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刑法改正に伴って導入された拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します⑥
1 はじめに
今回の記事では拘禁刑の導入に伴って生じ得る刑務所の管理運営体制の変化について2回に分けて解説させていただきます。
拘禁刑の導入により、刑務所の管理運営体制にも変化が生じます。
具体的には①刑務所内の組織編成や役割分担の変化や②刑務官の役割や目的意識の変化が生じることが予定されています。
2 刑務所内の組織編成や役割分担の変化について
まず、受刑者処遇の個別化に対応するために、刑務所内の組織編成や職員の役割分担が見直されています。
法務省は「矯正改革推進プロジェクト」の中で、拘禁刑の施行を見据え、刑務官(看守)と教育・心理・福祉の専門職員がチームを組んで処遇を行う『チーム処遇』の確立を進める方針を示しました。
従来、刑務官は主に保安警備や規律維持を担当し、教師やカウンセラーが別途指導を行う形でしたが、今後は複数の職種が一丸となって受刑者の改善更生を支援する体制に移行します。
例えば、あるモデル事業では刑務官、法務教官(教育専門官)、心理技官、福祉専門官(社会福祉士)、作業療法士、看護師といった多職種チームを編成し、受刑者ごとに処遇・支援計画を策定して定期的に見直す取り組みが行われています。
これにより、拘禁刑下では受刑者の問題状況を多角的に把握し、適切な処遇プログラムを提供できるようになると期待されています。
3 刑務官の役割や目的意識の変化
刑務官の役割も大きく意識転換が求められます。従来は規律違反の取り締まりや作業の監督が中心でしたが、これからは受刑者の良き指導者・支援者としての側面が重視されます。
チーム処遇の一員として、刑務官も受刑者の更生プランの策定や面談に関わり、日常生活全般の指導を行います。そのための研修強化や人員配置の見直しも進められています。
人権意識の向上やコミュニケーション技能の研修はもちろん、専門職との連携を円滑にするための体制整備が行われています。
一方で、保安担当と処遇担当を分離すべきとの意見もあり(過去の刑務所職員による暴行事件の反省から)、現場では模索が続いています。
いずれにせよ、刑務官が単に管理する存在から、更生を支援するパートナーへと役割がシフトしていく流れは確実であり、その意識改革が刑務所運営の鍵を握るでしょう。
しかし、当然ながら、多様な処遇プログラムの実施や刑務官の役割が変化することに伴って、必要な人材の確保や専門性の確立、十分な施設環境の整備が間に合うかという課題も指摘されています。
そこで次回の記事では、拘禁刑導入に伴う施設環境の改善や、予想される現場の負担とその対応についてさらに詳しく解説していきます。
あいち刑事事件総合法律事務所では拘禁刑が導入される前から、刑罰を受けた方の立ち直りの支援、再犯を防止して真の更生を図ることに力を入れてきました。今後も事件を起こされた方の更生支援、再犯防止に全力を注いでいきます。更生支援や再犯防止、早期の仮釈放に向けた支援に興味のある方は自費こちらからお問い合わせください。相談は初回無料で対応させていただきます。
刑法改正に伴って導入された拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します⑤
今回の記事では拘禁刑が導入されるのと同時に改正された再度の執行猶予制度を中心に刑務所外での再犯防止策について解説します。
1 刑務所外での再犯防止策の強化
さらに、刑務所の外における再犯防止策も拡大しています。今回の刑法改正では、再犯者に対する執行猶予制度が見直され、裁判所が再度の執行猶予(いわゆる「刑の二回猶予」)を付与できる範囲が拡大されました。
改正前は「1年以下の懲役・禁錮」の場合にしか再度の執行猶予は認められませんでしたが、改正後は言い渡し刑期が「2年以下の拘禁刑」まで再度猶予可能となっています。
また、保護観察付き執行猶予中に罪を犯した場合でも状況によっては再度の執行猶予を付すことが可能になりました。
この改正により、以前であれば再度の執行猶予を付けることが法律上できなかったケースでも再度の執行猶予を選択することが可能になっています。
法改正によって再度の執行猶予を付すことができる事例が拡大すれば、そのケースの被告人に引き続き社会内で更生の機会を与え、継続的な指導監督下に置くことができます。
言い換えれば、犯罪を繰り返した者でも直ちに刑務所に送るのではなく、社会内処遇のチャンスをもう一度与えて更生を促す道が広がったとも評価できるのです。
これは受刑者数の削減だけでなく、地域における再犯防止策(就労支援やカウンセリング)の継続という観点でも意義が大きい法律改正であるといえます。
