有罪の判決を受けて、何かしらの刑罰が確定すると、「前科」として記録されることになります。
この前科は刑を言い渡した判決が確定(控訴や上告などによって変更される可能性がなくなること)することによって記録されます。
当然のことながら、実刑判決を受けて服役することになれば、前科がつくことになります。
このように前科がついたことや、刑務所での服役をする/したことについて、他人に知られるのではないか、特に、戸籍や住民票などに前科のことが書かれるのではないかという疑問について解説をします。
服役と戸籍
まず、刑務所に服役したことについて、原則としては戸籍に記載されることはありません。
戸籍とは、簡単に言うと、日本国籍を持っている人が、どこで生まれて、どこで生活していて、どこで亡くなったのか、生きている間にどのような家族を構成したのか、ということを記録するものです。
戸籍にはそもそも、住所や家族関係の変動に関すること以外に、記載をする欄はありません。
そのため、前科がついたことや刑務所で服役をしているということは、戸籍に記載されるわけではありません。
たまに心配性な方の中には、「前科がついてしまうと、将来、結婚相手やその家族に戸籍を見られた時に、前科のことがばれてしまうのではないか」と質問される方がいますが、基本的にはそのようなことはありません。
戸籍を見ただけで前科があるのか、どんな犯罪での前科なのか、ということは分からないのです。
服役中の住所について
ただ、例外的に、前科のこと、特に、服役歴のことが分かってしまうという場合があります。
それは、服役中の住所として、刑務所の住所で住民登録されてしまった場合です。
刑務所に服役をしたとしても、日本国籍を失うわけではありませんから、戸籍は、きちんと残り続けます。
また、本籍地は、本人が届け出をしない限りは変わらないため、刑務所で服役している間も本籍地は変わりません。
ただし、「住所」は変わってしまう場合があります。
というのも、長期間、住民票の住所に住んでいないことがわかると、市区町村が、住民登録を職権で消除してしまうことがあります。自分たち独自の判断で、登録を抹消してしまうということです。
戸籍は日本国籍である限りは永続するものですが、住民登録の場合には「どこに住んでいるのか」を表すだけの登録であるため、実際に住んでいないことが分かれば消除することもあるのです。
長期間の服役によって住民登録が消除されてしまった後に、行政の援助を受けようと思うと、改めて住民登録をしなければなりません。
この時、刑務所で服役中だったとすると、住所が刑務所の所在地となってしまうのです。
ただし、住民登録されるのは番地までになりますから、「○○刑務所」とまでは書かれません。
このようにして、住民登録上の住所が、刑務所の所在地と同じになってしまうと、服役歴がばれてしまうかもしれません。
そもそも、「服役中に住民票が亡くなってしまう」と言う可能性を知らない人がほとんどなのではないでしょうか。
もしもこれから実刑判決が確定して刑務所へ行くことになる、家族や知人が刑務所に収容されているという方は、事前に一度、服役中に住民票が抹消されてしまった場合にはどうするか、という点について確認しておいた方が良いかもしれません。
なお、住民票が削除されたとしても、出所するまでは困らないという方の場合には、出所後の帰住先を住所として住民登録をすることで事足りるでしょう。
問題なのは、長期間の刑期があって、収容中にも市役所などの職員との面談や行政の支援を受ける可能性が高い、と言う場合でしょう。