【事例】
Aさんは、福岡県新宮市に住む14歳の男子中学生です。
半年前、Aさんは、通学中に見かけた小学生の女の子の身体を触るという事件を起こしてしまいました。
女の子が泣き出したので、Aさんはその場から走って逃げました。
しかし、数日後、警察官がAさんのところに来てこの事件について話を聞きたいと言ってきました。
この事件当時、Aさんは誕生日を迎える前でしたので、まだ13歳でした。
その後、Aさんは警察で話を聞かれたり、児童相談所で保護されたり、少年鑑別所で収容されて調査を受けたりしました。
このような手続きを経て、福岡家庭裁判所は、Aさんの少年審判を開き、Aさんを児童相談所長に送致するという決定をしました。
AさんやAさんの家族は、児童相談所長に送致するという処分がどのような処分なのか、Aさんは自宅に帰ることができるのかなどを改めて説明してもらいたいと思い、それまでもAさんの付添人であった弁護士に改めて相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
このページの目次
1 はじめに
前回の記事では、少年事件の初期段階での児童相談所の役割を解説するために、触法事件の手続きの流れ、特に触法少年に逮捕や勾留といった身体拘束手段が取れないことから、一時保護が利用されていることについて解説してきました。
今回の記事でも、引き続き触法事件の手続きの流れについてさらに解説していきます。
2 一時保護を利用する場合の問題点と通告
⑴ 一時保護は誰の権限でできることか
前回の記事でも触れましたが、触法調査の際に一時保護を利用しようと考えた場合に問題となるのは、あくまで一時保護は、警察の権限ではなく、児童相談所長の権限でとれる手段だという点です。
そこで重要になるのが、以前の記事で解説した児童相談所長への送致と通告の違いです。
⑵ 児童相談所長への送致と通告
児童相談所長への送致と通告は、どちらも事件に対する児童相談所の役割を開始させる行為です。
しかし、あくまで別の制度ですから、同じ事件に関して、児童相談所長への送致も通告も両方行うということも可能になります。
⑶ 触法事件の調査の途中で一時保護をとる場合
まず、警察官として未だ調査すべき事項があるのであれば、児童相談所長への送致をすることはできません(少年法6条の6第1項)。
その一方で、調査の間、触法少年を自宅に帰すのに問題があると警察官が考えた場合、触法少年が「要保護児童」、つまり、「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認められる児童」(児童福祉法6条の3第8項)であるとして、まずは児童相談所に通告をするのです(児童福祉法25条)。
このようにして触法事件に児童相談所が関われる状態にしてから、「児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため」に必要があるとして、児童相談所長が一時保護を決定することになります(児童福祉法33条1項)。
3 一時保護所での面会
このように触法事件では、調査を受けている触法少年が一時保護されていることがあります。
しかし、「罪を犯した少年」の少年事件や成人の刑事事件の場合と異なり、弁護士との面会に関する制度が確立されていません。
今回の記事では、触法事件の調査を警察官が行っている段階で、一時保護を利用する場合について解説してきました。
次回の記事からも引き続き触法事件の流れについてさらに解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
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