*ただし実際に再度の執行猶予が付与される率が高まるかは今後の裁判例等の動向を見守る必要があるといえますので楽観はできません。
このように、拘禁刑の導入を契機として「矯正」と「更生保護」の両面から再犯防止策が強化されています。
専門家は、再犯を防ぐには刑務所内での教育矯正のみならず、社会復帰後の居場所・仕事の確保や地域の受け入れ体制が不可欠だと指摘しています。
実際、出所者の再犯率は、出所後2年以内が高く、この期間に安定した職と住居がないことが再犯リスクを大きく高めるとされています。
こうした知見を踏まえ、法改正と並行して政府は「再犯防止推進計画」を策定し、関係省庁・地方自治体・民間団体が連携して出所者の社会復帰を支える総合的対策を進めています。拘禁刑で培った更生の成果を社会内で継続させ、二度と犯罪に戻らないようにする仕組みを社会全体で構築していくことが課題となっています。
2 弁護士による再犯防止策のサポートについて
あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件の弁護活動のみならず、事件終了後の当事者の方の再犯防止や更生支援の活動にも力を入れています。
具体的には、事件の原因となった不良交友関係の断絶のための定期的な面談やアドバイス、被害者側に立って事件を振り返るための課題の実施、具体的な再犯防止策の策定のサポートなど、弁護士が関わり再犯防止に向けた積極的な活動を行っています。
活動内容に興味を持たれた方は、こちらの見守り弁護士・ホームロイヤーのご案内も読んでみてください。
事件後の更生支援や再犯防止に関して心配事がある方は是非こちらからお問い合わせください。再犯防止や更生支援の活動について豊富な経験を持つ弁護士が初回無料で相談に対応させていただきます。
刑法改正に伴って導入される拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します④
今回からは2回の記事に分けて拘禁刑の導入に伴って行われる再犯防止のための施策について解説していきます。今回は刑務所内での再犯防止策の強化について、次回は刑務所外での再犯防止策の強化について紹介、解説していきます。
1 刑務所内での再犯防止策の強化について
再犯防止の強化は、拘禁刑導入の最大の目的の一つです。刑罰には本来「応報」(犯した罪への報い)と「予防」(将来の犯罪抑止)という二面性がありますが、今回の改正では特に特別予防(その人の再犯を防ぐこと)に重点が置かれました。
すなわち、刑務所内で受刑者本人に働きかけることで再犯を防止しようという考え方が色濃く反映されています。
拘禁刑では受刑者の特性に応じて柔軟に処遇できるようになるため、従来よりも効果的な矯正プログラムの実施が可能になります。法務省も「刑罰の目的として再犯防止がいっそう重視されるようになった」と説明しており、再犯防止への軸足を明確にしています。
2 拘禁刑導入に伴う受刑者の処遇プログラムの変化
(1)処遇課程の分類の変化
具体的な再犯防止策として、受刑者の処遇プログラムの充実と多様化が挙げられます。法務省は拘禁刑導入に向け、現在の受刑者分類方法を見直し、24種類もの新たな矯正処遇課程を設ける方針を打ち出しました。
これまで刑務所では「犯罪傾向の進度」(初犯・累犯など犯罪歴にもとづく分類)によって収容先や処遇を決めていましたが、これだと高齢の窃盗常習者と暴力団関係者が同じ処遇群になるなど、背景の異なる者に画一的対応をせざるを得ない問題がありました。
そこで今後はそのような手法を廃止し、受刑者一人ひとりの資質・事情(犯行動機や抱える問題、年齢や障害の有無等)に着目して分類する「オーダーメイド型」の処遇へ転換します。
例えば、知的障害・精神疾患を抱える人向けの「福祉支援課程」、薬物・ギャンブル依存の人向けの「依存症回復課程」、若年層向けの「若年課程」などが用意され、受刑者ごとに最適なプログラムを受けられるようになる見込みです。
こうした細やかな処遇により、それぞれの受刑者が再犯に至った原因(貧困、依存症、学歴・技能不足、人間関係の問題など)を的確に改善していくことが期待されています。
(2)専門的矯正プログラムの拡充
また、専門的な矯正プログラムの拡充も図られています。性犯罪者に対する再犯防止プログラム、暴力団離脱支援プログラム、DV加害者更生プログラムなど、従来から一部実施されていた専門プログラムを発展させ、対象者には集中的に受講させる方針です。
たとえば性犯罪を犯した受刑者には、刑務所内の「性犯罪再犯防止指導」と保護観察所の「性犯罪者処遇プログラム」を連動させるなど、施設内処遇と社会内処遇の継続性を持たせる取り組みも進められています。
薬物犯罪者についても刑務所での薬物離脱指導と出所後の薬物リハビリ支援を一貫して行う仕組みづくりが検討されています。
