医療観察入院の流れ

罪を犯した人に対して、刑事責任を取らせるだけではなく、精神障害などが事件の原因となった場合は、心神耗弱、心神喪失の状態であったとして、刑事責任を問わず(不起訴処分や無罪の判決が出される)、むしろ、治療へつなげる必要がある場合があります。

次のような犯罪について、心神耗弱又は心神喪失の状態であると認められる場合には、医療観察法という法律に基づいて、裁判所が強制的に入院や通院の措置を取ることがあります。

対象となる犯罪

  • (非)現住建造物等放火
  • 建造物等以外放火
  • (準)強制わいせつ
  • (準)強制性交等
  • 監護者わいせつ
  • 監護者性交等
  • 殺人
  • 自殺関与
  • 同意殺人
  • 傷害
  • 強盗
  • 事後強盗

医療観察法による入院/通院までの流れ

医療観察法による入院や通院までの流れは、概ね次のようなものになります。

  • 申立て
  • 鑑定
  • 審判期日
  • 決定
  • 不服申立て

どの段階からでも弁護士を依頼することは可能ですが、手続全体に時間制限もありスピーディーに終わってしまうため、なるべく早い段階から付添人弁護士を選任していた方が良いでしょう。

申立ての手続

医療観察法上の入院や通院は、裁判所が決定するものになります。

ですが、裁判所が独自に対象となる人を探すわけではなく、法律上、検察官が申立てを行います。

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鑑定の手続

検察官から入院や通院の申立てがあると、裁判所はまず、対象となる人に鑑定入院命令を出します。

これは、医療観察法に基づいて、その人に対して通院や入院を強制する必要があるのかどうかを、鑑定医に鑑定させるために行われるものです。

鑑定医は、中立な立場から専門の医師として、対象となった人に精神障害があるのかどうか、あるとすれば、社会復帰のために医療を受けさせる必要があるのかどうかという点について判断をします。

鑑定は一定のガイドラインに従って判断されます。鑑定のために入院させられる期間は2か月(必要な場合には1か月延長)であり、その間に、鑑定結果まで出されることになります。

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審判期日

審判期日では通常の裁判と同じように裁判所で行われることもありますが、病状や裁判所の事情によっては、鑑定入院している病院内で行われることもあります。

審判には、裁判官、精神保健審判員(医師)、精神保健参与員、検察官、付添人弁護士、対象者(本人)が出席します。

鑑定医は「鑑定意見書」として裁判所に報告を出しているのですが、審判に出席して、裁判官に直接意見を述べることもあります。

審判では様々な資料を確認し、出席者が意見を述べ、また、裁判官が本人からも話を聞いて結審することになります。

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決定

審判期日の結果を踏まえて、裁判官が処遇を決定します。

まず、検察官の申立ての理由となった事実そのものについて有無を判断します。そもそも対象となる人に、対象となる犯罪行為がないとなれば、そこで申立てを却下します。

犯罪行為があったとして、鑑定の結果や審判期日でのそれぞれの意見を踏まえて、入院決定、通院決定、医療を行わない旨の決定のいずれかをします。

入院の決定があるとそのまま入院先の医療機関へと移送されます。入院後は6か月おきに「入院を続けるか/退院させるか」のカンファレンス(会議)が開かれます。

厚生労働省が定めている標準モデルとしては、入院治療の期間は基本的に18か月(1年6か月)として、その程度での退院を目指すとされています。

通院決定が出された場合、決定日から3年間とされています。

この通院のための期間中は、同時に保護観察の期間にもなります。

仮に通院決定が出された後、通院を怠った場合には、保護観察所が裁判所に再入院の申立てがなされます。

つまり、通院を行ってしまうと今度は強制的に入院の措置となってしまうかもしれない、ということです。

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不服申し立ての手続

裁判所の決定に対しては、決定から2週間以内に「抗告」という不服の申立てをすることができます。入院や通院を強制する決定が重すぎるという場合や、前提となる事実が誤っているという場合に不服を申し立てることになるでしょう。

入院決定が出された後に、症状が寛解したため医療の必要を受ける必要がなくなったとして退院を求める場合には、この不服申立てではなく、別途、退院許可の申立てをすることになります。

退院許可の申立てについては時間制限などはなく、入院後はいつでも裁判所に対して申し立てることができます

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