【事例】
Aさんは、兵庫県豊岡市に住む17歳の男子高校生です。
ある日、AさんはSNS上である投稿を見つけました。
それは、ある物を受け取って運ぶだけで何万円もの報酬を支払うといういわゆる闇バイトを募集する投稿でした。
犯罪かもしれないと思いながらその募集に応募したAさんは、兵庫県内や鳥取県内でいわゆる特殊詐欺に何件も加担してしまいました。
高齢の方が住む自宅に赴いてキャッシュカードをすり替えて盗んだり、そのキャッシュカードを使って何百万円ものお金を引き出して盗んだりしたのです。
その後、鳥取県内の警察署に逮捕、勾留され、再逮捕もされました。
捜査を受けた後、最終的に神戸家庭裁判所豊岡支部に事件が係属し、神戸少年鑑別所に収容するという観護措置が取られました。
そして、神戸家庭裁判所豊岡支部は、Aさんの少年審判を行い、少年院に送致するという処分を決めました。
AさんやAさんの家族は、少年院に送致するという処分自体には納得していましたが、少年院ではどのようなことをするのか、どこの少年院に行くことになるのか、どのくらいの期間行くことになるのかなどが知りたいと思い、それまでもAさんの弁護人、付添人であった弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回までの記事では、矯正教育課程なども踏まえながら、どの少年院に行くことになるのかが、どのようにして決まるのかについて解説をしてきました。
今回の記事では、少年院での処遇期間などについてみていきます。
前回の記事について関心のある方はこちらからご覧ください。
2 少年院での処遇期間
少年院での処遇期間(収容される期間)としては、法律でどのように規定されているかというものと、その法律に基づいて実際にどのように運用されているかというものを分けて考える必要があります。
⑴ 法律の規定
少年院での処遇期間について定めているのは、少年院法という法律です。
そして、少年院法では、少年が「二十歳に達したときは退院させるものとし、二十歳に達した日の翌日にその者を出院させなければならない」と定められています。(少年院法137条1項本文)。
つまり、少年法では、Aさんのように18歳未満の少年が少年院送致となった場合には、20歳になるまでという制限があるだけで、それ以上に具体的な期間が定まっているわけでもなければ、処遇期間のバリエーションが定まっているわけでもないのです。
その一方で、20歳を超えて収容することが一切できないのかというと、そうではありません。
例えば、心身に著しい障害がある場合や、犯罪傾向が強制されていない場合は、家庭裁判所に申請をして、収容の継続が相当と認められると、23歳まで収容が継続されることになります(少年院法138条)。
また、「精神に著しい障害があり、医療に関する専門的知識及び技術を踏まえて矯正教育を継続して行うことが特に必要である」という場合には、再度家庭裁判所に申請して、収容の継続が相当と認められれば、さらに収容を継続することも可能です(少年院法139条)。
⑵ 実際の運用
法律の規定は以上のようなものですが、実際にはもう少し細かい運用がされています。
各種の通達によって標準的な期間などが定められており、以前の記事で解説したような処遇勧告も関わってきます。
次回の記事では、少年院での処遇期間の実際の運用についてさらに解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
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