これらのプログラムは科学的知見に基づき開発・改善されており、再犯防止に一定の効果を上げているとの報告もあります。
次回は引き続き、刑務所外での再犯防止策の強化について解説させていただきます。
刑法改正に伴って導入される拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します③
今回の記事では拘禁刑の導入に伴って、仮釈放や社会復帰のための支援体制がどのように変化していくのかについて解説させていただきます。
1 仮釈放判断に与える影響
拘禁刑の導入は、受刑者の仮釈放や出所後支援にも間接的な影響を及ぼすと考えられます。
法制度上、仮釈放(仮出所)の要件そのもの(有期刑は原則3分の1経過後等)は従来と変わりません。
しかし処遇重視の方針により、更生プログラムへの取り組み状況や改善の度合いが仮釈放審査で重視される可能性があります。拘禁刑導入後の新制度では受刑者ごとの改善計画が立てられるため、例えば「与えられた職業訓練を修了した」「教育課程で一定の成果を上げた」等の記録が、仮釈放を判断する材料となる可能性があります
受刑者にとっては、早期の社会復帰を目指す上で刑務所内プログラムへの積極的参加が一層重要になるでしょう。
2 出所後の社会復帰支援に与える影響について
また、出所後の社会復帰支援策も強化されています。具体的には以下の通りです。
(1)就労支援
法務省と厚生労働省は2006年度から「刑務所出所者等総合的就労支援対策」を実施しており、ハローワーク(公共職業安定所)に専用窓口を設置する、協力雇用主(受刑者を雇用する企業)の開拓、職場体験講習やセミナー開催、トライアル雇用助成金の支給など、出所者の就労を包括的に支援する施策を展開しています(https://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/08/h0829-2.html)。
刑事施設や保護観察所とハローワークが連携し、受刑中から職業相談・職業紹介や就労支援プログラムを実施することで、出所時にスムーズに職探しができる体制を整えています。
改正後は、こうした取り組みをより一層充実させる方針が示されています。
(2)教育支援
教育支援の強化も重要な柱です。若年層の受刑者(おおむね26歳未満)については、出所後の社会復帰に役立てるため学力向上や就労技術習得を促す教育プログラムが拡充されています。
具体的には、中卒・高卒程度の学力しかない受刑者に対し、高卒認定試験の学習支援や職業資格取得のための講座が提供されるケースもあります。改正後の拘禁刑では、「教科指導」(学科教育)や「職業訓練」の時間を個々の事情に応じて十分に確保し、受刑中に基礎学力や技能を身につけさせることに重点が置かれます。これにより、出所者が社会で職に就き自立しやすくなるよう支援が強化されます。
(3)最新技術を利用した就労支援
さらに、官民の連携による新しい試みも始まっています。
例えば日本財団と法務省の協働プロジェクトでは、受刑者の職業訓練にVR(バーチャルリアリティ)技術を活用する取り組みが国内で初めて行われました(https://seijiyama.jp/article/news/nws-si20240319.html)。
2024年3月には栃木県の喜連川社会復帰促進センターにて、介護業等の企業が協力し、受刑者に対してVR上での職業体験を実施しています(https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/866395)。これはメタバース空間での企業説明会に続く画期的な試みであり、IT技術を使った実践的な就労支援として注目されました。
このように、従来は難しかった多様な業種の体験や実習を受刑中に提供し、出所後のミスマッチを減らそうという動きが広がっています。
(4)出所後の指導監督体制
出所後のフォロー体制も改善が図られています。保護観察所による指導監督に加え、NPOや自治体とも連携して、住居の確保や生活相談に応じる仕組みが整いつつあります。
例えばあるNPO法人では、出所者の住居支援、居場所づくり、就労支援などを包括的にサポートしており、福祉サービスへの橋渡し役を担っています。
また全国各地で「地域生活定着支援センター」が設置され、高齢・障害のある出所者を地域で支える仕組みも強化されています。拘禁刑の理念である「改善更生」を確実に社会復帰に繋げるために、出所前後の切れ目ない支援が拡充されているのです(https://www.kurashi-o-en.org/teichaku)。
以上のように拘禁刑の導入に伴って、仮釈放の判断において重視されることが変化することやさらに出所後の社会復帰支援が充実することが予想されています。
