刑法改正に伴って導入される拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します④

今回からは2回の記事に分けて拘禁刑の導入に伴って行われる再犯防止のための施策について解説していきます。今回は刑務所内での再犯防止策の強化について、次回は刑務所外での再犯防止策の強化について紹介、解説していきます。

1 刑務所内での再犯防止策の強化について

再犯防止の強化は、拘禁刑導入の最大の目的の一つです。刑罰には本来「応報」(犯した罪への報い)と「予防」(将来の犯罪抑止)という二面性がありますが、今回の改正では特に特別予防(その人の再犯を防ぐこと)に重点が置かれました。
すなわち、刑務所内で受刑者本人に働きかけることで再犯を防止しようという考え方が色濃く反映されています。
拘禁刑では受刑者の特性に応じて柔軟に処遇できるようになるため、従来よりも効果的な矯正プログラムの実施が可能になります。法務省も「刑罰の目的として再犯防止がいっそう重視されるようになった」と説明しており、再犯防止への軸足を明確にしています。

2 拘禁刑導入に伴う受刑者の処遇プログラムの変化

(1)処遇課程の分類の変化
具体的な再犯防止策として、受刑者の処遇プログラムの充実と多様化が挙げられます。法務省は拘禁刑導入に向け、現在の受刑者分類方法を見直し、24種類もの新たな矯正処遇課程を設ける方針を打ち出しました。
これまで刑務所では「犯罪傾向の進度」(初犯・累犯など犯罪歴にもとづく分類)によって収容先や処遇を決めていましたが、これだと高齢の窃盗常習者と暴力団関係者が同じ処遇群になるなど、背景の異なる者に画一的対応をせざるを得ない問題がありました。
そこで今後はそのような手法を廃止し、受刑者一人ひとりの資質・事情(犯行動機や抱える問題、年齢や障害の有無等)に着目して分類する「オーダーメイド型」の処遇へ転換します。
例えば、知的障害・精神疾患を抱える人向けの「福祉支援課程」、薬物・ギャンブル依存の人向けの「依存症回復課程」、若年層向けの「若年課程」などが用意され、受刑者ごとに最適なプログラムを受けられるようになる見込みです。
こうした細やかな処遇により、それぞれの受刑者が再犯に至った原因(貧困、依存症、学歴・技能不足、人間関係の問題など)を的確に改善していくことが期待されています。
(2)専門的矯正プログラムの拡充
また、専門的な矯正プログラムの拡充も図られています。性犯罪者に対する再犯防止プログラム、暴力団離脱支援プログラム、DV加害者更生プログラムなど、従来から一部実施されていた専門プログラムを発展させ、対象者には集中的に受講させる方針です。
たとえば性犯罪を犯した受刑者には、刑務所内の「性犯罪再犯防止指導」と保護観察所の「性犯罪者処遇プログラム」を連動させるなど、施設内処遇と社会内処遇の継続性を持たせる取り組みも進められています。
薬物犯罪者についても刑務所での薬物離脱指導と出所後の薬物リハビリ支援を一貫して行う仕組みづくりが検討されています。
これらのプログラムは科学的知見に基づき開発・改善されており、再犯防止に一定の効果を上げているとの報告もあります。

次回は引き続き、刑務所外での再犯防止策の強化について解説させていただきます。

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