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少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑩

2025-06-05

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

ここまでの記事では、少年事件における児童相談所の役割について個別に解説してきました。
今回の記事では、ここまでの解説を簡単にまとめたうえで、Aさんの場合に照らしてみていきます。

2 家庭裁判所に送致されるまで

ここまで解説してきたように、触法少年の場合は、まずは警察が捜査ではなく調査を行い、送致や通告という方法を通じて、児童相談所に送ることになります。
そして、児童相談所としても調査をしたうえで、まずは児童相談所が触法少年にどのような措置を講じるのかを判断することになります。
このように、家庭裁判所に先行して、第一次的には児童相談所が判断するというのが触法事件の大きな特徴の1つです。

Aさんの場合も、このようにまずは警察の調査を受け、その後、(場合によっては一時保護されながら)児童相談所の調査を受け、その結果、家庭裁判所に送致されたということになります。

3 家庭裁判所に送致されてから

そして、家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所の調査官などから調査を受け、その結果をもとに少年審判が開かれることになります。
この点もこれまでに解説してきましたが、その少年審判の結果、いくつかある処分の中に児童相談所長に送致するという処分があります。
その後、家庭裁判所から送致を受けた児童相談所長は、触法少年に対して福祉的な措置が取られることになります。
この福祉的な措置としては、児童福祉司などに指導させるという措置か、児童養護施設や児童自立支援施設等に入所させるなどという措置となる可能性が高いといえます。
このように、最終的な福祉的な措置を行うということも児童相談所の大きな役割の1つといえます。

Aさんの場合も、児童相談所から家庭裁判所に送致された後、(場合によっては観護措置が取られながら)家庭裁判所の調査官などから調査を受け、そのうえで少年審判が開かれ、児童相談所長に送致するという処分となったということになります。
今後は、児童福祉司などに指導させるという措置か、児童養護施設や児童自立支援施設等に入所させるなどという措置となることが予想されます。

4 最後に

このように、少年事件においても、家庭裁判所や少年鑑別所だけではなく、児童相談所も大きな役割を担っています。
特に触法事件の場合は役割が大きく、通常の少年事件とも異なる点があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。相談をご希望の方はこちらからお問い合わせください。

刑法改正に伴って導入される拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します①

2025-05-30

1 はじめに

2025年6月1日施行の刑法改正により、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止され、新たに統合された「拘禁刑(こうきんけい)」が導入されます。
これは明治以来続いた自由刑制度の大改革であり、受刑者の処遇や社会復帰支援、再犯防止策、刑務所運営に大きな変化をもたらすと期待されています。
当然ですがそのことは、実刑判決を受けた者の受ける刑の内容やその後の更生に与える影響も大きいといえます。
そこで本サイトでは拘禁刑の導入に合わせて、その内容や変更点について刑事事件に精通した弁護士が複数回にわたって拘禁刑について記事で詳しく解説させていただきます。

2 懲役刑と禁錮刑について

まずは従来の刑法で定められていた「懲役刑」と「禁錮刑」について簡単に解説させていただきます。
拘禁刑導入前の刑法の条文は以下の通りです。
(懲役)
第12条 懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、1月以上20年以下とする。
2 懲役は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせる。
(禁錮)
第13条 禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、1月以上20年以下とする。
2 禁錮は、刑事施設に拘置する。

両者の違いは刑務作業をする義務があるかどうかです。
しかしながら、実刑判決を受ける者の9割以上は懲役刑の判決を受けた者であり、さらに禁錮刑を受けた者のうち約8割強の受刑者が刑務作業を希望している状況でした。
これが拘禁刑の導入された背景になります。

3 拘禁刑についての条文

今回の刑法改正によって懲役刑と禁錮刑の条文が削除されて、次のような拘禁刑の条文が新設されます。
第12条(拘禁刑)
1 拘禁刑は、無期及び有期に、有期拘禁刑は、1月以上20年以下とする。
2 拘禁刑は、刑事施設に拘置する。
3 拘禁刑に処せられた者には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる。

拘禁刑が導入されることで、これまで「懲役刑」ないし「禁錮刑」が規定されていた条文の文言が「拘禁刑」に変わります。
例えば刑法246条であれば、次のように改正されます。
刑法246条 
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の「懲役」に処する→人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の「拘禁刑」に処する。

