懲罰手続きの流れ

刑務所内での規則に違反した場合には、戒告から閉居罰まで種類がある、懲罰、という刑務所独自の処分を受ける事になってしまいます。

ただし、この懲罰が刑務官の独断や偏見によって実行されてしまうと、刑務所内で多大な人権侵害が横行してしまうことになります。

そのため、平成中期に「監獄法」と呼ばれていた法律が「刑事施設収容法」として改正され、刑務所内での懲罰についても、刑事裁判の様に「調査」→「事実認定」→「処分」といった適正な手続きを取るように整備がなされました。

懲罰が執行されるまでの流れ

懲罰がなされるまでの手続きは、大まかには次のようになります。

  • 反則事実(刑務所内でのルール違反)の疑いが生じる
  • 刑務所内において「調査」が実施される
    (調査の過程で、最長4週間、他の受刑者から隔離される)
  • 懲罰審査会による弁解の聴取
  • 懲罰の有無/その種類を決定する

反則事実の調査の手続き

刑務所内での懲罰手続きも、ある種の「罰」ですから、その前提となる調査では間違いがあってはありません。

そのため、懲罰をするかどうかについて、刑事事件における「捜査」にあたる、調査がなされます。この調査は、警察官ではなく刑務所内の警務官が行います。

この調査は、こっそりとおこなわれるのではなく、容疑者に対して「あなたに対して調査を行います」と、はっきりと告知をして行われます。

具体的には、反則行為をしたと疑われている容疑者や関係人(目撃者や被害者など)などから事情聴取をして、刑務所内での記録の確認、身体検査、所持品検査、居室の検査を行うことになります。

この調査を行うために、容疑者を他の収容者から隔離することがあります。刑事事件でいうところの逮捕、勾留に似た意味合いを持ちます。

隔離と言っても、同じ刑務所内で別の単独の部屋に移されるということです。隔離できる期間は、通常だと2週間、延長したとしても最大4週間とされています。

隔離の間は、他の受刑者との接触を禁止されるというだけですので、その他の生活状況は隔離前と変わらないことになります。

懲罰審査会による手続き

刑務所内での調査が終わったら、懲罰審査委員会による審査の手続きが行われます。

懲罰審査会とは、刑務所の職員5人以上で組織される委員会で、調査の結果を踏まえて容疑者からの言い分を聞いて、懲罰内容などを決定するものです。ちょうど、刑事裁判での裁判官のような立場になります。

反則事実について調査を受けた後、容疑者の人は懲罰審査会で弁解の聴取を受けます。自分自身の言い分を聞かれるわけです。

この時、自分一人で対応するのではなく、補佐人という、弁護人のような立場の人も就任します。補佐人は、反則事実を疑われた受刑者の立場に立って、意見を述べます。

補佐人は、刑務所内でも副看守長と同じかそれ以上の階級の人が就任することになっています。

あまりにも階級が低い人が補佐人として選ばれたとしても、階級が上の立場にある懲罰審査会に対して「この受刑者に対しては温情的な処分としてください」とは強く言えなくなってしまうからです。

刑務所の懲罰手続きについては、全て刑務所内で行うことになるため、ある意味、裁判官も検察官も弁護人も、全て刑務所内の刑務官が務めることになります。

当然、刑務官同士での階級の差もありますから、その差によって懲罰が行われることになっては困るのです。

容疑者に対する懲罰の調査が開始されてから、実際に懲罰の決定出るまでは、基本的に2週間以内とされています。

隔離をできる期間も通常は2週間とされているので、その間に懲罰に関する手続きを最後まで終わらせるようにするということです。

刑務所内での懲罰は、特に「閉居罰」のように刑務所内でも自由を奪うというものもあり、ある意味、裁判で言い渡される刑罰と同じようなものです。

その懲罰は、調査から執行の手続きまでに、一切間違いがあってはならないものなのです。そのため、刑務所内で「捜査」や「裁判」のような手続きが採られることになるのです。

この懲罰手続きについて、事実の誤認がある(反則事実が間違っている)場合や、懲罰の処分が重すぎるという場合には、その刑務所を管轄している矯正管区(札幌矯正管区、仙台矯正管区、東京矯正管区、名古屋矯正管区、大阪矯正管区、広島矯正管区、高松矯正管区、福岡矯正管区)の長に対して、書面で審査を求めることができます。

控訴の申し立てのようなものです。

審査を申し出る場合、懲罰があった日から30日以内に申し出をしなければなりません。

書面で審査の申し出があったら、調査を行い、原則として90日以内に裁決といって、審査結果を出すように求められています。

懲罰結果に対する不服の申し立てがあった場合、その懲罰をした手続きが間違っていなかったのか、懲罰の内容が重すぎるものになっていないかと言う点の審査がなされます。

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