あいち刑事事件総合法律事務所でも、弁護士が事件を起こした方の再犯防止や真の更生に向けて取り組む更生支援プログラムに力を入れています。
興味のある方はこちらのお問い合わせからご連絡ください。弁護士が初回無料で相談させていただきます。
刑法改正に伴って導入される拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します②
それでは前回の記事の導入に引き続き、今回の記事より拘禁刑の内容についてより解説していきます。
1 受刑者の処遇の変化
懲役刑・禁錮刑から拘禁刑への一本化により、受刑者の生活と処遇内容が柔軟化します。
従来、懲役受刑者にはいわゆる刑務作業が義務づけられ、禁錮受刑者は刑務作業が任意でした。
しかし拘禁刑では、受刑者ごとに作業を行わせるか否かを決定し、その人の特性に応じた指導やプログラムを実施する仕組みに変わります。
つまり、全受刑者に一律で労役を課すのではなく、個々の受刑者に必要な作業または指導を組み合わせて行うことが可能になります。
2 処遇内容の見直し
この変更に伴い、刑務所内での過ごし方やプログラム内容も見直されます。刑務作業と矯正指導(改善指導や教科指導など)を合わせた時間は、従来同様に原則1日8時間以内とされています。
ただし作業が免除・軽減された受刑者には、その時間を利用して更生プログラム(矯正教育やカウンセリング等)に充てることが予定されています。
実際に国会での審議を見ても、多くの受刑者に対し、作業と各種指導をバランス良く組み合わせる処遇が行われると想定されています。
例えば、知的・精神障害のある受刑者には福祉的支援プログラムを、薬物依存の受刑者には依存症克服プログラムを優先するなど、個別最適化された内容が組まれることになります。
3 拘禁刑に一本化された趣旨と背景
処遇方針の面でも、刑罰の目的が「懲らしめ」から「改善更生」へと転換されます。懲役刑における作業は本来「懲らしめ(応報)」の意味合いが強いものでしたが、近年は職業訓練や各種指導も取り入れられていました。
拘禁刑の創設によってこの流れを一層進め、「作業」も受刑者の改善更生・社会復帰のための措置という位置付けであると理解できます。
そのため処遇の運用においては、これまで以上に受刑者の自発性・自主性を高め、前向きな参加を促すことが求められます。
受刑者に課されるプログラムも罰というより矯正教育の要素が強くなり、受刑者自身が更生に取り組む機会が増えると考えられています。
また、背景として、懲役と禁錮の区別は既に形骸化していました。2022年時点で新受刑者の99.7%が懲役刑で、禁錮刑はわずか0.3%(44人)しか言い渡されていませんでした。そして、令和5年3月末時点で、禁錮受刑者の約86.5%は任意で作業に従事していたという実態がありました。このように両刑の実質的な差異が乏しいことも一本化の理由の一つでした。
一本化後は名称が変わるだけでなく、「全ての受刑者に必ず作業が課されるわけではない」と法律上明確にすることで、処遇内容を受刑者ごとに柔軟に調整できるようにした点に意義があります。
この柔軟な処遇を可能にすることで、受刑者の更生により効果的な環境を整える狙いです。
あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件の弁護活動のみならず刑事処分や判決が出た後の更生に向けた活動にも力を入れています。
このことは懲らしめより改善更生に重きを置いた今回の刑法改正の趣旨とも合致するものです。
当事者の方の更生に向けて見守り弁護士(ホームロイヤー)の活動を準備しています。拘禁刑の導入を機に更生に向けて関心のなる方は是非一度ご相談ください。
少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑩
【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。
AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
ここまでの記事では、少年事件における児童相談所の役割について個別に解説してきました。
今回の記事では、ここまでの解説を簡単にまとめたうえで、Aさんの場合に照らしてみていきます。
2 家庭裁判所に送致されるまで
ここまで解説してきたように、触法少年の場合は、まずは警察が捜査ではなく調査を行い、送致や通告という方法を通じて、児童相談所に送ることになります。
そして、児童相談所としても調査をしたうえで、まずは児童相談所が触法少年にどのような措置を講じるのかを判断することになります。
このように、家庭裁判所に先行して、第一次的には児童相談所が判断するというのが触法事件の大きな特徴の1つです。