また改正前の懲役刑に定められていた刑務作業を行う義務に関する文言はなくなり、3項により刑務作業や更生に向けた指導を行うことを「必要」に応じて行うことと定めています。

今回の記事では従来の条文との改正点について解説させていただきました。次回移行具体的な改正による変化や影響について詳しく解説させていただきます。

あいち刑事事件総合法律事務所では、どのような刑罰をや処分を受けたかに関わらず事件の当事者の方の更生を全力でサポートします。そのた目に早期の仮釈放の実現や真の更生に向けた見守り弁護士などの弁護活動を行っています。更生に関心のある方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。お問い合わせはこちらかフリーダイヤル(0120-631-881)からお願い致します。

少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑩

2025-05-23

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の手続きの流れ、特に警察による調査がどのように行われていくのか、それにどのように児童相談所が関与していくのかについて解説してきました。
今回の記事では、警察から児童相談所長に送致されるなどした後の、児童相談所の役割について解説していきます。

2 児童相談所による調査

警察から送致や通告を受けると、児童相談所が調査を行います(児童福祉法25条の6)。
担当の児童福祉司や児童心理司が決まり、福祉的な観点から少年の成育歴や性格、家庭環境、学校などでの状況を調査したり、心理面や精神面の診断を行ったりします。

3 児童相談所の措置

このような調査を経て、児童相談所長は、会議を開いて議論したうえで、警察から送致や通告を受けた少年に対する措置を決定します。
その措置の内容としては、大きく分けると児童相談所自らがとる措置と家庭裁判所に委ねる措置の2つに分けることができます(児童福祉法27条1項)。

⑴ 児童相談所自らがとる措置
このような措置としては、大きく分けて次の3つに分類できます。
①「児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること」(児童福祉法27条1項1号)
②児童やその保護者に、児童福祉司等の指導を受けさせること(同2号)
③児童を児童福祉施設(児童養護施設や児童自立支援施設など)に入所させたり、里親などのもとで生活させることとしたりすること(同3号、28条)

このうち②の指導については、児童相談所などで行うこともあれば、児童や保護者の住んでいるところで行うこともあります(同2号)。

⑵ 家庭裁判所に委ねる措置
その一方で、「家庭裁判所の審判に付することが適当である」と判断された場合には、家庭裁判所に送致することになります(児童福祉法27条1項4号)。

もっとも、事件の内容が、Ⓐ故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪やⒷそうでなくても死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の場合(少年法6条の6第1項1号イ、ロ)、例外は認められていますが、原則として家庭裁判所に送致しなければならないとされています(少年法6条の7第1項)。

今回の記事では、触法事件における児童相談所の調査とその後の措置について解説してきました。
次回の記事では、ここまでの内容をまとめます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。再犯防止に向けた詳しいサポートの内容についてはこちらのページ(見守り弁護士・ホームロイヤー)も参照してください。

少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑨

2025-05-08

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の手続きの流れ、特に触法少年に逮捕や勾留といった身体拘束手段が取れないことから、一時保護が利用されていることについて解説してきました。
今回の記事でも、引き続き触法事件の手続きの流れについてさらに解説していきます。

2 一時保護を利用する場合の問題点と通告

⑴ 一時保護は誰の権限でできることか
前回の記事でも触れましたが、触法調査の際に一時保護を利用しようと考えた場合に問題となるのは、あくまで一時保護は、警察の権限ではなく、児童相談所長の権限でとれる手段だという点です。
そこで重要になるのが、以前の記事で解説した児童相談所長への送致と通告の違いです。

⑵ 児童相談所長への送致と通告
児童相談所長への送致と通告は、どちらも事件に対する児童相談所の役割を開始させる行為です。
しかし、あくまで別の制度ですから、同じ事件に関して、児童相談所長への送致も通告も両方行うということも可能になります。

⑶ 触法事件の調査の途中で一時保護をとる場合
まず、警察官として未だ調査すべき事項があるのであれば、児童相談所長への送致をすることはできません(少年法6条の6第1項)。
その一方で、調査の間、触法少年を自宅に帰すのに問題があると警察官が考えた場合、触法少年が「要保護児童」、つまり、「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童」(児童福祉法6条の3第8項)であるとして、まずは児童相談所に通告をするのです(児童福祉法25条)。
このようにして触法事件に児童相談所が関われる状態にしてから、「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため」に必要があるとして、児童相談所長が一時保護を決定することになります(児童福祉法33条1項)。

