兵庫県豊岡市の特殊詐欺事件で少年院に送致された事例 少年院での処遇について③

【事例】
Aさんは、兵庫県豊岡市に住む17歳の男子高校生です。
ある日、AさんはSNS上である投稿を見つけました。
それは、ある物を受け取って運ぶだけで何万円もの報酬を支払うといういわゆる闇バイトを募集する投稿でした。
犯罪かもしれないと思いながらその募集に応募したAさんは、兵庫県内や鳥取県内でいわゆる特殊詐欺に何件も加担してしまいました。
高齢の方が住む自宅に赴いてキャッシュカードをすり替えて盗んだり、そのキャッシュカードを使って何百万円ものお金を引き出して盗んだりしたのです。
その後、鳥取県内の警察署に逮捕、勾留され、再逮捕もされました。
捜査を受けた後、最終的に神戸家庭裁判所豊岡支部に事件が係属し、神戸少年鑑別所に収容するという観護措置が取られました。
そして、神戸家庭裁判所豊岡支部は、Aさんの少年審判を行い、少年院に送致するという処分を決めました。

AさんやAさんの家族は、少年院に送致するという処分自体には納得していましたが、少年院ではどのようなことをするのか、どこの少年院に行くことになるのか、どのくらいの期間行くことになるのかなどが知りたいと思い、それまでもAさんの弁護人、付添人であった弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

1 はじめに
以前の記事(この記事を読まれたい方はこちらからご覧ください)では、収容される少年院が決まる過程を説明するために、①家庭裁判所、②少年院、③少年鑑別所の違いについてみてきました。
今回の記事では、この点をより詳しくみていきます。

2 少年審判で決めること
少年審判で少年院送致という処分にする場合、①家庭裁判所が決めるのは、Ⓐ少年院の種類、Ⓑ処遇勧告、Ⓒ環境調整命令の3つです。

⑴ 少年院の種類(Ⓐ)
以前の記事で解説したように、少年院には第一種から第五種までの5種類の少年院があります。
家庭裁判所は、その5種類(実質的には3種類)の中からいずれの少年院に送致するのかを指定します(少年審判規則第37条第1項)。
少年院の種類についてはこちらの法務省のページも参考にしてください。

⑵ 処遇勧告(Ⓑ)
家庭裁判所は、少年院に送致するという決定をする場合、少年院に対して、その少年の処遇に関して勧告することができます(少年審判規則第38条第2項)。
具体的には、少年院に入る期間についてや、第三種少年院で医療措置を受けた後にどの種類の少年院に行くべきなのかについてといったものです。
このうち少年院に行く期間としては、約1年間というのが標準的な期間とされています。
しかし、事件の内容によっては、6カ月間(短期と表現することがあります。)や4カ月間(特別短期と表現することがあります。)といったそれよりも短い期間の処遇でよいとされる勧告がされることがあります。
その逆で、約2年間(比較的長期と表現することがあります。)やそれ以上の期間(相当長期と表現することがあります。)などといったそれよりも長い期間の処遇にすべきだと勧告されることもあります。

⑶ 環境調整命令(Ⓒ)
環境調整命令とは、家庭裁判所が保護処分を決定する際に保護観察所長に対して行う命令で、「家庭その他の環境調整に関する措置を行わせる」命令のことです(少年法第24条第2項)。
保護観察所長に対する命令ですので、家庭裁判所が保護観察に付するという処分(少年法第24条第1項第1号)をする場合になされることが多いですが、少年院退院後を見据えてなされる場合もあります。
例えば、少年院を仮退院した後の帰住先や就業先が確保できるように、保護者や児童相談所などとの調整を依頼するというようなものです。

次回の記事でも、収容される少年院が決まる過程についてさらに解説していきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件・少年事件に関わってきた経験を活かし、少年審判後の再犯防止に向けたサポートにも力を入れています。
再犯防止に向けた弁護士のサポートにご興味のある方は、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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