Aさんの場合も、このようにまずは警察の調査を受け、その後、(場合によっては一時保護されながら)児童相談所の調査を受け、その結果、家庭裁判所に送致されたということになります。
3 家庭裁判所に送致されてから
そして、家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所の調査官などから調査を受け、その結果をもとに少年審判が開かれることになります。
この点もこれまでに解説してきましたが、その少年審判の結果、いくつかある処分の中に児童相談所長に送致するという処分があります。
その後、家庭裁判所から送致を受けた児童相談所長は、触法少年に対して福祉的な措置が取られることになります。
この福祉的な措置としては、児童福祉司などに指導させるという措置か、児童養護施設や児童自立支援施設等に入所させるなどという措置となる可能性が高いといえます。
このように、最終的な福祉的な措置を行うということも児童相談所の大きな役割の1つといえます。
Aさんの場合も、児童相談所から家庭裁判所に送致された後、(場合によっては観護措置が取られながら)家庭裁判所の調査官などから調査を受け、そのうえで少年審判が開かれ、児童相談所長に送致するという処分となったということになります。
今後は、児童福祉司などに指導させるという措置か、児童養護施設や児童自立支援施設等に入所させるなどという措置となることが予想されます。
4 最後に
このように、少年事件においても、家庭裁判所や少年鑑別所だけではなく、児童相談所も大きな役割を担っています。
特に触法事件の場合は役割が大きく、通常の少年事件とも異なる点があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。相談をご希望の方はこちらからお問い合わせください。
少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑧
【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。
AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の手続きの流れに関連して、児童相談所長への送致と通告の違いについて解説してきました。
今回の記事でも、引き続き触法事件の手続きの流れについて解説していきます。
2 触法事件と身体拘束
⑴ 触法事件と逮捕・勾留
以前の記事で、触法調査で警察官ができることとできないことについて解説をしてきました。
その中で、「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合と違って、触法事件では逮捕や勾留といった身体拘束手続きをとることができないと解説してきました。
しかし、触法事件の調査が1日で終わるとは限りません。
その一方で、特に重大事件である場合など、調査の間に触法少年を自宅に帰らせるのには問題がある場合も考えられます。
そのような場合には、一時保護という制度が利用されています。
⑵ 一時保護とは
一時保護とは、「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため」に必要があると児童相談所長が考えた場合に、一時保護所などに入所させる処分です(児童福祉法33条1項)。
この処分をとるのに、児童本人や保護者の同意は必要ないと考えられます。
また、一時保護の期間は、原則として2か月とされています(児童福祉法33条3項)。
例外的に、必要があればそれよりも長い期間にわたって一時保護することもできますが(児童福祉法33条4項)、その場合には、基本的に、親権者や未成年後見人の同意を得るか、家庭裁判所の承認を受けるかする必要があります(児童福祉法33条5項前段)。
ちなみに、一時保護に保護者の同意が必要ないとされているのは、延長の場合には親権者等の同意に関する規定(児童福祉法33条5項)があるのに、延長前の一時保護にはそのような規定がないことから読み取れます。
⑶ 一時保護を利用する場合の問題点
今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の流れ、特に一時保護について解説してきました。
しかし、ここで問題となるのは、あくまで一時保護は、警察の権限ではなく、児童相談所長の権限でとれる手段だという点です。
次回の記事では、この問題から解説をしていきます。
あいち刑事事件総合法律事務所では突然児童相談所から一時保護された方の弁護活動・付添人活動についても豊富な経験があります。突然の一時保護により今後ご家族がどうなっていくの不安な方は税以下のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
