兵庫県豊岡市の特殊詐欺事件で少年院に送致されることが決定された事例 少年院での処遇について⑧

【事例】
Aさんは、兵庫県豊岡市に住む17歳の男子高校生です。
ある日、AさんはSNS上である投稿を見つけました。
それは、ある物を受け取って運ぶだけで何万円もの報酬を支払うといういわゆる闇バイトを募集する投稿でした。
犯罪かもしれないと思いながらその募集に応募したAさんは、兵庫県内や鳥取県内でいわゆる特殊詐欺に何件も加担してしまいました。
高齢の方が住む自宅に赴いてキャッシュカードをすり替えて盗んだり、そのキャッシュカードを使って何百万円ものお金を引き出して盗んだりしたのです。
その後、鳥取県内の警察署に逮捕、勾留され、再逮捕もされました。
捜査を受けた後、最終的に神戸家庭裁判所豊岡支部に事件が係属し、神戸少年鑑別所に収容するという観護措置が取られました。
そして、神戸家庭裁判所豊岡支部は、Aさんの少年審判を行い、少年院に送致するという処分を決めました。

AさんやAさんの家族は、少年院に送致するという処分自体には納得していましたが、少年院ではどのようなことをするのか、どこの少年院に行くことになるのか、どのくらいの期間行くことになるのかなどが知りたいと思い、それまでもAさんの弁護人、付添人であった弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、以前解説をした少年鑑別所長が少年を収容すべき少年院を決める過程に関連して、矯正教育課程について解説をしてきました。
今回の記事では、矯正教育課程を指定することが、どのようにして少年院の決定に結びつくのかについてみていきます。

2 矯正教育課程の種類

前回の記事で解説してきたように、矯正教育課程は、「矯正教育課程に関する訓令(平成27年法務省矯少訓第2号大臣訓令)」というものの中に具体的に定められていまず。
そして、少年の様々な状況をもとに、どの矯正教育課程に分類するかというのが決定されていきます。
少年院における矯正教育課程の分類等についてはこちらのページも参考にしてください。

前回の記事で例示したものの他にも、第一種少年院の場合は、短期義務教育課程、義務教育課程Ⅰ、義務教育課程Ⅱ、短期社会適応過程、社会適応過程Ⅰ、社会適応過程Ⅱ、社会適応過程Ⅲ、支援教育課程Ⅰ、支援教育課程Ⅱ、支援教育課程Ⅲと10種類の矯正教育課程があります。

ちなみに第二種少年院の場合には、社会適応過程Ⅳ、社会適応過程Ⅴ、支援教育課程Ⅳ、支援教育課程Ⅴの4種類の矯正教育課程があります。

3 少年院が実施する矯正教育課程

ところで、全ての少年院が全ての矯正教育課程に対応しているわけではありません。
例えば、兵庫県にある加古川学園という少年院では、社会適応過程Ⅰ、支援教育課程Ⅲの2つに対応しています。
奈良県にある奈良少年院では、第一種少年院の社会適応過程Ⅱ、第二種少年院の社会適応過程Ⅳ、第四種少年院の受刑在院者過程の3つに対応しています。
このように、少年院ごとに対応している矯正教育課程には限りがあるのです。

例えば、Aさんが、反社会的な価値観や行動傾向がある、自己統制力が低い、認知に偏りがあるなど、その資質上特に問題となる事情があって、その改善が必要だなどと考えられ、社会適応過程Ⅱに分類されたとします。
社会適応過程Ⅱに対応している少年院は、帯広少年院、紫明女子学院、盛岡少年院、青葉女子学園、榛名女子学園、八街少年院、久里浜少年院、愛知少年院、交野女子学院、奈良少年院、岡山少年院、貴船原少女苑、丸亀少女の家、筑紫少女苑、大分少年院、沖縄少年院、沖縄女子学園の17カ所です。
このうち男子少年を受け入れているのは、帯広少年院、盛岡少年院、八街少年院、久里浜少年院、愛知少年院、奈良少年院、岡山少年院、大分少年院、沖縄少年院の9カ所です。
この9カ所の中から、住所地も踏まえてどの少年院に収容されることになるのかが決まることになるでしょう。

次回の記事では、少年院での処遇期間などについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
また弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では少年事件における付添人活動にも力を入れています。特殊詐欺の事件で少年院送致を回避した実績も多数ございます。付添人活動に興味がある方はこちらの記事も参考にしてください。

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