このページの目次
1 はじめに
今回の記事では拘禁刑の導入に伴って生じ得る刑務所の管理運営体制の変化について2回に分けて解説させていただきます。
拘禁刑の導入により、刑務所の管理運営体制にも変化が生じます。
具体的には①刑務所内の組織編成や役割分担の変化や②刑務官の役割や目的意識の変化が生じることが予定されています。
2 刑務所内の組織編成や役割分担の変化について
まず、受刑者処遇の個別化に対応するために、刑務所内の組織編成や職員の役割分担が見直されています。
法務省は「矯正改革推進プロジェクト」の中で、拘禁刑の施行を見据え、刑務官(看守)と教育・心理・福祉の専門職員がチームを組んで処遇を行う『チーム処遇』の確立を進める方針を示しました。
従来、刑務官は主に保安警備や規律維持を担当し、教師やカウンセラーが別途指導を行う形でしたが、今後は複数の職種が一丸となって受刑者の改善更生を支援する体制に移行します。
例えば、あるモデル事業では刑務官、法務教官(教育専門官)、心理技官、福祉専門官(社会福祉士)、作業療法士、看護師といった多職種チームを編成し、受刑者ごとに処遇・支援計画を策定して定期的に見直す取り組みが行われています。
これにより、拘禁刑下では受刑者の問題状況を多角的に把握し、適切な処遇プログラムを提供できるようになると期待されています。
3 刑務官の役割や目的意識の変化
刑務官の役割も大きく意識転換が求められます。従来は規律違反の取り締まりや作業の監督が中心でしたが、これからは受刑者の良き指導者・支援者としての側面が重視されます。
チーム処遇の一員として、刑務官も受刑者の更生プランの策定や面談に関わり、日常生活全般の指導を行います。そのための研修強化や人員配置の見直しも進められています。
人権意識の向上やコミュニケーション技能の研修はもちろん、専門職との連携を円滑にするための体制整備が行われています。
一方で、保安担当と処遇担当を分離すべきとの意見もあり(過去の刑務所職員による暴行事件の反省から)、現場では模索が続いています。
いずれにせよ、刑務官が単に管理する存在から、更生を支援するパートナーへと役割がシフトしていく流れは確実であり、その意識改革が刑務所運営の鍵を握るでしょう。
しかし、当然ながら、多様な処遇プログラムの実施や刑務官の役割が変化することに伴って、必要な人材の確保や専門性の確立、十分な施設環境の整備が間に合うかという課題も指摘されています。
そこで次回の記事では、拘禁刑導入に伴う施設環境の改善や、予想される現場の負担とその対応についてさらに詳しく解説していきます。
あいち刑事事件総合法律事務所では拘禁刑が導入される前から、刑罰を受けた方の立ち直りの支援、再犯を防止して真の更生を図ることに力を入れてきました。今後も事件を起こされた方の更生支援、再犯防止に全力を注いでいきます。更生支援や再犯防止、早期の仮釈放に向けた支援に興味のある方は自費こちらからお問い合わせください。相談は初回無料で対応させていただきます。