その他にも弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑥
【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。
AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、児童相談所が役割を担うのは触法事件であること、そして、その触法事件とはどのような事件なのかということについて解説してきました。
今回の記事からは、触法事件の手続きの流れについてさらに解説していきます。
2 警察の調査と児童相談所長への送致
⑴ 捜査と触法調査
「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合と同様に、何か事件が発生した際に最初に動くのは警察であることが多いです。
もっとも、「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合、警察は取調べや逮捕などといった捜査をすることになります。
しかし、触法事件では、触法少年は14歳未満(刑事未成年)なので捜査の対象とはなりません。
そこで、一定の場合には、警察官は、捜査に代わり、調査を行う権限が与えられています(少年法6条の2第1項)。
このような権限が与えられている理由は、事件の解明に警察の力を頼る必要性は高く、また、警察の行う手続きの透明性を確保する必要性もあるためだとされています。
⑵ 触法調査でできること、できないこと
具体的には、警察官は次のようなことができます。
① 触法少年や保護者、参考人を呼び出して質問すること(少年法6条の4第1項)
② 公務所や公私の団体に照会をして必要な事項の報告を求めること(少年法6条の4第3項)
③ 押収、捜索、検証、鑑定の嘱託をすること(少年法6条の5第1項)
その一方で、逮捕や勾留、鑑定留置といった身体拘束の手続きは行うことができません。
⑶ 触法調査と弁護士
また、捜査との他の共通点としては、調査に関して弁護士を付けることができる点が挙げられます(少年法6条の3)。
「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合の弁護士を弁護人と呼ぶのに対して、触法事件の調査の場合は付添人と呼びます。
⑷ 触法調査の結果
このような調査をした結果、一定の重大犯罪に当たると考えられる場合や、そうでなくても家庭裁判所の審判に付すのが適当だと考えられる場合には、警察官は事件を児童相談所長に送致します(少年法6条の6第1項)。
なお、似た言葉として児童相談所への通告というものがありますが、その点は次回解説していきます。
今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の流れについて解説してきました。
次回の記事でも、引き続き触法事件の流れについてさらに解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止氏に向けて弁護士が事件後の更生に向けたサポートをお手伝いさせていただく見守り弁護士(ホームロイヤー)を準備しています。触法事件の対象者の方は年齢が低く、精神的にも発達段階であり未熟な場合が多いかと思います。適切な指導を受け再犯を防止するという意味でも弁護士が関わる必要は高いと考えています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑤
【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。
AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回までの記事では、児童相談所が少年事件にかかわる場合として、児童相談所長に送致するという少年審判で家庭裁判所が定める決定について解説してきました。
いわば少年事件の最終盤での児童相談所の役割です。
今回の記事では、それよりも前の時点、少年事件の初期段階での児童相談所の役割についてさらに解説していきます。
2 少年事件の種類
少年事件の初期段階で児童相談所が役割を担うのは、数ある少年事件の中で触法事件と呼ばれる種類の事件です。
それでは、触法事件とはどのような事件なのでしょうか。
少年法は、家庭裁判所が少年審判で取り扱う対象として3種類の少年を定めています。
1つ目は、「罪を犯した少年」です(少年法3条1項1号)。
2つ目は、「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」です(少年法3条1項2号)。
