刑事弁護において、依頼者が実刑判決を受けてしまうこともあります。
実刑判決を受けて収監されるに際して、様々な質問を受けます。
その中でもよく受ける質問が「受刑中に運転免許の更新になったらどうなるんですか?」というものです。
そもそも、運転免許の有効期限は、
- 優良/一般運転者であれば5年
- 違反運転者(違反が複数回ある人、人身事故を起こしてしまった人)/初回更新者であれば3年
です。
この「有効期間」は、厳密には、取得から3回目、もしくは5回目の誕生日を迎えるまでの年数を指します。
普通、運転免許の更新は、住民票のある都道府県の警察署、もしくは免許センターで手続きを行うことになります。
それでは、刑務所内で受刑している期間中に運転免許証の有効期間が到来してしまう場合、どのような手続きをとることになるでしょうか。免許の更新のためであっても、受刑中に刑務所から一時的に外出するということは認められません。
では免許は失効してしまい、また教習上所に通いなおすのでしょうか?
結論から言うと、そうではありません。
免許の有効期限と刑務所からの出所のタイミングに応じて、必要な手続きが変わりますので、それぞれの場合に分けて解説します。
このページの目次
免許の有効期限から6か月以上、3年以内に出所できた場合
免許の有効期限から3年以内であれば、受刑中であったことは「やむを得ない事由」にあたるとして、免許の再取得の際に技能試験と学科試験を免除されます。
この時は適性試験(視力検査、色彩識別検査、聴力)のみで免許を再取得することができます。
この場合、出所してから1か月以内に住民票のある都道府県の公安委員会に免許証の再取得の届出を行います。届出の際には在監証明書(もしくは在所証明書)を合わせて提出しなければなりません。
在監証明書(もしくは在所証明書)は出所した刑務所長にあてて発行を求めることになります。
参考:警視庁HP
やむを得ない理由があり、失効後6か月を超えて3年以内の手続 警視庁 (metro.tokyo.jp)
免許の有効期限から6か月以内に出所できた場合
この場合にも、「やむを得ない事由」があったとして、免許の再取得の際には技能試験と学科試験が免除されます。
免許の再取得を希望する場合には、免許の有効期限から6か月以内に、最寄りの自動車免許試験場に行って手続を行う必要があります。
この場合「出所後1か月以内に手続きをする」という時間制限はありません。ただし,「有効期限から6か月以内」に手続きをする必要があることには注意しましょう。
免許の更新期限から3年以内に出所できない場合
技能試験、学科試験が免除されるのは、有効期間から3年以内に出所した場合です。
免許の有効期間の満了から出所まで3年以上かかる人については、刑務所内で免許の更新ができます。
刑務所内では数年に一度、試験場の職員が免許更新の手続きを行っています。刑務所内での免許更新手続きは自費で行うことになりますが、刑務所内での作業報奨金と比べると更新費用は高額です。
また、刑務所内で更新手続きをした場合、免許証に貼り付ける写真は刑務所内で撮影するものになりますし、免許証に記載される住所は刑務所の住所になります。
刑期が比較的短期の方であれば在監証明書を提出して簡易に免許を再取得することができることになりますが、長期間の懲役刑を受けるという方は、免許を失効した上で出所後に一から取得しなおすか、刑務所内で更新の手続きをとるかを選択することになります。
まとめ
判決が確定し刑期が決まったところで、免許の更新の時期との兼ね合いも分かります。
特に、長期の服役になり、免許の有効期限から3年以内に出所できる見込みが低いという方は、服役期間中に運転免許の更新をすることを考えておかなければなりません。
その際の手続き費用は自費になりますので、事前に用意しておかなければなりません。