今回の記事でも前回の記事に引き続いて用いて共同危険行為により逮捕されてしまった少年事件の更生支援活動ついて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説をします。
【事案】
共同危険行為をして逮捕されてしまったAさんは,そのまま東京少年鑑別所へ送られて,東京家庭裁判所の少年調査官との面談を行いました。
この時,調査官からは,暴走行為を繰り返していた時にどんな気持ちだったのか等の質問をされました。また,調査官からは「これから審判になると思う」とも伝えられました。
AさんやAさんの家族はどのように対応すべきでしょうか。
(事例については一部を改編しています)
このページの目次
1 「要保護性」をどう主張する?
今回の記事では要保護性の有無などについてどのような主張を行っていくかについて解説していきます。前回の記事を読まれたい方はこちらからご覧になってください。
少年審判において「要保護性」というのが非常に重要であることは説明した通りです。
それでは,どのようにして主張すればよいのでしょうか?
まず,要保護性は
①「事件当時にどうだったか」
②「事件の後どのように変化したか」
という2つの視点から判断されます。
このうち①「事件当時にどうだったか」という視点は,ある意味,過去の変えられない出来事を前提とするものですから,本人や家族にとってはどうしようもないものです。ですが,弁護士が法的な観点から有利な事情を主張できるという場合がありますからあきらめてはいけません。
ですが,②「事件の後どう変化したか」については,本人や家族の努力によって何とかなる場合があります。これは,「更生のために本人や家族が努力をしているか」という視点でもあるからです。
2 「反省しています」とは?
ここで,前回の記事でも触れた「更生とはどういう意味か」をよく考えて対応しなければなりません。
多くの方は,事件を起こしたときには,反省の言葉を述べます,そして,反省しているのだから何とか軽い処分にしてほしい,とも述べます。これは決して誤っているわけではないのですが,「更生」に向けた努力かどうかは疑問が残るところです。更生するというのは,もう二度と間違いを犯さないために正す,ということです。
今回の事例のAさんの更生について詳しく考えてみましょう。
Aさんは,最初,学校がつまらない,居場所がない,という感覚がスタートとなって事件に至りました。では,このように感じた理由,原因を深堀して考えなければなりません。Aさんが話すことによく耳を傾け,Aさん自身が気付いていないかもしれないようなことまで理解を深めなければなりません。
一言で「学校」と言っても,
勉強のこと,友達関係の事,先生との関係,異性関係,進路の不安などなど
様々な要素があります。
また,「つまらない」というのも,
なにかうまくいかないことがあるのか,傍目には充実しているのに刺激を求めてしまったのか,心理的に満足感を感じないのか,「つまらない」というのは「寂しい」等の別の感情を押し殺した表現ではないか
といったように,様々な分析があり得ます。
このような確認を綿密に行うことで本当の意味での反省ができるのです。
多くの事件ではこの点が深まらないために,「反省が足りていない」と指摘されてしまうことがあるのです。
3 次に同じことをしないために(再犯防止策の策定)
どうして事件を起こしてしまったのか,十分に振り返ることができれば,後はそれに対する対策をきちんと講じていくだけです。
事件を起こした経緯や心情がしっかりと分かっていれば,おのずとそれに対する対策も具体的なものになっていくでしょう。
本記事の元となったAさんの実際の事例を紹介します。
Aさんは「学校がつまらなくなった」といっていましたが,実際には,勉強についていけなくなり,希望していた進路に進むことができず,進学先での勉強もつまらなくなってしまったというのです。それに伴って生活リズムも崩れ,更に学校での勉強にもついていけず,更に遊びに出ることが増え,というように,負のスパイラルが出来上がってしまっていました。
そこで,まずは生活リズムを作り,学校へ通うための土台を作りました。次に勉強について,テストの点数や評定に目を向けるのではなく「将来どんな仕事に就きたいのか,そのためには今何をしなければならないのか」という目標を設定して勉強することの意味を再確認しました。
文字にすると,「生活リズムを作る」「将来の目標を持つ」というだけですが,Aさんの場合,これが暴走行為を防ぐために重要なことだったのです。
Aさんの事例でも,一部機関からは「少年院に送致すべき」という意見も付されましたが,家庭裁判所に対して上記のようなAさん,Aさん家族の努力を熱心に主張し,施設送致を回避することができました。
Aさんの事例はあくまで一例であり,ここで紹介したのも事件の一部分にすぎません。
少年事件においては,事件ごと・少年ごとに要保護性が異なります。どうしても,マニュアル的に対処することはできないのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には少年事件を熱心に扱う弁護士が所属しています。
少年の更生,審判のことで困りのことがある方,そのご家族の方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。