3つ目は、正当な理由なく家庭に寄り付かないなどといった少年法が定める一定の事情があり、性格や環境からして「将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」です(少年法3条1項3号)。
この2つ目の「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」のことを触法少年、触法少年の事件のことを触法事件と呼びます。
1つ目の「罪を犯した少年」との違いは、少年が刑罰法令に触れる行為をした時点で14歳になっているかどうかです。
刑法は「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めていますから(刑法41条)、刑罰法令に触れる行為をした時点で14歳未満だと、その少年には刑事責任能力がなく、「罪を犯した少年」とはいえません。
そのため、犯罪とはならないわけですから、刑罰を科すことはもちろん、逮捕や勾留といった捜査をすることもできません。
その一方で、刑罰法令に触れる行為をしたことには間違いないわけですから、その少年に対して何もしなくていいとはなりませんし、「罪を犯した少年」と同様に、適切な処分が必要となるはずです。
そこで、少年法は、刑罰法令という法に触れる行為をした少年という意味で、触法少年も少年審判の対象としています。
今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件とはどのようなものか解説してきました。
次回の記事では、触法事件の流れについてさらに解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。あいち刑事事件総合法律事務所では、見守り弁護士という、事件を起こされた方の再犯防止をサポートする活動もしています。
少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が解説します④
【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。
AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、家庭裁判所が定める決定の1つである児童相談所長に送致するという決定について、そこで行われる児童福祉法上の措置の内容について解説してきました。
今回の記事では、この児童福祉法上の措置のうち、児童養護施設や児童自立支援施設などに入所させるという措置についてさらに解説していきます。
2 児童養護施設や児童自立支援施設への入所の種類
家庭裁判所の調査の結果、少年に「児童福祉法の規定による措置を相当と認める」場合には、家庭裁判所からの決定で、児童相談所長に送致するという決定がされます(少年法18条1項)。
この措置の1つとして、児童を里親などに委託したり、児童養護施設や児童自立支援施設などに入所させたりするという措置をとることができます(児童福祉法26条1項1号、27条1項3号)。
ところで、家庭裁判所は、保護処分の1つとしても、児童自立支援施設や児童養護施設に送致するという決定をすることもできます(少年法24条1項2号)。
この2つはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、前者を児童福祉法上の措置による入所、後者を保護処分による入所と呼んで記載していきます。
3 2つの入所の違い
2つの入所の違いは次の2点です。
・内容の最終決定者が違うこと
・親権者等の意思が介在するかどうか
です。具体的には保護処分による入所の場合、家庭裁判所が、具体的にどの施設に入所させるのかまで決めることになります。その一方で、児童福祉法上の措置による入所の場合には、児童相談所が決めることになります。
また、保護処分による入所の場合、家庭裁判所の処分ですので、親権者等の意に反していても入所させることができます。
その一方で、児童福祉法上の措置による入所の場合、親権者等の意思に反していると、当然に入所させることができるわけではありません(児童福祉法27条4項)。
虐待があるなど、親権者等に監護させるのが著しく少年の福祉を害する場合には、家庭裁判所の審判を開いて家庭裁判所の承認を得ることで、親権者等の意思に反しても入所させることができます(児童福祉法28条1項1号、3項)。
今回の記事では、児童福祉法上の措置のうち、児童養護施設や児童自立支援施設などに入所させるという措置について解説してきました。
次回の記事では、少年事件の別の場面で児童相談所が関与する場面についてさらに解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。再犯防止に向けた見守り弁護士の活動にも力を入れています。
