刑法改正に伴って導入される拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します②

それでは前回の記事の導入に引き続き、今回の記事より拘禁刑の内容についてより解説していきます。

1 受刑者の処遇の変化

懲役刑・禁錮刑から拘禁刑への一本化により、受刑者の生活と処遇内容が柔軟化します。
従来、懲役受刑者にはいわゆる刑務作業が義務づけられ、禁錮受刑者は刑務作業が任意でした。
しかし拘禁刑では、受刑者ごとに作業を行わせるか否かを決定し、その人の特性に応じた指導やプログラムを実施する仕組みに変わります。
つまり、全受刑者に一律で労役を課すのではなく、個々の受刑者に必要な作業または指導を組み合わせて行うことが可能になります。

2 処遇内容の見直し

この変更に伴い、刑務所内での過ごし方やプログラム内容も見直されます。刑務作業と矯正指導(改善指導や教科指導など)を合わせた時間は、従来同様に原則1日8時間以内とされています。
ただし作業が免除・軽減された受刑者には、その時間を利用して更生プログラム(矯正教育やカウンセリング等)に充てることが予定されています。
実際に国会での審議を見ても、多くの受刑者に対し、作業と各種指導をバランス良く組み合わせる処遇が行われると想定されています。
例えば、知的・精神障害のある受刑者には福祉的支援プログラムを、薬物依存の受刑者には依存症克服プログラムを優先するなど、個別最適化された内容が組まれることになります。

3 拘禁刑に一本化された趣旨と背景

処遇方針の面でも、刑罰の目的が「懲らしめ」から「改善更生」へと転換されます。懲役刑における作業は本来「懲らしめ(応報)」の意味合いが強いものでしたが、近年は職業訓練や各種指導も取り入れられていました。
拘禁刑の創設によってこの流れを一層進め、「作業」も受刑者の改善更生・社会復帰のための措置という位置付けであると理解できます。
そのため処遇の運用においては、これまで以上に受刑者の自発性・自主性を高め、前向きな参加を促すことが求められます。
受刑者に課されるプログラムも罰というより矯正教育の要素が強くなり、受刑者自身が更生に取り組む機会が増えると考えられています。

また、背景として、懲役と禁錮の区別は既に形骸化していました。2022年時点で新受刑者の99.7%が懲役刑で、禁錮刑はわずか0.3%(44人)しか言い渡されていませんでした。そして、令和5年3月末時点で、禁錮受刑者の約86.5%は任意で作業に従事していたという実態がありました。このように両刑の実質的な差異が乏しいことも一本化の理由の一つでした。
一本化後は名称が変わるだけでなく、「全ての受刑者に必ず作業が課されるわけではない」と法律上明確にすることで、処遇内容を受刑者ごとに柔軟に調整できるようにした点に意義があります。
この柔軟な処遇を可能にすることで、受刑者の更生により効果的な環境を整える狙いです。

あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件の弁護活動のみならず刑事処分や判決が出た後の更生に向けた活動にも力を入れています。
このことは懲らしめより改善更生に重きを置いた今回の刑法改正の趣旨とも合致するものです。
当事者の方の更生に向けて見守り弁護士(ホームロイヤー)の活動を準備しています。拘禁刑の導入を機に更生に向けて関心のなる方は是非一度ご相談ください。

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