を「刑務作業」をして過ごすことになります。

懲役刑を受けた場合には、刑務作業を行うことが強制されます。

禁固刑を受けた場合だと、刑務作業を行うことは義務ではありませんが、希望すれば刑務作業を行うことができます。実際、禁固刑を受ける人の約8割の人は、進んで刑務作業を希望しているようです。

生き物の本能として「何もしない」というのは、それはそれで苦痛に感じるようで、なにか作業をしている方が気が紛れる、ということもあるのかもしれません。

刑務作業は、刑務所内での各種指導(更生のための教育プログラム)の時間と合わせて、一日8時間までと決められています。これは、日本の労働基準法が、一日の労働時間について原則8時間までと定めていることとの兼ね合いです。

受刑中は、一日のタイムスケジュールがきっちりと決められており、その中には刑務作業の時間が最大8時間として詰め込まれているのです。

刑務作業の中身

刑務作業の中身は、大きく分けて4種類の作業に分類されています。

  • 生産作業
  • 社会貢献作業
  • 職業訓練
  • 自営作業

生産作業とは読んで字の如く、何か物を作る、という作業のことです。
そのほとんどが、第一次産業から第二次産業に該当するものです。

つまり、農業(稲作、穀物、野菜、果物等)や林業、木工や裁縫、金属製品や革製品の製造といったものがあります。これらは、国が一般の販売業者から仕事を請け、刑務所内で生産を行い、販売しているというものです。

地域ごとに「矯正展」と呼ばれる催事があり、刑務所などで作った製品を販売する展示会が開かれていますが、ここで展示されている製品は実際に刑務所内で作成されたものです。木製の日曜家具や、革靴なども作られています。

社会貢献作業は、清掃などの社会奉仕作業を行うと言われていますが、実際に刑務所の外に出て作業をするということはあまりありません。

新型コロナウイルスが流行した当初は、医療従事者が患者に接する際に使用するための、ガウンを作っていたことがあるようです。

職業訓練とは、刑務所を出所したあとの就労を支援するための、技能を身につけるための作業です。溶接や建設作業のような、仕事の経験としての職業訓練や、介護職や自動車整備、理容師のような資格取得のための実習経験も行います。

この職業訓練については、だれでも希望すればできるわけではありません。

当然のことながら、各刑務所でのキャパシティがありますし、そもそも、すべての刑務所に職業訓練のための施設があるわけでもありません。また、受刑中の成績(類)によっても、職業訓練を受けられる人と受けられない人がいます。

自営作業というのは、刑務所そのものを維持するために必要な作業の全般になります。

刑務所というのは、罪を犯した人たちを教育する場であるということもあることから、「自分たちでできることは基本的に自分たちで完結させる」という場になっています。

そのため、掃除や洗濯、炊事も受刑者自身が運営していくことになります。場合によっては、外壁の補修のような作業まで含めて行われます。

また、刑務所内での食事では、生産作業で作られた食品を使って調理をしています。
例えば、札幌刑務所で作られたジャガイモが、他の刑務所での食事のために使われている、といった具合です。

近年では、刑務所内も高齢化していることから、他の高齢の受刑者の生活の介助も、受刑者同士で行うことになっており、これも刑務作業の一つになっています。

これらの作業については、受刑者自身の経歴や向き・不向き、年齢や体力、刑期の長さ、受刑中の態度などを考慮して決められることになります。

また、それぞれの作業には、「等級」のようなものが定められており、A作業からC作業に分かれており、さらに細かくは1〜10等工と分かれています。

A作業は炊事、介助、指導の補助、作業用機械を使った製造作業など知識や経験を必要とする作業、職業訓練が該当します。

C作業は、室内で行う作業が該当します。

B作業は、A作業とC作業以外のものをいいます。

そして、1〜10等工というのは、作業報奨金の基準となる等級のことを言います。数字が小さいほど優秀とされ、作業報奨金も高く設定されています。

A作業の場合には、10〜1等工まで
B作業の場合には、10〜3等工まで
C作業の場合には、10〜5等工まで

と定められています。

つまり、B作業では3等工までしか昇進することはできませんが、A作業に従事するようになれば、2等工や1等工になれる可能性もあるということです。

受刑者となってすぐは10等工から始まりますが、真面目に刑務作業に取り組んでいることで、等が上がっていくことになります。

逆に、作業の態度が悪いと評価されたり、受刑者同士でトラブルを起こすということがあれば、等が下がることもあるでしょう。

こうした刑務作業と併せて、刑務所を出たあとに再犯をしてしまうことがないための指導というものも実施されています。

受刑者全員に向けて実施されるものとしては、一般的な指導や出所前の指導があります。

これに加えて、個別の受刑者に対する指導、特に、服役の理由に応じた特別プログラムが実施されることがあります。

特別プログラムが実施されるのは、薬物依存の場合、暴力団から離脱を求めている場合、性犯罪の場合、被害者のいる犯罪の場合、交通犯罪の場合、就労支援が必要な場合です。

いずれも、希望すれば誰でも受けられるというものではなく、出所見込みまでの期間や、それまでの受刑中の態度などから、受けられる場合があります。

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