3 一時保護所での面会

このように触法事件では、調査を受けている触法少年が一時保護されていることがあります。
しかし、「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合と異なり、弁護士との面会に関する制度が確立されていません。

今回の記事では、触法事件の調査を警察官が行っている段階で、一時保護を利用する場合について解説してきました。
次回の記事からも引き続き触法事件の流れについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑧

2025-04-17

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに
前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の手続きの流れに関連して、児童相談所長への送致と通告の違いについて解説してきました。
今回の記事でも、引き続き触法事件の手続きの流れについて解説していきます。

2 触法事件と身体拘束
⑴ 触法事件と逮捕・勾留
以前の記事で、触法調査で警察官ができることとできないことについて解説をしてきました。
その中で、「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合と違って、触法事件では逮捕や勾留といった身体拘束手続きをとることができないと解説してきました。
しかし、触法事件の調査が1日で終わるとは限りません。
その一方で、特に重大事件である場合など、調査の間に触法少年を自宅に帰らせるのには問題がある場合も考えられます。
そのような場合には、一時保護という制度が利用されています。

⑵ 一時保護とは
一時保護とは、「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため」に必要があると児童相談所長が考えた場合に、一時保護所などに入所させる処分です(児童福祉法33条1項)。
この処分をとるのに、児童本人や保護者の同意は必要ないと考えられます。

また、一時保護の期間は、原則として2か月とされています(児童福祉法33条3項)。
例外的に、必要があればそれよりも長い期間にわたって一時保護することもできますが(児童福祉法33条4項)、その場合には、基本的に、親権者や未成年後見人の同意を得るか、家庭裁判所の承認を受けるかする必要があります(児童福祉法33条5項前段)。
ちなみに、一時保護に保護者の同意が必要ないとされているのは、延長の場合には親権者等の同意に関する規定(児童福祉法33条5項)があるのに、延長前の一時保護にはそのような規定がないことから読み取れます。

⑶ 一時保護を利用する場合の問題点
今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の流れ、特に一時保護について解説してきました。
しかし、ここで問題となるのは、あくまで一時保護は、警察の権限ではなく、児童相談所長の権限でとれる手段だという点です。
次回の記事では、この問題から解説をしていきます。

あいち刑事事件総合法律事務所では突然児童相談所から一時保護された方の弁護活動・付添人活動についても豊富な経験があります。突然の一時保護により今後ご家族がどうなっていくの不安な方は税以下のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

その他にも弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
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少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑦

2025-04-11

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の手続きの流れのうち、警察の調査がどのようなものかについて解説してきました。
今回の記事でも、引き続き触法事件の手続きの流れについてさらに解説していきます。

2 児童相談所長への送致と通告

⑴ 児童相談所への通告とは
前回の記事では、警察が触法事件の調査をしていった結果、一定の重大犯罪に当たると考えられる場合や、そうでなくても家庭裁判所の審判に付すのが適当だと考えられる場合には、事件を児童相談所長に送致(少年法6条の6第1項)すると解説してきました。
この児童相談所への送致とは似て非なるものとして、児童相談所への通告というものがあります。

この児童相談所長への通告というのは、児童福祉法に定められた制度です。
児童福祉法では、要保護児童、つまり、「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童」(児童福祉法6条の3第8項)を発見した者は、児童相談所などに通告しなければならないとされています(児童福祉法25条)。
この規定に基づき、触法少年という「保護者に監護させることが不適当であると認められる児童」を発見した警察官が、児童相談所に通告することがあります。

⑵ 通告と送致の違い
それでは、児童相談所長への送致と通告にはどのような違いがあるのでしょうか。

どちらも、事件に対する児童相談所の役割を開始させるという点では共通の行為です。
しかし、児童相談所への通告は、児童相談所長の職権発動を促す(つまり、役割を開始するように促す)という意味を持つのにとどまりますが、児童相談所長への送致は、必ず児童相談所の役割が開始するという点で異なるとされています。

