今回の記事では拘禁刑の導入に伴って、仮釈放や社会復帰のための支援体制がどのように変化していくのかについて解説させていただきます。
1 仮釈放判断に与える影響
拘禁刑の導入は、受刑者の仮釈放や出所後支援にも間接的な影響を及ぼすと考えられます。
法制度上、仮釈放(仮出所)の要件そのもの(有期刑は原則3分の1経過後等)は従来と変わりません。
しかし処遇重視の方針により、更生プログラムへの取り組み状況や改善の度合いが仮釈放審査で重視される可能性があります。拘禁刑導入後の新制度では受刑者ごとの改善計画が立てられるため、例えば「与えられた職業訓練を修了した」「教育課程で一定の成果を上げた」等の記録が、仮釈放を判断する材料となる可能性があります
受刑者にとっては、早期の社会復帰を目指す上で刑務所内プログラムへの積極的参加が一層重要になるでしょう。
2 出所後の社会復帰支援に与える影響について
また、出所後の社会復帰支援策も強化されています。具体的には以下の通りです。
(1)就労支援
法務省と厚生労働省は2006年度から「刑務所出所者等総合的就労支援対策」を実施しており、ハローワーク(公共職業安定所)に専用窓口を設置する、協力雇用主(受刑者を雇用する企業)の開拓、職場体験講習やセミナー開催、トライアル雇用助成金の支給など、出所者の就労を包括的に支援する施策を展開しています(https://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/08/h0829-2.html)。
刑事施設や保護観察所とハローワークが連携し、受刑中から職業相談・職業紹介や就労支援プログラムを実施することで、出所時にスムーズに職探しができる体制を整えています。
改正後は、こうした取り組みをより一層充実させる方針が示されています。
(2)教育支援
教育支援の強化も重要な柱です。若年層の受刑者(おおむね26歳未満)については、出所後の社会復帰に役立てるため学力向上や就労技術習得を促す教育プログラムが拡充されています。
具体的には、中卒・高卒程度の学力しかない受刑者に対し、高卒認定試験の学習支援や職業資格取得のための講座が提供されるケースもあります。改正後の拘禁刑では、「教科指導」(学科教育)や「職業訓練」の時間を個々の事情に応じて十分に確保し、受刑中に基礎学力や技能を身につけさせることに重点が置かれます。これにより、出所者が社会で職に就き自立しやすくなるよう支援が強化されます。
(3)最新技術を利用した就労支援
さらに、官民の連携による新しい試みも始まっています。
例えば日本財団と法務省の協働プロジェクトでは、受刑者の職業訓練にVR(バーチャルリアリティ)技術を活用する取り組みが国内で初めて行われました(https://seijiyama.jp/article/news/nws-si20240319.html)。
2024年3月には栃木県の喜連川社会復帰促進センターにて、介護業等の企業が協力し、受刑者に対してVR上での職業体験を実施しています(https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/866395)。これはメタバース空間での企業説明会に続く画期的な試みであり、IT技術を使った実践的な就労支援として注目されました。
このように、従来は難しかった多様な業種の体験や実習を受刑中に提供し、出所後のミスマッチを減らそうという動きが広がっています。
(4)出所後の指導監督体制
出所後のフォロー体制も改善が図られています。保護観察所による指導監督に加え、NPOや自治体とも連携して、住居の確保や生活相談に応じる仕組みが整いつつあります。
例えばあるNPO法人では、出所者の住居支援、居場所づくり、就労支援などを包括的にサポートしており、福祉サービスへの橋渡し役を担っています。
また全国各地で「地域生活定着支援センター」が設置され、高齢・障害のある出所者を地域で支える仕組みも強化されています。拘禁刑の理念である「改善更生」を確実に社会復帰に繋げるために、出所前後の切れ目ない支援が拡充されているのです(https://www.kurashi-o-en.org/teichaku)。
以上のように拘禁刑の導入に伴って、仮釈放の判断において重視されることが変化することやさらに出所後の社会復帰支援が充実することが予想されています。
あいち刑事事件総合法律事務所でも、弁護士が事件を起こした方の再犯防止や真の更生に向けて取り組む更生支援プログラムに力を入れています。
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