服役中の懲罰

刑務所内で服役しているということは、冤罪でない限り、社会内で何かしらの罪を犯してそれを償うために懲役刑や禁固刑を科されているということになります。

そして当然ながら、刑務所内でも厳格なルールがあり、ルールに違反した場合には罰則が科されることになります。

もちろんですが、刑務所内でも法律の規定は及ぶため、人に怪我を負わせれば傷害罪(刑法204条)になりますし、人の物を盗めば窃盗罪(刑法235条)となり、刑務所内の犯罪によって有罪判決を受ければその分刑期が伸びてしまうことになります。

犯罪に至らない場合であっても、「遵守事項」という刑務所内でのルール違反があった場合には懲役刑や罰金刑の様な刑罰を受けないまでも、「懲罰」という刑務所独自の処分を受けてしまう可能性があるのです。

懲罰とは何か

刑務所内での処分と言うと、「刑務官が気に入らない囚人をいじめる/目の敵にする」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはそういったものではなく、刑事施設収容法に根拠があります。

懲罰は、収容されている人(懲役刑や禁固刑で服役している人、労役場留置となった人、逮捕・勾留されている人も含む)が、刑事施設の中で「遵守事項」に違反した場合(反則行為と言われます)に課す、とされています。

具体的に遵守事項と言うのは、次のようなものがあります(刑事施設収容法74条2項1~11号)

  1. 犯罪行為をしてはならない
  2. 他人に対して乱暴な言動をしたり、迷惑をかけたりするような行為をしてはならない
  3. 自分自身を傷つけてはいけない
  4. 刑事施設の職員の職務を妨害してはいけない
  5. 自分や他の収容者の収容の確保を妨害するおそれのある行為をしてはならない
  6. 刑事施設の安全を害するおそれのある行為をしてはいけない
  7. 刑事施設内の衛生環境や風紀を害する行為をしてはいけない
  8. 金品を不正に使用、所持、授受などしてはいけない
  9. 正当な理由なく刑務作業を拒んだり、更生のための指導を拒んだりしてはいけない
  10. その他施設ごとに定められた事項を守ること
  11. これらの遵守事項に違反することを企て、あおり、そそのかし、又は援助してはいけない

これらの他に、刑務所の外に出て刑務作業に従事する場合には、刑務所の外でのルールとして特別遵守事項、例えば、刑務所と作業所とを移動する間のルールに違反が定められることもあり、これに違反した場合にも懲罰の対象となりうることがあります。

このような遵守事項は、刑事施設に収容される時に、最初に告知されることとなっています(刑事施設収容法33条1項)。

そのため、最初に言われたルールを守っていないとなると、ある種の「お仕置き」として懲罰を科されることになります。

懲罰を受けると何が良くないのか

懲罰とは、刑務所内でのルール違反ですから、直ちに犯罪となるわけではありません。

懲罰は前科と違いますし、裁判所が言い渡す判決でもありませんから、懲罰を受けたことで「刑期が長くなる」というものでもありません。

しかし、懲罰を受けるということは、単なる「お説教をされた」と言うこと以上に、刑務所内での生活にとって、とても大きなダメージになります。

①優遇区分が大きく下がる

懲罰を受けることで一番影響が出るのが、類です。

刑務所内では受刑者ごとに1~5類の等級のようなものがあり、第1類は、いわば「模範囚」のようなもので、刑務所内での行動制限が大きく緩和されます。逆に、第5類になると、行動制限が緩和されず自由に対して強い制約がかけられることになります。

刑務所内での自由度を左右する「類」ですが、どのように決まるかと言うと、刑務所内での態度によって変わります(刑務所に入ってから6か月の間は、懲罰などを受けない限りは「3類」のままです)。

類は、加点・減点方式の計算で産出された得点に応じて変わります。

  • 加点要素+5~1点刑務所内での生活態度や作業への取り組み、指導への取り組み、刑務所内での資格の取得によって加点
  • 減点要素-10~-1点懲罰を受けた場合に-(2~10)点、作業や生活態度が数か月連続して悪いと-(1~3)点

このように、加点要素は数字が小さいのですが、懲罰を受けてしまうと一気に-10点にまでなってしまいます。

ちなみに、類は次のように決まります。

  1類 2類 3類 4類 5類
点数 12点以上 6~11点 0~5点 -(1~4)点 -5点以下

懲罰の内容によっては、一気に類が最低の5類にまで落ちてしまうことになるのです。

そして、刑務所内での類が下がると、次のような影響が出ます。

  • 面会や手紙の回数が減る
  • 自弁物品や書籍を購入できる回数が減る
  • 自弁物品で使える日用品の種類が減る
  • 刑務作業の等級が下がって作業報奨金が減る
  • 刑務所内で資格取得のための作業を受けられなくなる、再犯防止のための特別プログラムを受けにくくなる

②仮釈放が遠のく

刑務所で服役している人にとって、一番の関心ごとは、仮釈放されるのかどうか、と言う点にあるでしょう。

仮釈放が認められるかどうかは、裁判で言い渡された刑期全体の内どの程度を勤めたかというパーセンテージに加えて、刑務所内での生活状況が考慮されます(刑法28条、31条)。

当然のことながら、刑務所内で「懲罰を受けた」というのは、刑務所内での生活状況が不良であるということを示すものですから、仮釈放すべきではない、と言う事情になってしまうのです。

懲罰によって刑期そのものは伸びないものの、仮釈放されるまでの期間が長くなってしまうということは、実際に服役している人にとっては非常に大きなダメージとなるでしょう。

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