また、児童相談所長への送致と児童相談所への通告は別の制度ですから、同じ出来事に関して、どちらともを行うということもできます。
まずは児童相談所への通告を行い、児童相談所の役割を一部開始してもらってから、後日、改めて児童相談所長に送致するということも可能です。
この点は、次回以降に解説をする児童相談所の一時保護ともかかわってきます。

今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の流れについて解説してきました。
次回の記事でも、引き続き触法事件の流れについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
具体的には見守り弁護士(ホームロイヤー)という弁護活動を行っており、刑事事件・少年事件終了後の当事者の方が再犯をしないための見守り活動や再犯防止に向けた課題の実施などを行っています。詳しくはこちらのページもご覧ください。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。ご相談はこちらからお気軽にご連絡ください。

【裁判例紹介】執行猶予中に万引きの再犯をした事案について再度の執行猶予付きの判決を下した裁判例を解説します②

2025-04-03

【事案の概要】
被告人はギャンブルにはまって金融機関からの借金を負い,転売目的での万引きをしてしまい,執行猶予付きの有罪判決を受けてしまいました。その裁判の途中から,ギャンブル依存症などの治療も受けていたのですが,裁判が終わった3か月後にはまたギャンブルにはまってしまい,今度は食べるもの欲しさから万引きをしてしまったというものです。
二度目の裁判の間も被告人は依存症専門の病院で入院治療を受け,また家族もそれを熱心に支え続けました。
一審判決は裁判を受けた3か月後にまたやってしまったという点を重く見て,今度は実刑判決を言い渡しました。
しかし、被告人が控訴した控訴審では1審判決を破棄して被告人に対して再度の執行猶予付きの判決を下しました。

今回の記事では前回の記事で紹介した判決の内容について、より詳しく見ていきましょう。
特に判決の結論を変えた事実の評価のポイントについて詳しく解説させていただきます

1 判決で再度の執行猶予を付した理由について

万引き再度の執行猶予について話を戻しましょう。
上記の事案でも,次のように指摘がなされていました。
「他方で、本件は財産犯であり、被害額は万引き窃盗において多額とまではいえないところ、被告人が被害弁償をしていることや、手口も同種万引き事案と比較して特に悪質とまではいえないことからすれば、犯情において、再度の執行猶予を検討することができる事案である。」
裁判所も,万引きの事案に対しては再度の執行猶予が十分にありうることを前提としています。
ですが,この万引きが,どのような経緯でなされたのか,という点,そしてそれを裁判所がどう見るか,が重要なポイントです。
上記の事案では,被告人は病的賭博,つまりギャンブル依存症(https://www.ncasa-japan.jp/understand/gambling/about)として精神科で診断を受けるほど,自分の衝動を抑えきれない状況にありました。
これについて,一審裁判所も控訴審裁判所もは「万引きに直接影響したものではない」と言いました。
そして,いかに家族が更生環境を整えているとしても実刑は避けられない,と判断しました。

一方,控訴審ではさらに,被告人はADHDの診断を受けており普通の人よりも自分の衝動を抑えるのが難しいという事情を付け加え,「このような更生への取組みを刑罰により打ち切らずに継続させる方が望ましく、本件は情状に特に酌量すべきものがあるとして、再度の執行猶予を付し、もう一度だけ社会内での更生の機会を設けるのが相当であり、原判決の刑をそのまま維持するのは、重きに失するに至ったというべきである。」と判断しました。
ここは私見になりますが,ADHDの診断という点を控訴審が特別重要視したとは思われません。
その為,一審と控訴審は,ギャンブル依存症で万引きをした被告人を家族が献身的に支えている,という事情を見て,実刑判決だ(一審)/もう一度チャンスを与えても良い(控訴審),といったように真逆の判断をしているのです。

2 弁護活動のポイントについて

一審と控訴審で弁護士の方針等が違っていたのかもしれません。しかしながら,万引き再度の執行猶予をめぐる事件については,同じ事案に対しても裁判所によっては真逆の判断がありうるのです。
裁判で再度の執行猶予を勝ち取るのは容易なことではありません。裁判になるもっと前段階から,証拠集めや主張の整理をしておかなければいません。
あいち刑事事件総合法律事務所では万引きを何度も繰り返してしまっている方に対する弁護活動について豊富な経験があります。
執行猶予中に再犯をしてしまって再度の執行猶予判決を勝ち取ることは相当困難ですが、実際に獲得した事例の弁護も弊所では担当しています。
執行猶予中に再犯をしてしまったという方や,執行猶予を勝ち取れるか不安があるという方は,ぜひ裁判になる前段階から刑事事件に精通したあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

