刑務所での服役となると,基本的には数か月,数年単位での服役となります。それだけの期間,全く体調を崩さないという人は少ないでしょう。また,刑務所という異質な空間での集団生活にもなりますし,刑務作業によっては慣れない機械作業等もあります。
服役期間中に怪我をしたり病気になってしまったりした場合には,どのような対応を受けることになるのでしょうか。
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受刑中でも診察は受けられる
まず,法律上,服役中の保健衛生については国が責任をもって行うこととされています。そのため,服役に怪我をしたり病気になったりして医療機関を受診する必要が生じた場合には,国(それぞれの刑事施設)が行います。
具体的には,健康診断の実施,各施設にいる医師による診察,外部の医師に診察を受けさせること,これらの診療報酬については国が負担すること等とされています。もしも,服役前までに国民健康保険に入っていなかったという場合や,健康保険料を払っていなかったため保険証を持っていなかったという場合であっても,刑務所内では医療が受けられることになります。
実際に,服役中に風邪を引いたりケガをしたりした場合,その場で医師が診ているという場合でない限りは,まずは施設の看護師か准看護師が対応をすることになっています(被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令10条1項)。最初に診た看護師,准看護師が,医師に対して報告をして,その報告を受けた医師が診察する必要があるかどうかについての判断をします。
医師が診察をした場合には診療録(カルテ)が作られますし,必要な諸検査の実施や,必要な処置,投薬などがなされます。
ただ,刑事施設という場所の性質上,外での診療とは一部違うところがあります。まず,薬の管理についてです。刑務所内でも,基本的には処方された薬については自分で管理することになるのですが,薬の性質や受刑者本人の管理能力によっては,自分で管理することが不適切な場合があります。大量摂取によって自殺を図る恐れがあるとか,高齢であって飲み忘れや飲みすぎになる恐れがある場合等です。そのような場合には,施設の職員が薬を保管します。
また,診察する医師を選ぶことはできません。これも基本的には,各刑事施設で勤めている医師(矯正医官と呼ばれます)が担当することになります。刑務所の外にいる特定の医師による診察を受けることを希望する場合には,その医師を指名して診察を受けることの申請をしなければなりません。この申請をする場合には,服役するよりも前から指名する医師の診察を受けていて,指名した医師の診察を受けることが必要であることを説明しなければなりません。
もしも,服役前から特定の疾病や怪我のことで診察を受けている医師がいるのであれば,刑事施設に収容される前に,その医師から診断書や診療録を受け取っておくことと,刑務所内で診察が必要になった時には往診に来てくれるかどうかの確認をしておいた方が良いでしょう。
その他の保健衛生に関すること
刑務所内での診察の他に,よく聞かれる保健衛生に関する事について解説をします。
市販薬は買えるのか
刑務所内でも,日用品の一部は支給されたり自弁されたりします。ここでいう「日用品」には市販薬は含まれません。刑務所の中でも開放型施設と呼ばれている施設(喜連川社会復帰促進センター,島根あさひ社会復帰促進センター,美祢社会復帰促進センター)では,一般的な市販薬(風邪薬や胃腸薬,抗ヒスタミン薬(花粉症などで処方されることがあります),点鼻薬や点眼薬,湿布など)については,使用が許可されています。
逆に,それ以外の刑事施設においては,これらの市販薬は自弁で購入したり,差し入れたりすることはできません。薬については,医師から処方される物のみを頼りにすることになります。
お風呂について
刑務所では入浴の回数が決まっていて,毎日は入れる訳ではありません。刑務所内で入浴ができるのは,収容の直後に1回,その後は毎週2回(各刑務所によって定めは変わりますが,夏場は回数が増えるところも)とされてます。
入浴については,懲罰を受けて閉居罰を受けている間は週1回に減ってしまいます。
男性の髭剃りについては,入浴時にできます。
散髪について
行動の全てについて決まっている刑務所内では,散髪の時の髪型まで決められています。
男性の場合には,2ミリ程度の丸刈り,16ミリ若しくは5センチ程度のツーブロックのいずれかから選ぶことになります。髪型については完成形の図まで作られており,バリカンを入れるラインまで基準があります。女性の場合には,清楚なものとされていて細かな基準まではありません。
散髪の回数については,男子は1か月に1回程度,女性は必要に応じて(基本的に男性の回数よりやや少ないと思われる)行うとされています。