少年事件と児童相談所の関係について少年事件に精通した弁護士が詳しく解説します⑤

【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。

AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回までの記事では、児童相談所が少年事件にかかわる場合として、児童相談所長に送致するという少年審判で家庭裁判所が定める決定について解説してきました。
いわば少年事件の最終盤での児童相談所の役割です。
今回の記事では、それよりも前の時点、少年事件の初期段階での児童相談所の役割についてさらに解説していきます。

2 少年事件の種類

少年事件の初期段階で児童相談所が役割を担うのは、数ある少年事件の中で触法事件と呼ばれる種類の事件です。
それでは、触法事件とはどのような事件なのでしょうか。

少年法は、家庭裁判所が少年審判で取り扱う対象として3種類の少年を定めています。
1つ目は、「罪を犯した少年」です(少年法3条1項1号)。
2つ目は、「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」です(少年法3条1項2号)。
3つ目は、正当な理由なく家庭に寄り付かないなどといった少年法が定める一定の事情があり、性格や環境からして「将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年」です(少年法3条1項3号)。

この2つ目の「十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年」のことを触法少年触法少年の事件のことを触法事件と呼びます。

1つ目の「罪を犯した少年」との違いは、少年が刑罰法令に触れる行為をした時点で14歳になっているかどうかです。
刑法は「十四歳に満たない者の行為は、罰しない」と定めていますから(刑法41条)、刑罰法令に触れる行為をした時点で14歳未満だと、その少年には刑事責任能力がなく、「罪を犯した少年」とはいえません。
そのため、犯罪とはならないわけですから、刑罰を科すことはもちろん、逮捕や勾留といった捜査をすることもできません。
その一方で、刑罰法令に触れる行為をしたことには間違いないわけですから、その少年に対して何もしなくていいとはなりませんし、「罪を犯した少年」と同様に、適切な処分が必要となるはずです。
そこで、少年法は、刑罰法令という法に触れる行為をした少年という意味で、触法少年も少年審判の対象としています。

今回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件とはどのようなものか解説してきました。
次回の記事では、触法事件の流れについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。あいち刑事事件総合法律事務所では、見守り弁護士という、事件を起こされた方の再犯防止をサポートする活動もしています。

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