またあいち刑事事件総合法律事務所では万引き事件を起こした方の更生支援活動についても弁護士がサポートさせていただきます。
詳しくは、見守り弁護士(ホームロイヤー)のページをご覧ください。

少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑥

2025-03-27

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、児童相談所が役割を担うのは触法事件であること、そして、その触法事件とはどのような事件なのかということについて解説してきました。
今回の記事からは、触法事件の手続きの流れについてさらに解説していきます。

2 警察の調査と児童相談所長への送致

⑴ 捜査と触法調査
「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合と同様に、何か事件が発生した際に最初に動くのは警察であることが多いです。
もっとも、「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合、警察は取調べや逮捕などといった捜査をすることになります。
しかし、触法事件では、触法少年は14歳未満(刑事未成年)なので捜査の対象とはなりません。
そこで、一定の場合には、警察官は、捜査に代わり、調査を行う権限が与えられています(少年法6条の2第1項)。
このような権限が与えられている理由は、事件の解明に警察の力を頼る必要性は高く、また、警察の行う手続きの透明性を確保する必要性もあるためだとされています。

⑵ 触法調査でできること、できないこと
具体的には、警察官は次のようなことができます。
① 触法少年や保護者、参考人を呼び出して質問すること(少年法6条の4第1項)
② 公務所や公私の団体に照会をして必要な事項の報告を求めること(少年法6条の4第3項)
③ 押収、捜索、検証、鑑定の嘱託をすること(少年法6条の5第1項)

その一方で、逮捕や勾留、鑑定留置といった身体拘束の手続きは行うことができません。

⑶ 触法調査と弁護士
また、捜査との他の共通点としては、調査に関して弁護士を付けることができる点が挙げられます(少年法6条の3)。
「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合の弁護士を弁護人と呼ぶのに対して、触法事件の調査の場合は付添人と呼びます。

⑷ 触法調査の結果
このような調査をした結果、一定の重大犯罪に当たると考えられる場合や、そうでなくても家庭裁判所の審判に付すのが適当だと考えられる場合には、警察官は事件を児童相談所長に送致します(少年法6条の6第1項)。

なお、似た言葉として児童相談所への通告というものがありますが、その点は次回解説していきます。

今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の流れについて解説してきました。
次回の記事でも、引き続き触法事件の流れについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止氏に向けて弁護士が事件後の更生に向けたサポートをお手伝いさせていただく見守り弁護士(ホームロイヤー)を準備しています。触法事件の対象者の方は年齢が低く、精神的にも発達段階であり未熟な場合が多いかと思います。適切な指導を受け再犯を防止するという意味でも弁護士が関わる必要は高いと考えています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

【裁判例紹介】執行猶予中に万引きの再犯をした事案について再度の執行猶予付きの判決を下した裁判例を解説します①

2025-03-20

1 裁判例について

今回の記事で紹介するのは令和6年9月24日付で名古屋高裁金沢支部が第1審判決を破棄して再度の執行猶予を付した判決です。
上記判決の基になる事案の概要は次のようなものでした。
【事案の概要】
被告人はギャンブルにはまって金融機関からの借金を負い,転売目的での万引きをしてしまい,執行猶予付きの有罪判決を受けてしまいました。その裁判の途中から,ギャンブル依存症などの治療も受けていたのですが,裁判が終わった3か月後にはまたギャンブルにはまってしまい,今度は食べるもの欲しさから万引きをしてしまったというものです。
二度目の裁判の間も被告人は依存症専門の病院で入院治療を受け,また家族もそれを熱心に支え続けました。
一審判決は裁判を受けた3か月後にまたやってしまったという点を重く見て,今度は実刑判決を言い渡しました。

