刑事裁判を受けて実刑判決が確定し、刑事施設での服役が終わると、実際の社会に戻らなければなりません。
「仮釈放」や「満期出所」と言われます。
無期懲役のような例外的な場合を除いて、受刑者の人のほとんどは、刑事施設から出る時が来ます。
しかしながら、数か月、数年も社会から隔離されていた人が、ある時から突然社会に放り出されても、これまでと同じような生活ができるとも限りません。
そのため、刑事施設からの出所者の生活を支援する機関としては、次のようなところがあります。
このページの目次
更生保護施設
更生保護施設とは、刑務所から出所した人や、保護観察を受けている人の中でも、住むべきところがなかったり周りに頼れる人がいなかったりという事情から、自立した生活が困難な人に対して、一時的に生活する場所を提供するための施設です。
「更生緊急保護」と言われています。
全国に103か所あり(2020年時点)、法務省などから委託を受けた団体が運営をしています。
この施設のほとんどが更生保護法人と呼ばれる法人によって運営されており、ほとんどの都道府県に施設があります。
https://www.kouseihogo-net.jp/hogohoujin/institution.html
更生緊急保護は、本人の同意が前提となっており、施設で生活できる期間は基本的に6か月以内となっています。
更生保護施設での生活は、あくまで「今すぐに帰る家がない/身寄りがいない」という人たちの生活を一時的に支援するというものなので、期間も6か月程度にとどめられています。
支援の内容についても、最低限の住居の支援です。
施設が直接金銭的な支援をするというものではありません。住むところを確保している間に、施設から出るための準備をしていかなければなりません。
具体的には、生活保護の申請や、就労先を探す、住むところを探すといったことをしなければなりません。更生保護施設では、このような自立への準備の手助けをしてくれます。
自立準備ホーム
更生保護施設のほかに、出所者を一時的に受け入れる施設として「自立準備ホーム」と呼ばれる施設もあります。
これは、更生保護法人が運営しているものではなく、保護観察所に登録されたNPO法人や一般の会社、社会福祉法人といった団体が運営しているものです。
自立準備ホームでは、住居を提供するだけではなく、食事の提供などその施設内での生活そのものの援助をするところもあります。自立準備ホームを運営する団体には様々な機関がありますから、それぞれの施設によって特徴が異なります。
更生保護法人よりも小・中規模の団体が運営している施設になりますから、受け入れ人数も少数になります。
更生保護施設での受け入れ人数は一年間で約7000人前後ですが、自立準備ホームの受け入れ人数は一年で約1800人前後になっています。
この、更生保護施設と自立準備ホームは、どちらも同じ「更生緊急保護」のための施設になっていますが、どの施設に入所するかという点については、選べません。
あくまで、その地域の保護観察所が割り振りを決めることになります。
地域生活定着支援センター
地域生活定着支援センターとは、各都道府県に設置されている機関で、刑事施設から出所してその地域で生活することになる人に対して、福祉や行政のサービスを提供するための窓口になります。
刑事施設から出所する人に関する情報は、まず、刑事施設から帰住先の地域の保護観察所へ連絡されます。この連絡を受けた保護観察所が、支援が必要と思われる人について、地域生活定着センターに連絡を取り、出所後の生活についてフォローを行います。
具体的な支援としては、
- 出所する人に必要な福祉サービスへつなぐ
- 出所者を受け入れる施設や会社へのフォローアップをする
- 犯罪をしてしまった人やその家族からの相談
といったことをします。
地域生活定着支援センターは、更生保護施設や自立準備ホームとは違い、一時的な受け入れではなく、各都道府県で、その地域での生活を長く支援していくことを目的としています。
もしも別の都道府県に移るという場合には、地域生活定着支援センターの間でケースが引き継がれていくことになります。
依存症、各種精神疾患の専門医療機関
刑事施設の出所者の方に限った話ではありませんが、アルコール・薬物・性などの依存症から事件を起こしてしまったという場合や、躁うつ病や統合失調症などの精神疾患が事件の原因となってしまったという場合もあります。
そのような事案では、出所後も治療として専門の医療機関にかかることが重要です。
保護観察処分を受けている場合には、その際の遵守事項(保護観察中に守らなければいけない約束事)として、専門の医療機関への通院が決められていることもあります。
事件そのものと関わっていなかったとしても、例えば、「精神的な疾患があるために働くことができない⇒働けず事件を起こしてしまった」という場合であれば、やはり治療が再犯の防止にもつながります。
弁護士に依頼してできること
刑事施設で収容されている方も、出所後の生活設計のために、弁護士に委任して各種機関と連絡を取ったり、依頼の調整をすることができます。
受刑中も、出所後の生活再建のためであれば、刑務所内で弁護士と面会することもできます。
ほとんどの刑事施設は、「もう帰ってこないでね」と言って出所者を送り出していますが、その後の具体的な生活の面倒は見てくれません。
出所後の生活支援や、福祉・行政の支援についてどこに問い合わせたらいいのか分からないという方、家族や知人の出所後について専門家に相談したい、という方も、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。