兵庫県豊岡市の特殊詐欺事件で少年院に送致されることが決定された事例 少年院での処遇について⑩

【事例】
Aさんは、兵庫県豊岡市に住む17歳の男子高校生です。
ある日、AさんはSNS上である投稿を見つけました。
それは、ある物を受け取って運ぶだけで何万円もの報酬を支払うといういわゆる闇バイトを募集する投稿でした。
犯罪かもしれないと思いながらその募集に応募したAさんは、兵庫県内や鳥取県内でいわゆる特殊詐欺に何件も加担してしまいました。
高齢の方が住む自宅に赴いてキャッシュカードをすり替えて盗んだり、そのキャッシュカードを使って何百万円ものお金を引き出して盗んだりしたのです。
その後、鳥取県内の警察署に逮捕、勾留され、再逮捕もされました。
捜査を受けた後、最終的に神戸家庭裁判所豊岡支部に事件が係属し、神戸少年鑑別所に収容するという観護措置が取られました。
そして、神戸家庭裁判所豊岡支部は、Aさんの少年審判を行い、少年院に送致するという処分を決めました。

AさんやAさんの家族は、少年院に送致するという処分自体には納得していましたが、少年院ではどのようなことをするのか、どこの少年院に行くことになるのか、どのくらいの期間行くことになるのかなどが知りたいと思い、それまでもAさんの弁護人、付添人であった弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに

前回の記事では、少年院での処遇期間のうち、法律の規定がどのようになっているのかについて解説をしてきました。
今回の記事では、少年院での処遇期間が実際にどのように運用されているのかについてもう少し詳しくみていきます。

2 少年院での処遇期間

法律の規定とは別に、少年院での処遇期間は通達などが関わっているという点をお伝えしました。

まず、「矯正教育課程に関する訓令」という通達があり、その中で矯正教育課程ごとの標準的な期間が定められています。
例えば、第一種少年院に送致する少年で、「義務教育を終了した者のうち、就労上、修学上、生活環境の調整上等、社会適応上の問題がある者であって、他の課程の類型には該当しないもの」という類型である「社会適応過程Ⅰ」という矯正教育課程の場合は、標準的な期間として「2年以内の期間」と定められています。
また、同じく第一種少年院に送致する少年で、「原則として14歳以上で義務教育を終了しない者のうち、その者の持つ問題性が単純又は比較的軽く、早期改善の可能性が大きいもの」という類型である「短期義務教育課程」という矯正教育課程の場合は、標準的な期間として「6月以内の期間」と定められています。

また、「矯正教育課程に関する訓令の運用について(依命通達)」という通達があり、その中で指導を実施する上で基準となる期間が定められています。
例えば、先ほど例示した「社会適応過程Ⅰ」については「11月」、「短期義務教育課程」については「20週」などと定められています。

このような通達で定められる期間は、あくまで“標準的な期間”でしたり、“基準となる期間”です。
これらや裁判所の処遇勧告を踏まえて、少年院長が、それぞれの少年ごとに、個人別矯正教育計画を策定することになります。
そのため、その少年の特性によっては、2年を超える期間を設定することも可能です。
この点は、「保護処分在院者の個人別矯正教育計画の策定等について(通達)」という通達でも触れられています。
上記通達も含めて少年院で適用される主な通達に関しては、こちらの法務省のページにまとめられています。

次回の記事では、少年院での処遇の流れについてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
審判後の少年の更生を一緒に見守りながら支えていく見守り弁護士の活動も行っています。その他にも、弁護士が作成した課題への取り組みや面談を通じて、より反省を深める弁護活動も行っています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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