しかし被告人が控訴したところ,名古屋高裁金沢支部の裁判官は治療の状況や家族の支援が期待できること等から再度の執行猶予を付するという判決を言い渡しました。

2 再度の執行猶予について

ここで,執行猶予について解説をします。
法律上原則として,執行猶予判決を受けている人に対してもう一度執行猶予判決を言い渡すということはできません。
執行猶予判決というのは,「この期間中は絶対に罪を犯さないでくださいね,もし今度罪を犯してしまったらほとんど確実に刑務所に行きますからね」という抑止力をもって,再犯を防止しようとするものです。
具体例でいうと,令和7年4月1日に「懲役1年,執行猶予3年」という判決を受けたとします(便宜上,上訴期間を除いて解説します)。
すると,令和7年4月1日から令和10年3月31日までの間,この人は執行猶予期間中ということになります。
この期間に新たに犯罪をしてしまい,再び有罪判決,例えば「懲役2年の実刑」という判決を受けてしまうと,一度宣告された「懲役1年」と新たに言い渡された「懲役2年」の合計3年の懲役刑を受けることになるのです。
一方,令和10年3月31日までに再犯して有罪判決を受けることがなければ,「懲役1年」を服役しなくてもよくなるのです。
このように,「次にやったら重い刑罰を受ける」という抑止力を利用して,社会の中で更生させようとするのが「執行猶予」という制度なのです。
そのため,執行猶予中に犯してしまった罪に対しては特に厳しく見られることになります。「もう一回執行猶予で良いよ」とはならないのです。

ただし,どうしても実刑判決を科すのが不適当な場合があります。それが,事例の,繰り返してしまう万引きのような事例です。
法律上,特に情状で考慮すべき事情がある場合,要するに「どうしても刑務所に送るのが不適当/もう一度社会でチャンスを与えるべきではないか」と思われる事案に対しては,再度の執行猶予を言い渡すことができるのです。再度の執行猶予に関する詳しい解説についてはこちらのページもご確認ください。
ただし再度の執行猶予が認められることは非常に例外的な判断であり,再度の執行猶予が付されている事案は少数です。実際に再度の執行猶予が付される事案の多くは,交通事故のような過失犯や,軽微な万引きの事案です。

次回の記事では、紹介した事例において再度の執行猶予付きの判決が出された理由やその弁護活動について詳しく解説させていただきます。
執行猶予か,実刑かで,その後の生活において天と地ほども差があります。
執行猶予を目指すのであれば,刑事事件専門の弁護士に対して速やかに相談し,早期の対応を仰ぎましょう。

少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑤

2025-03-13

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回までの記事では、児童相談所が少年事件にかかわる場合として、児童相談所長に送致するという少年審判で家庭裁判所が定める決定について解説してきました。
いわば少年事件の最終盤での児童相談所の役割です。
今回の記事では、それよりも前の時点、少年事件の初期段階での児童相談所の役割についてさらに解説していきます。

2 少年事件の種類

少年事件の初期段階で児童相談所が役割を担うのは、数ある少年事件の中で触法事件と呼ばれる種類の事件です。
それでは、触法事件とはどのような事件なのでしょうか。

少年法は、家庭裁判所が少年審判で取り扱う対象として3種類の少年を定めています。
1つ目は、「罪を犯した少年」です(少年法3条1項1号)。
2つ目は、「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」です(少年法3条1項2号)。
3つ目は、正当な理由なく家庭に寄り付かないなどといった少年法が定める一定の事情があり、性格や環境からして「将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」です(少年法3条1項3号)。

この2つ目の「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」のことを触法少年触法少年の事件のことを触法事件と呼びます。

1つ目の「罪を犯した少年」との違いは、少年が刑罰法令に触れる行為をした時点で14歳になっているかどうかです。
刑法は「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めていますから(刑法41条)、刑罰法令に触れる行為をした時点で14歳未満だと、その少年には刑事責任能力がなく、「罪を犯した少年」とはいえません。
そのため、犯罪とはならないわけですから、刑罰を科すことはもちろん、逮捕や勾留といった捜査をすることもできません。
その一方で、刑罰法令に触れる行為をしたことには間違いないわけですから、その少年に対して何もしなくていいとはなりませんし、「罪を犯した少年」と同様に、適切な処分が必要となるはずです。
そこで、少年法は、刑罰法令という法に触れる行為をした少年という意味で、触法少年も少年審判の対象としています。

今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件とはどのようなものか解説してきました。
次回の記事では、触法事件の流れについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。あいち刑事事件総合法律事務所では、見守り弁護士という、事件を起こされた方の再犯防止をサポートする活動もしています。

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