刑法改正に伴って導入された拘禁刑について刑事事件に精通した弁護士が解説します⑧

これまで拘禁刑の導入に伴ってどのように法制度や刑事施設での処遇が変わるかについて詳しく解説してきました。
最終回である今回の記事では拘禁刑の導入に伴い弁護活動や弁護士の果たすべき活動にはどのような変化があるのかについて解説させていただきます。
具体的には、以下のような3点で弁護人の役割や弁護活動が変わってくることが予想されます。

1 量刑判断における主張の幅の拡大

拘禁刑の導入により、裁判官が量刑を決定する際に考慮する事情が広がる可能性があります。
刑務所内でも治療プログラムが導入され再犯防止に力が入れられる方針となったことで、単に専門的プログラムを受けさせるために執行猶予を付すべきと主張するのみでは、裁判所が再犯防止プログラムであれば刑務所でも受けられるのではないかと考えるようになるかもしれません。
そこで再犯防止のために執行猶予を付すべき(実刑にするべきではない)という主張をする際には、単に専門機関に通うというだけではなく何故その機関に通う必要があるのかについてより説得的な主張が求められるようになるでしょう。

また実刑となる可能性が高い件でも弁護人としては、被告人の背景事情を丁寧に調査し、処遇に関する意見を述べることが被告人にとって有利になるかもしれません。
「なぜこの被告人には刑の一部に教育的処遇が必要か」「治療プログラムの導入が再犯防止に資するか」など、量刑や処遇内容に関する説得力ある意見を提出することで処遇内容に反映される可能性もあります。

2 受刑後の処遇を見据えた弁護活動

従来の弁護活動では、主として無罪の獲得や刑の減軽を目的とした活動が中心でしたが、拘禁刑導入後は「刑の執行内容そのもの」にまで目を向けた活動が必要となります。
特に、被告人がどのような処遇分類にあたるかによって、その後の刑務所での生活や社会復帰の難易度が大きく変わる可能性があるため、受刑後の環境整備や処遇プログラムの選択にも関与することが重要です。
そのためには、社会復帰支援や家族・地域とのつながりの構築、医療や福祉との連携など、弁護人の活動範囲がこれまで以上に広がることになります。
具体的には、受刑後にも定期定期に面談や手紙などで連絡を取り合い、必要があれば処遇の改善やプログラムの実施などについて本人に代わって刑務所長などに申し入れをすることが必要になるかもしれません。

3 仮釈放・社会内処遇への意識強化

拘禁刑導入後には、従来よりも処遇の多様化が図られることから、仮釈放や社会内処遇(保護観察付き仮出所など)を前提とした支援がより重視されるようになります。
弁護人としては、判決後も被告人の処遇状況をフォローし、仮釈放申出に必要な資料や意見書を準備するなど、継続的な支援を行う体制が求められます。
まだ拘禁刑を受けた人の事例がないので不透明なところはありますが、拘禁刑の導入により再犯防止や社会復帰を重視するようになった現在では環境整備が十分になされれば、以前よりも早期に仮釈放が認められるようになるかもしれません。

また、裁判時点から仮釈放を見据えて、社会復帰の準備状況(家族の支援、住居、就労先など)を整えておくことが、処遇の選定や仮釈放の判断にプラスの影響を与える可能性があります。
このためが見込まれる場合でも、仮釈放後の社会復帰も見据えた主張をすることで早期の仮釈放に考慮される場面が増えるかもしれません。

4 まとめ

以上のように拘禁刑導入に伴い、刑罰は受けて終わりというだけでなくその後の社会復帰後世まで見据えた制度設計となり、刑罰の趣旨が変容しているといえます。
当然それに伴い弁護活動においても社会復帰や更生まで見据えた活動が求められるようになります。
あいち刑事事件総合法律事務所では拘禁刑が導入される以前から、仮釈放支援見守り弁護士(ホームロイヤー)といった活動により事件を起こされた方の真の更生や早期の仮釈放・社会復帰に向けた支援を行ってきました。
拘禁刑導入に伴いそれらの活動はさらに重要なものとなっていますので、更生支援、早期の社会復帰に向けて不安や心配がある方は是非あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

私たちは、事件の当事者となった方お一人おひとりの特性を踏まえ、社会復帰に向けた最適な支援ができるよう尽力してまいります。

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